つわものどもが夢の跡
————子気味良い破裂音が脳内に響く。
悟空が驚いて目を開けると
破裂した風船ガムの残骸を舌で
イジくる黒猫の姿が目に入った。
「おや、あなたも起きましたか……」
白い帽子をかぶった小さい妖精が
耳元でささやくと、地べたに
寝そべっていた体を慌ただしく
起こし、悟空があたりを見渡す。
イートニャンだけではない。
八百も、ホムンクルスも、
ドラクルも、フェノメノンも、
よく知るいつもの姿に戻っていた。
その遠くでは大都市の
雑踏と喧騒が聞こえてくる。
ここは、15世紀の
コンスタンティノープル。
トプカピ宮殿の人目に付かない
外れにある場所のはず————
「そこで悪魔が伸びてたから、
風船ガムにして食っちゃったわw」
「……ラッキーでしたね博士。
そいつは72柱のガープですよ。
カブレラストーンも転がってたし、
毎回こうだと助かるんだけど」
赤い石を懐にしまい込み、
ゴエティアの書をぱたんと閉じた八百は、
いつの間にか全てが解決した段取りになって
いる事に首をかしげる。
「でも私たち、
何で眠ってたんだっけ?」
「うむ、宮殿に来たところ
までは覚えておるのだがな……」
八百のみならずドラクルまでもが、
宮殿に足を踏み入れた後の記憶がないらしい。
「覚えてないのか!?
俺たち学校の生徒だったじゃねぇか!」
「……学校?
あんたそんな夢を見てたのw
まぁ、私ってば永遠の美少女だし、
組織に所属している以上、叶わぬ夢ね」
「勉強なら帰ってラボで出来ますし、
学生なんて色々と面倒くさいだけでは
ないですか八百さん……」
「いや、そーいう夢じゃなくてなぁ」
悟空の言葉に八百とホムンクルスは
先ほどの記憶など微塵もない様子であった。
イートニャンらは
話に耳を傾ける事もなく
タイムマシンへと引き返す。
「おいおい!
ふざけんじゃねぇぞ。
あのなげぇ日々は何だったんだ」
何も覚えていない仲間達を、
不貞腐れつつ追う悟空に
フェノメノンがそっと耳打ちする。
「……お前は、悟りを極めつつある。
それゆえ敵の術にも完全にかからず
記憶に残っているのだ」
腑に落ちない表情の悟空に
フェノメノンが目を細める。
「やっぱり、おめぇだけは気付いてたか」
「少し試したまでだ」
「だんまりを決め込みやがって!」
「陰ながら助力はしたさ……」
「そういや俺様の退学阻止をしてくれたらしいな」
「期待通り、お前は自らの力で解決してくれたよ」
「……何の期待だ?」
悟空の最後の問いに
フェメノンが背中を向ける。
「いずれ、その力が必要になる。
私にも、そして玄奘法師にも極める事が
出来なかった真実の力がな————」




