晩餐 -地-
「君は元天人なんだろ。
これは素質があると
見込んでの提案だ」
「いやいやw
他の天人はどうしたの?
操縦うまい兵士とかいるでしょ」
「飛龍との闘いで、
もはや非戦闘員しか残っておらん。
彼らでは機神のパワーもフルに
引き出せんし、そもそも数機しかない。
悪魔と戦い続けた君なら機神の
内なる力を引き出す事が出来るはずだ」
「……内なる力ねぇ。
でも、いきなり操縦なんか無理よ?」
文句を言いつつも、
メサイアのファルザードを
守りたいという切実なる想いに、
嘘偽りはないと感じ取る。
「今は勝たねばならん。
そのためにはハレルヤの魔人ではなく、
機神こそが鍵を握ると確信している。
ハレルヤがあの仮面どもを使い
何かを企むなら、諸君らには
私の希望を託したい」
メサイアは熱のこもった眼差しで、
イートニャンらを見据える。
しかしメビウスから天人の末路を
聞かされたイートニャンには、
メサイアの態度にも多いに
矛盾を感じざるを得ない。
生まれ育った母星を滅ぼし、
地球に到達してなお、飽きもせず
同じ事を繰り返している。
メサイアと、
ハレルヤのような
賢人でさえも————
「長話をしてしまったな。
パイロットの件は考えといてくれ」
「あっそ。
ま、あたしも科学者の端くれ。
取り急ぎ取扱説明書でも
用意しときなさいね」
イートニャンと
メサイアが握手を済ますと、
いつの間にか食堂にもう一人の
科学者が現れる。
「……貴様!?」
メサイアが思わず身構えると、
ハレルヤも昼間の穏やかそうな
雰囲気とは少し変わって、
イートニャンに目を向ける。
「ちょーどよかった。
あたしも話があんのよ。
ちょっとあんたは来なさい」
「話ぃ?
手短に頼むよチミぃ」
イートニャンはハレルヤの
誘いを無下にするでもなく、
そのまま食堂から退出する。
その様子をメサイアは
複雑そうに見送るのであった。
一方、グシオンとの関係も含め、
どのような思惑で、かつての
自分であるハレルヤという
人物が動いているのか?
今のイートニャンにとっては
知っておく必要はあった。
やがて、人気のない廊下に出て
ハレルヤが周囲を見渡し向き直る。
「……で、こんなとこに
呼び出して何!?」
「何って、あたしの子供たちの
事に決まってるじゃーん」
ハレルヤが
イートニャンに
率直にこたえる。
「あぁ、グシオン達の件か」
「あんたらはそう呼んでるんだったね。
今回の闘いが終わったら、
あの子たちも倒すんでしょー?」
「もちろんですとも☆」
「そりゃ、あんたのいた
未来の世界を守るため?」
イートニャンの即答は
ハレルヤの予想の範囲らしい。
「何か勘違いしてるようだけど、
あたしゃ別に聖人君子じゃないの。
もとの姿に戻るためには必要なわけ。
その行動が結果的に世界を守る事に、
たまたま直結するってだけの話よ……」
思えば変な姿のまま、
随分遠いところまで
来てしまったものだと
イートニャンは苦い思いに浸る。
「たまたま直結すると思ってるの?
人類が勝利する未来と、
魔人たちが統治する未来、
どっちが正しいかなんか
誰にも分からないのに?」
ハレルヤが達観した様に
肩をすくめてみせる。
「いーや、これだけは分かるね。
グシオンは色んな時代で、人間や
悪魔を利用しては切り捨ててきた。
あんたも用済みになれば
結局そーなるの」
イートニャンは語気を強めてみせるも、
ハレルヤは困り気味な顔になり
腕を組みはじめるのであった。




