懲罰
『○月×日晴れ。
今日の晩飯:懲罰のため飯抜き
修行も積んだ。
オッサンにもその成果を認めさせた。
ターヒルを葬り去るタイミングも
上手く捉えたはずだった。
しかし、殺人未遂という
重大な校則違反を犯した事で、
干将と莫邪より重い謹慎処分として
寮の個室から外出禁止になっちまった。
処遇が決まるまでとの事だったが、
停学どころか退学処分も
覚悟しなきゃならないらしい。
ようやく、あいつを倒せるだけの
力がついたってのに、これ以上
どうしろってんだ』
悟空が謹慎を命じられたその翌日。
寮の個室の扉を叩く人物がいた。
悟空が寮の扉を開くとそこには————
「何でこんな所に!?」
意外な人物の来訪に
声を上げると、その人物は
人差し指を立て静かにするように諭す。
「みんなを元の世界に
戻すんじゃなかったの?」
「……おう」
「貴方の居た世界のあたしって、
いろんな仲間と旅してるんでしょ。
それってどんな感じだった?」
ヴァカが好奇心を躍らせ半ば
試すような質問を悟空に投げかける。
「ああ、毎回えらい目にあってるけど。
楽しそうではあるな……」
「ふ~ん?
ここでの研究や教え子に
囲まれるよりも楽しそう?」
「……まぁ、俺様だってこの生活は
ターヒルが現れるまでは楽しかったからなw」
悟空の言葉にヴァカは
メガネのブリッジを指でいじくる。
ヴァカの認識でいえば、
別の世界の出来事をこの悟空は
自身のかけがえのない経験として、
生き生きと語ってみせていた。
そこに嘘はないと感じたのか、
観念した様に笑って見せる。
「……これは来月行われる
卒業演習の内容が記された極秘資料よ。
ターヒル君の初期配置はここ。
おそらく、それがもとの世界に
戻るラストチャンス」
白衣から何やら地図と思しき
紙片を取り出し悟空に手渡す。
ヴァカであれば職員室の机から、
ドラクルの考案した卒業試験の資料なりを、
こっそり拝借する事ぐらい訳はない。
「お、おいおい、
そんな事して良いのか……」
「あんもぉ☆
可愛い生徒のためとはいえ、
こんだけの機密漏洩、バレれば、
あたしは学園をクビになるでしょうよ!」
ヴァカが憂いを帯びた
表情でため気を吐き出す。
『○月×日曇天。
今日の晩飯:無し
その後、ヴァカと、
なぜかフェノまでもが裏で
あれこれ尽力してくれたらしい。
オッサンも二人の
説得にほだされてか、
退学処分は取り消され
数日間の謹慎処分で済んだ。
これで卒業試験への参加もできる。
ターヒルを倒すチャンスは、
もうその時しかない。
運命は俺様が変えてみせる』




