強襲作戦 -後編-
「司令!」
ほどなくして、内線越しに
慌ただしい声が聞こえる。
「うむ、分かった……」
瞬時にメビウスの表情が険しく、
上に立つ人間としての覇気を
帯びたものへと変わる。
その場にいる全員がついに
来るべき瞬間がきたと悟った。
メビウスが緊張した面持ちで
イートニャンらに視線を移すと、
慌ただしく一同はそのまま
会議室から、天人が整列する
中央広場へと移動する。
「……諸君。
偵察の報告より飛龍の
大部隊がこの都市に向かっている。
一時間ほどで奴らの包囲網は完成し
総攻撃を受ける事となるだろう。
しかし敵陣も手薄になる!
つまり、どちらかの
滅亡が決するのだ!」
檄を飛ばすメビウスが
イートニャン一行と、
グシオン一派に交互に目をやる。
「……さて、君たち精鋭班は、
私が考えた場所についてもらおう」
防衛部隊として残る一同に
それぞれの配置を発表する————
1:天狗とドラクルは
最上部コントロールタワー。
2:狐とフェノメノンは
都市裏口の排出ダクト。
3:機神アルゲントゥムに搭乗した
メサイアは正面甲板の中央広場。
4:グシオンと悟空、ホムンクルスは
都市下部のメインエンジン周辺。
5:防衛とは別に手薄となった
敵本拠地を強襲するという、
大役を担うイートニャンと
ハレルヤ、およびアリス。
そして、メサイアがハレルヤに
妹を頼んだぞと合図をおくる。
「……さぁ、これが
機神アルブスと、ニゲルだ」
モニター越しには、白と黒の
メサイア機とほぼ同じ大きさ形の
ロボットが二機映し出され、
格納庫へと移動した
ハレルヤが白い機神アルブスへ、
イートニャンが黒い機神ニゲルに乗り込む。
「時間がない。
ここは我々がくいとめる。
すみやかに敵陣へ乗り込み、
大将を討ってくれ」
「すみやかにねぇ……
ま、練習で軽く操作は
覚えたけど、実戦は、
これがはじめてよ」
いつもはマイペースなハレルヤが
神経質に顔を曇らせ、ユニットの
コンソールを叩いてみせる。
「こっちは練習どころか、
ぶっつけ本番じゃーん。
でも、おかげで思い出したわ、
あたしも天才だったって事を」
巨大ロボに乗れて不安と
嬉しさが混じるイートニャンに、
メサイアが声を掛ける。
「心配はいらん。
このためにアリスがいるのだ」
「そそ、複座で、私が
ナビゲートしますから。
でも天才を自称してるから
大丈夫そうですね!」
アリスがにっこり笑って
イートニャンをからかい
不安を和らげてみせる。
「おっと、極めて
大切な事を言い忘れた。
ニゲルについては開発に時間がなく、
武器を実装する余裕がなかった。
だからといって逃走する事は、
この私が許さん」
「ニゲルなだけに
逃げるなってか?
ええ加減にせいよ。
取扱説明書無しの
次は武器無しかい!」
「落ち着け。
この機神そのものが強力な兵器だ。
道中までの操縦はアリスが行う。
あとは内なる力を引き出せるか、
お前の潜在能力に賭ける!」
「その道中にでも簡単な
操縦法を学んで下さいな」
「まったく、簡単に
言っちゃってくれるよねぇ、
この馬鹿兄妹は」
「大丈夫!
あなたは自称天才なんだから!」
アリスはニゲル機のコックピットの
メインカメラ画面に電子マニュアルを
映し出してみせる。
「この都市に残るとはいえ、
私もアルゲントゥムから
モニタリングをしている。
何かあったら通信をおくろう」
後は任せたとばかりに
メサイアがイートニャンに敬礼し、
ニゲルのコックピットハッチを閉じる。
「……はぁーあ。
じゃあ、行ってくるけど、みんなも
馬鹿なドラゴンには気を付けてね」
機神のスピーカー越しに、
イートニャンが八百をはじめとする、
メンバーみんなの無事と健闘を祈る。
これから起きる事は
今までで最も大きな闘い。
この場にいる全員が
また再会できる保証は無い。
「案ずるな、ここは余の故郷だ」
「グシオン達の監視は任せて下さい」
「敵大将には気をつけろ、イートニャン!」
「私は私の最善を尽くそう」
「博士こそ負けちゃダメよ!?」
これまで共に戦ってきた仲間達が、
機神ニゲルに搭乗し出撃する
イートニャンを見送る。
「今さら負ける
わけにゃ-いかないっしょ。
この時代で悪魔との
因縁を終わらせる!」




