大将討伐 -承-
「「一瞬でイポスとバティンを!」」
同胞があっさり倒された事で、
アルブスと対峙していたゼパルと
ボティスが、逃げ出そうとして
後ろから切り裂かれる。
「あらま。
このザマじゃ、あたしが
出る幕もないじゃん」
巨大な4体の飛龍をいとも
簡単に仕留めてしまった
イートニャンの底力に
ハレルヤは舌を巻く。
「……やれやれ、
こんな機能をよく思いつくね、
メサイア博士っちゅーのは」
想像を超えるテクノロジーに
驚くイートニャン。
モニター越しには二人の健闘を
見守っていたメサイアが首を横にふる。
「君がパイロットになった事で、
学習機能を持つ機神そのものが、
飛躍的に進化したのかもしれん……」
「進化!?」
考察するメサイアに、
イートニャンが大声をあげる。
「機神は搭乗者の能力に応じ、
そのスペックを発揮する。
自己再構築によって。
これが内なる力を
引き出すという事だ。
搭乗者が魔人であれば、
天人よりも、はるかにな……」
「魔人と機神の力が
融合した事で、それぞれの
製作者の計算を上回ったって事?」
ハレルヤが納得した様子で
ニヤリと笑みを浮かべる。
「あぁ、認めざるを得まい。
下らぬ対抗心を捨て、もっと
早くに貴様と協力し検証していれば、
この答えにたどり着き、ここまでの
犠牲を出さずに飛龍を駆逐できたはずだ」
「兄さん……」
ニゲルの複座で
静かに話をきいていた
アリスがモニター越しに
兄の顔を見つめると、
闘いで散って逝った同胞たちの
顔でも思い浮かんだのか、
メサイアの顔には苦渋に
満ちた後悔がにじんでいる。
「ほーう。
仮面の奴が言っていた通り、
貴様は生かしてはおけん存在らしいな」
大きな声とは裏腹に、
アスモデウスが口元から
牙をチラつかせ笑ってみせる。
他の巨龍とは違い、体は人間に
似た小柄の体型をしていた。
まるでようやく真の猛者と
戦えるという、生粋の戦士が持つ
闘争本能が呼び出されたようであった。
「そのちっこい体で機神を
二機も相手にできるのー?」
ハレルヤが困惑気味に
呆れているのも構わずに、
アスモデウスは啖呵を切る。
「俺がなぜ大将なのか、
それは龍の中で最強だからだ。
一人になろうとも後退の二文字はない」
「ふーん。
さすがグシオンの誘いを
断っただけの事はあるね」
長きに渡る闘いを通して、
あるいは悟空やドラクルのような
戦士に感化されたのか、
イートニャンもまた、
その心意気に応じるように、
ニゲルのコックピットを開放し、
ナイフとフォークで大きな斧を持つ
アスモデウスの前に躍り出る。
「そんな!?
何で機神を使わないのです!」
アリスが必死に
イートニャンを呼び止める。
「あれが矜持ってやつよ。
研究者のあたしには理解できないけど、
他でもないもう一人のあたしのする事。
決闘を見守りましょ、アリスちゃん……」
アスモデウスの熱意と
イートニャンの矜持に免じ、
ハレルヤも機神を降りて
二人の戦いの行く末を
腕組みをしながら見つめる。
「さぁてと。
タイマンに機神はマジで不要。
最後ぐらい、自分の手でケリを
つけたいと思ってたとこよ」
「……馬鹿め!
その甘さが命とりになる!」
アスモデウスが牙で
作った戦斧を構えると、
イートニャンも得物の
ナイフとフォークを構え、
大将の隙のなさに内心感嘆する。
この不動の構えを崩さねば、
こちらの攻撃は通らない。
ならば————




