強襲作戦 -前編-
「さて、一晩過ぎて頭冷えた?
馬鹿みたいに力を合わせ
馬鹿なドラゴンと戦ってくれるよねー?
っていうか、それしかないよなーえぇ?」
すっかり話の主導権を
握った気でいるメフィストに対し、
真っ先にドラクルが待ったをかける。
「馬鹿な貴様に一つ条件がある。
共闘を求めるというならば、
余から奪ったネクロノミコンを返せ。
一対一の決闘で特別に相手をしてやる」
「おっさんが!?
いや、こいつの相手は俺様が……」
ドラクルが肩をつかむと、
そのただならぬ握力に悟空が
脱臼をしかけ静かに後方へと下がる。
「ククク、馬鹿馬鹿しい」
「……なぜ今決着をつけぬ?
この都市に迷惑が掛かるならば、
人の居ない場所でやれば良い」
地獄のような紅蓮の瞳で
ドラクルがメフィストを睨むと、
メフィストは人差し指を立てる。
「ダメダメ。
まず、あんたは書の力を
100%最大限に引き出せる。
つまりは今すぐこの戦争を
終わらす事もできる……
そんな危険な存在が
もし裏切った場合、
それは全員の死を意味する。
その可能性はゼロではないだろ?」
「……なるほど、筋は通っているな。
だが、お前が負ける前提の話だそれは」
ドラクルの横で腕を組んでいた
フェノメノンが鋭く指摘する。
「そうだよ、もし
僕が負けたらの話だ。
いくらバカニャンらとの旅で、
かたい絆でむすばれたとはいえ、
そもそもの目的は、
この書の奪還までの旅。
それさえ取り戻せば、
お別れするだろうし、
その後は、何をしでかすか
分かったモンじゃない。
何といってもこの地上を統べる力を
手にいれる魔神になるわけだから。
まさに真のラスボスだと言っても過言ではない」
メフィストが仮面の
隙間から目を細めると、
ドラクルはヤレヤレと瞼を閉じる。
「オッサンが、んな事する訳ねぇだろ。
それに自慢の不死身はどうしたんだ?
タイマンじゃ、72柱のてめえが
持久戦に持ち込めば有利だろうが。
イートニャンが相手をするわけ
じゃねぇんだからよ」
「しかし、そこの大魔王さんには
厄介な封印術をはじめとする、
得体の知れない数々の魔法を極めている。
それは、きみらがよーく知ってるだろ?」
「……グシオン。
ドラクル公は一時、
書を持っていたんですよ。
その時、この地上を統べて
いなかったじゃないですか」
「その時はね。
考えなんてものは時代と共に変わる。
仲間だろうが何だろうが、所詮、
他人の心の中なんか分かりゃしない。
これが現実、これが利己主義だ」
「へぇ、それをチミが
エラソーに言っちゃうの?
このフェイク野郎www」
イートニャンが爆笑すると、
グシオンはチッチッチと
人差し指を左右に振る。
「もちろん他にも理由はあるよ。
僕がこの書の力を引きだせるのは
せいぜい50%がいいとこ。
恥ずかしいから言いたくなかったけど、
それでようやくあの飛龍らと
互角に戦えるレベルなのさ」
改めてこの時代の敵が、
いかに強力か皆一様に息を呑む。
「つまり、書をもってしても
僕じゃ世界を滅ぼす力は無いし、
これがなければ飛龍と
戦える戦力にさえなれない。
しかも空中戦は苦手でね。
この中途半端な状態は君たちに
とっても都合がいいだろ?」
「もっともらしい
事情は分かりましたよ。
しかし、まだ隠している
事があるでしょう」
「そうよ、共闘する以上、
戦っている最中に裏切られちゃ
たまんないからね!」
持論を述べるメフィストに対し、
それでも疑念を拭いきれない
ホムンクルスと八百が反論する。
「そりゃまぁ、僕に限らず、
お互い話せない計画の一つくらい、
誰にだってあるだろ?
なぁ、八百比丘尼ちゃん」
「何で問題を
私にすり替えてるの」
「その計画とやらは、
どちらの人格のですか?」
昨日時間をおいて
冷静に考えた結果か、
ホムンクルスはメフィスト、
グシオンの両方に揺さぶりをかける。
「……実にくだらない事を聞くねぇ。
そんなものはどっちでもいーよぉ。
この都市に押し寄せる飛龍を倒すまでは
共闘する、決着はその後でよくない?
なんか僕の言ってること、間違ってる?」
「フン、臆したか雑魚めが」
ドラクルが失笑気味に共闘を飲むと、
冷静を装っているメフィストの声には
苛立ちが出ていたのであった。




