魔人
事の発端は、
イートニャンたちが
天に着く三日前————
ハレルヤいわく、天人は
飛龍たちの襲撃により数多くの
犠牲者を出し追い詰められていた。
そこへ、メフィストらが現れ
飛龍たちを追い払い、
ハレルヤ博士の研究にも協力し、
滅亡寸前だった空中都市を救った
恩人として手厚くもてなされる。
「……待ちなさいよ。
いつも、悪魔と
共闘してきたあなた達が、
何で悪魔と敵対する道を
選んだのよ、おかしいじゃない」
天人に味方したメフィストに対し、
当然のごとく八百が疑問を呈する。
「別におかしくはないよ。
飛龍の親玉アスモデウスに
休戦交渉を持ちかけたら
襲い掛かってくるものだから、
僕たちも逃げるのが精一杯だったのさ」
やれやれとメフィストが
肩をすくめてみせると、
ハレルヤも腕を組みはじめる。
「アンタ騙されてるぜ。
コイツはいつも適当ぶっこいて
周りを騙してきてたんだよ」
「そうです。
敵の敵が味方とは限りません」
悟空とホムンクルスが
ハレルヤを説得してみせる。
「彼らは飛龍を追い払うだけでなく、
あたしの魔人強化の研究にも
協力してくれたわけ。
おかげで、ここにいる天狗は、
彼の助言があって成功した例でね。
その強さはあんたらも知ってるはず」
説得を受けてなお、ハレルヤは
メフィスト達を信頼しきった様子から、
イートニャン達に取り付く島はなかった。
「わかったかい?
ここを落とされては僕らもお終いだ。
飛龍となったシードは強いし、
味方は多い方がいいでしょ」
「よかねーよwww
消えろ、てめえから」
「きみを消したいのは
僕も同意だが、ゴミを片付ける
優先順位ってやつがあるだろ」
「珍しく気が合ったな!
まず、てめえをぶちのめしてから
飛龍もぶちのめす!」
悟空が素早く如意棒を伸ばすと
グシオンの横から天狗が瞬時に
割って入り、指二本で棒を挟みこむ。
「くっ!?
この野郎……」
1844年 —天保十五年—
江戸時代での戦いでもこれと
全く同じ状況を悟空は体験している。
相変わらず万力のような
天狗の握力に悟空の怪力では
微動だにせず、
それを見ていたイートニャンが
観念したように声をかける。
「時間の無駄よ悟空ちゃん」
「なんだと!?」
「いいから下がれ」
イートニャンの決定に、
異議を叩きつけるも、
今度はフェノメノンが悟空の
肩をつかみ引き止める。
「……やれやれ。
話は済んだようだな。
部屋も用意してある、今は頭を
整理するためにゆっくりしたまえ」
一先ずイートニャンらに
メビウスが退室を命じ、
諦観気味に八百が皆を鎮める。
ここに来て宿敵と
共闘する事になるとは、
誰もが予想できない事態であった。
その宿敵でさえも、
飛龍たちの首領である
アスモデウスには
手も足も出ないらしい。
メビウスの言葉に従う形で一行は、
外の空気に触れるためファルザードの
中庭に足を運んでいた。




