卒業試験 -バトルロイヤル-
最終日————
学園のあるトプカピ宮殿から、
やや離れた森林地帯。
ここはエンデルーンの生徒が
集団に分かれての模擬戦などを
行うのによく使われる演習場でもある。
「今日までよく
余のしごきに耐え忍び、
ここまでついて来てくれた!」
森に囲まれた演習場の生徒らの前に
鬼教官ドラクルが直立不動で立ち尽くす。
その表情は厳しさの中に
いつもよりも優し気で、
生徒を誇らしげな目で見守る
父親のようでもあった。
これから最後の試験に臨む
エンデルーンの生徒も思わず、
ここまでの学園生活を振り返り
感傷的に目頭を熱くする。
「今日をもって
卒業試験と相成る訳だが、
演習とは違い刃の付いた
本物の武器を使ってもらう。
つまり実戦と同じ
殺し合いである!
貴様らは昨日までの
友を殺すつもりで倒せ!
そして余も、参加者の
一人として剣を振るおう!
この森で各々が戦い合い、
最後に立っていた者を勝者とする!」
しばらく重い沈黙が続く。
あまりの難易度に一同は
揃いも揃って絶句する。
悟空はヴァカから事前に
内容をリークされていたものの、
実際にドラクルの口から発されるとなると、
そのピリピリした空気から体が強張る。
「こ、殺し合い……
一人を除いて死ぬって事っすか?」
沙悟浄が恐る恐る質問をする。
「命を惜しむ者は
降参する事を認めよう。
もっとも、その場合は失格であると
同時に学園からの落第とみなすがな」
「……じゃあ、教官殿が最後に
残った場合はどうなるんです?」
冷酷なドラクルの言葉に
八百が更に食い下がる。
「まだわからぬのか。
貴様らは闘って勝つか、
闘わずしてこの学園を去るか、
そのいずれかだ」
「……教官殿、アンタは鬼や!」
「そりゃ、おっさんは、
もとは吸血鬼だったからなw」
その非情な言葉に、
干将までもが思わず拳を握りしめると、
横で悟空がポツリとつぶやく。
先ほどの感傷的な雰囲気など
微塵も残っていない。
ドラクルが残った場合、
それは必然的に全員が
落第を意味する。
「士官候補生でしかない僕らに教官を倒せと?」
「いや、ぜってぇ無理っす!」
「だなぁ……」
ホムンクルスは言葉とは
裏腹に目つきを鋭く煌かせる。
翻って、沙悟浄と猪八戒は
ストレートに情けない悲鳴を上げている。
「戦場とは、
そういうものだと
常々教えたはずだ」
すっかり意気消沈した
士官候補生一同を見て、
ドラクルが無慈悲に檄を飛ばす。
そして、せめてものハンデとばかりに
声色を和らげ森から離れた丘を指さす。
「余はあの丘の上にて迎え撃つ。
そこから一歩も動かず勇者を
待っているとしよう。
貴様らは森の中にて所定の
目印のある位置へ移動してもらう。
そして、正午の鐘の音が鳴った
時をもって卒業試験を開始とする。
後は各々が、
よくよく考える事だ。
座学で学んだ戦術をな。
倒せる算段が付いたら、
いつでも掛かって来るが良い!」
そこまで言うと、ドラクルが
士官候補生たちに背を向け、
自らの持ち場へと赴く。
「反論を受け付けてくれる
雰囲気じゃなさそうね……」
取り付く島のない様子に、
八百がため息を漏らす。
「お、おれは降りるぞ!
こんな馬鹿げた試験、やってられん!」
「そうだ、そうだ、死ぬぐらいなら
落第のほうがまだマシだ!」
「わ、私も賛成です!」
次々と生徒達が試験会場から
逃げるように立ち去ると、
残った生徒は9名となった。
「……根性なしども。
かえって人数が減ってせいせいする。
こうなりゃ、やったろうじゃんか兄者!
偉そうな教官ごと叩きつぶしてやる」
「よう言うた。
流石ワイの妹じゃけぇの!」
まずは干将と莫邪が闘志を取り戻し、
所定の位置へと向かうため
森の中へと入って行く。
「さーて、猛特訓の成果を
誰かさんに試す時がきたよ~♪」
どこまでも自然体なユティが
鼻歌を口ずさみ後に続く。
候補生の中では唯一、この残酷な試練に
全く緊張してないようにも見える。
「……教官の意見に賛成だ。
自分が一番になる気がない者は、
ここに居るべきじゃない」
涼しい顔をしたターヒルも
森へと歩みを進める。
その横顔を悟空が睨むも、
眼中にないかのように
悠然と森へと入って行く。
「よし、いくか……」
真剣を持ったドラクルに再度
挑んでみたい気持ちをおさえ、
悟空も森へと入る。
ターヒルとの因縁を断つことで、
この運命を変えなければならない。
「フフ……
障害物の多い森の中とは好都合。
僕は僕の戦い方でやらせてもらいますよ」
「じゃ、私もそうしよーっと」
「くそったれめ。
そうなるなら死に物狂いで
足掻いてやりやすぜぇ!」
「だ、だな……」
悟空に続き、気おくれしていた
面々も覚悟を決め森へと入る。
エンデルーン士官候補生9人のそれぞれの
研鑽した成果の問われる時が今始まる————




