奥義 -壱の間-
「大魔王様、博士、頑張って!」
八百とカリオストロが
安全に観覧できる場所から
イートニャンとドラクルを
見下ろしている。
「さ、はじめましょーか」
「余の大魔法……
貴様に避けられるか?」
その合図と共にドラクルの
両手から高められた真空波が
連続して放たれると、イートニャンの
太極レンズが激しく回転する。
「吹けよ疾風!
イートニャンケバブ!」
初っ端からの激しい魔法の連射を
イートニャンは残像をうみだすほどの
高速ダッシュでかわしてみせる。
「流石イケおじ。
スキの無さは上海で戦った
サイキッカー達と同じだね」
まるでアイススケートのように
地面を移動し円を描きながら
うまくドラクルの真空波を
全て巻いてみせるも、
避ける事に夢中で、ダッシュを
多用し過ぎた反動から疲労物質である
乳酸が急速にたまり足をつってしまう。
「痛ぁーっひゃっひゃ、ちょっとタンマw」
「愚か者、決闘に待ったなどないッ」
ドラクルに叱咤され、土壇場で
盾を片手に発動し攻撃に備える。
しかし、それで防ぎきれるほど
ドラクルの攻撃は甘くはなかった。
続いて巨大な業火が放たれると、
あっと言う間に盾が壊れると共に
イートニャンは爆炎に吹き飛ばされ
派手に壁に叩きつけられてしまう。
「そ、総帥。
ホントに大丈夫ですか!?」
すでに重厚な材質で囲われた
室内がギシギシと悲鳴を上げている。
「ドラクル卿の力がこれ程とはな。
だが、ここで両者が死力を尽くさねば、
到底奥義にはたどり着けまい」
狼狽える八百を尻目に、
カリオストロは興味深げに笑ってみせる。
「どうした。
敬老精神はいらぬ。
貴様も攻めてみよ」
「とか何とかいって、
おっちゃん休むつもりでしょー?」
おされっぱなしのイートニャン
であったが、連続魔法で体力を
消費したドラクルにスキが生じる。
「戦いってのは
頭を使わないとね。
シチューはライスにかけない派!
イートニャンシチュー発射ッ」
クリーム色の霧を体から
放出し部屋中を充満させる。
カリブ海で敵の集中砲火から
味方の船を守った技である。
「……目くらましか。
児戯に等しいな」
視界を奪ったとはいえ
煙から出たイートニャンを
冷静に捉えたドラクルが
素早く氷の魔法を放つ。
「何ッ!?」
しかし凍結したはずの
イートニャンの動きが
止まった様子もなく、
そのままドラクルへと
飛び掛かる。
「もらった!
イートニャンブッシュ!」
魔法での反撃をあらかじめ予想し
イートニャンマーボーによる瞬間的な
バリアを展開していたイートニャンが、
ドラクルの体に肉球を密着させ
力を奪うブッシュを発動させる。
「……吸血鬼の余から生気を
吸うとは良い度胸だ」
不覚を取ったドラクルは
マントで肉球を振り払うと同時に
ブラッディソードを生成し
蛇行切りを仕掛ける。
もっともイートニャンが
ブッシュを使ったのは他にも
戦術的な理由があった————
既に技を三つも使い消耗した
状態で、さらなる技の使用の
ために魔力を補給する。
そして回復したイートニャンが
フォークを召喚し、ドラクルの斬撃に合わせ
反撃技のイートニャンサラダを放つと、
剣をフォークの隙間でガッチリと挟ませる。
「ぬっ!?
やりおるわッ」
接近戦も得意とするドラクルが
剣技において先手を取ったつもりが
『後の先』を取られる。
「今だ、すき★焼き!
イートニャンクヌーデル☆」
そのままフォークを手前に引き
体勢を崩したドラクルにすかさず
ナイフによる連続攻撃を仕掛け
大魔法を使う時間を与えない。
「食らえ!
ハヤシよりもカリー派(/ω\)
イートニャンカレー!」
普段はナイフとフォークで戦う
イートニャンがスプーンを召喚し
破壊力に特化した一撃を放つと、咄嗟に
両手剣でガードしたドラクルを
壁際まで弾きとばす。
「……博士の技のリズムが
流れるように一つになっていますね」
怒涛の技の連鎖を華麗に
こなしたイートニャンを見つめる
八百とカリオストロ。
すると、イートニャンの太極レンズが、
これまでにない金色に光り始めていた。
「美国君、見たかあの輝きを。
あれがフルコースだ……」
カリオストロがつぶやくと、
本来チャージ技であるはずの
イートニャンカレーによる素早い一撃を
受けとめた修羅の剣が粉みじんに砕け散る。
「……ふむ、見事」
ドラクルは自身をここまで
追い詰めたイートニャンへ、
惜しみない賛辞を贈るのであった。




