空中都市
発着デッキに銀色のロボが着陸し、
コックピットのハッチが開く。
ここが文献に出ていた
都市で間違いないならば、
天人と呼ばれる知的生命体が
住んでいる事になる。
先ほどのやり取りで
彼らとは意思疎通が可能であり、
少なくとも現段階では敵でない
事は分かっている。
しかし、天人なる者たちが
人の形をしているのかは、
全くの不明であり、
開かれたハッチから現れる姿を、
イートニャンたちは固唾を飲んで
見守っている。
「……私はメサイア。
この銀色の機神『アルゲントゥム』の
パイロットだ」
耐Gスーツに、ゴテゴテした
ヘルメットを脱いだそこには、
丸眼鏡に神経質そうな
インテリ風の男が、デッキ下の
イートニャン達を見まわしていた。
「同機の索敵、
迎撃補佐を務める
アリスと申します!」
コックピットは
複座になっているらしく、
後部座席に座っていたもう一人の
女性らしいシルエットの搭乗員が、
続いてヘルメットを脱ぎ
イートニャンらに一礼してみせる。
こちらは金髪にショートヘアの
理知的な美女であった。
どの時代においても
デモンイーターの能力の
1つでもある広範囲の通訳機能が
働いているせいか会話は可能らしい。
「ふーん、天人ってのは、
現代のホモサピエンスと区別できないね」
「と、黒猫のバケモノが
何か言ってますよ」
「おめぇも、
ポテチのバケモノだろw」
「こら、あんたも姿は
博士と変わらないでしょー」
色物ルックなイートニャンを始め、
他のメンバーがもめだすと
メサイアが心外そうに
ヤレヤレとため息をつく。
そんなやり取りをアリスの方は
楽しそうに眺めている。
「これをつくったのは誰だ?」
ドラクルがロボットを見上げ、
意味深に問いかけると、メサイアが
眼鏡のブリッジを手でおさえる。
「私がこの機神シリーズの設計者だ。
まぁ、詳しい話はあとにしよう、
お互いにな……」
メサイアとアリスがせわしなく
機神に集まってきたクルー達に、
なにやら整備についての指示を下し、
そのまま電子ロックの付いた
ドアを通り抜ける。
この場所は近未来的な設備の
整った工場のようであり
中心に機能を停止した機神を
取り囲むように作業服を着こんだクルーが、
弾薬、燃料の補充、メンテナンスのために、
きびきびと慣れた手つきで動き回っている。
そんな彼らが現代の地球人だと言えば、
きっとそのまま信じてしまうであろう。
「……皆さん、
お待たせしました。
司令があなた達と是非に
面会をと望まれています」
しばらくしてアリスが戻り、
ドアから現れイートニャンたちを
丁重に空中都市の奥へと案内される。
「ようこそ、ファルザードへ。
私は総司令を務めるメビウスだ」
司令室に通され、
机を前にして座るその男は、
顔つきはまだ若い印象を受けた。
青と茶のオッドアイの瞳は、
鏡のように澄んでいて内面を
悟らせない面持ちをしている。
恐らくは若くして
司令官として才を持ち、
天人たちを飛龍との戦いの中で
導いてきた並々ならぬ心労と覚悟が
彼をそうさせたのであろう。
「あたしゃイートニャンですよ☆
わけあって、こんな姿になってんの」
「ほぅ……」
一行はここに来た
経緯を説明してみせると、
メビウスは分かり切ったように
短く相槌を打つ。
「意外に驚かれないんですね!?」
「そりゃ、こんだけの技術を
持った方々からすればね☆」
イートニャンと八百が塩対応な
メビウスに拍子抜けした様に、
お互い顔を見合わせる。
「しかし、なぜここまでの
科学力が僕らよりも、はるか
昔の時代に存在しているのですか?」
博識なホムンクルスも
知的好奇心をくすぐられて、
目を丸くして周囲を見回してみせる。
「そうだな、君たちは我々が
何者であるのかほとんど知らない。
話せば長くなるが文明が
進歩し過ぎた結果と言えよう」
イートニャンたちの
身の上話を聞いた手前、
今度は自分たちの事を話す番かと、
メビウスが物思いに耽ったように
夜空の果てに視線を移す。
「我々は、この星の人間ではない」
「「「えっ!?」」」




