サンジェルマン
カリオストロに従い一行が
階段を降り続けていくと突如
大きな空洞が現れ、
中央にはロココ様式の
立派な屋敷が立っていた。
「……紹介しよう。
ここが、我々組織の中枢、
世界中の支部を統括する本部だ」
「パリの地下に……
こんな場所が……」
屋敷の周辺には大小の
家屋が立ち並んでいる。
長年組織のエージェントとして
勤めてきた八百でさえ、地下の
巨大な本部は初めて見るものらしく
驚きを隠せない様子であった。
「結界で隠された町のようだな。
これなら敵に見つかる心配はあるまい」
「……ほう。
この結界が目視できるとは、
ただの人間じゃないね?
しかし奴の襲撃でパリは壊滅状態。
物資を調達する関係上、この本部も近い内に
ウェールズに移す予定ではあるよ」
フェノメノンの鋭い洞察に
カリオストロが答えると
配下が敬礼で出迎え、そのまま屋敷内の
執務室へと案内される。
「一先ずはキミ達も、
今は体を休めると良い」
カリオストロはそばに控えたメイドに
茶を持ってくるよう指示し自身は
椅子にどっかりと座り込む。
一行はテーブルをはさみ
西暦2018年の世界では、すでに
デモンイーター自体は完成している事を
カリオストロに説明する。
しかし組織の長い試行錯誤の末、
はるか未来での完成を特に喜ぶでもなく
カリオストロは、ただうなずくだけであった。
「……総帥?
お聞きしたい事が……」
そのそっけない反応に
八百も何か引っかかりを感じたのか、
ある疑問を口にしようとする。
「完成したはずの
デモンイーターの能力が、
アモンに効かなかった事であろう?」
カリオストロは八百の真意を
見透かし、言い当ててみせる。
「……君たちの話を聞く限り、どうやら
美国君が居た未来の世界においてさえ、
デモンイーターの能力は実は未完成。
当然、今現在の我々もその完成形を
創り出すには至っていない」
「ふーん☆
じゃあ開発者をちょっと呼んでよ。
完成には、あと何が足りないかを
早急に相談しないとさぁー」
今度はイートニャンが
科学者のヴァカ博士として
カリオストロへ疑問を投げかける。
「……アモンなのだよ。
かつて奴は、組織でデモンイーター
開発への責任者を務めた男でな。
人間だった頃の名をサンジェルマンという」
「サンジェルマン?
たしか不死の人間という噂を
聞いた事がありますが、
組織の人間だったんですか?」
八百も初耳とばかりに素の表情に戻ると、
カリオストロの表情が曇りはじめる。
「彼が主任を引き継いでからは
飛躍的に研究は進んだのだが、
残念な事に完成直前になって
悪魔に取り込まれてしまってね。
それゆえ、私が彼が組織に関与
していた機密情報を操作し伏せたのだ」
「……それで結局、
未完のままという訳なのですか。
しかし、アモン以外には通用していますよ?」
テーブルに腰をかけながら
ホムンクルスがつぶやくと、
カリオストロは首を静かに横にふる。
「真の完成とは72柱を
例外なく倒せるものをさす。
今までの敵とは違い、アモンこと
サンジェルマンはデモンイーターの
長所も短所も知り抜いているのだ」
「フン、奴が恐ろしく戦い
なれていたのは、そういう訳か……」
総帥の前なのか八百の肩にとまらずに、
人型の状態で椅子に鎮座しているドラクルが
腕を組みながら納得した様子でうなずく。
「その上、肉体も他の悪魔よりも
頑丈なわけでしょ、あいつは。
どうしろっちゅーの?」
困り果てたイートニャンの問いに
カリオストロは冷静にカップに
残った紅茶を飲み干す。
「デモンイーターの究極奥義を
完成させる事ができればアモンを
凌駕できよう……」
「奥義だと?
なんか俺様の時と同じ
泥臭ぇ展開になってきたなw」
「それ、この前の嘘臭い
夢の話ですよねぇ」
「だから夢の話
じゃねーっつのホム!」
悟空がテーブルに腰かける
ホムンクルスを両手でつかみ、
くすぐりの刑をしかける。
前回のエンデルーンでの出来事は、
いまだに悟空の勝手な美談として
メンバーには鼻で笑われている。
「……その究極の奥義とは
一体何なのでしょうか?」
「美国君、先ほどの戦いで
彼らもかなり傷を負っている。
まずは体力の回復が先だ。
その上で、死ぬ覚悟があるならば、
教えようではないか」
「「「死ぬ覚悟!?」」」
口調は穏やかな紳士のままであったが、
カリオストロの目つきは真剣そのもので
妥協を許すものではなかった。




