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イートニャン  作者: 坂本龍馬♀
―エンデルーン―
207/273

軍学教練



「メフテルの演奏準備をしろ」



フェノメノンの指導の元、

音楽の授業が始まる。



「今日のユティ、一味違いまーす!」



朝から調子が良いのか

ナッカーラを威勢よく

バチで叩きまくる。



「……いつになくノッてるわねぇ」


「ええ、太鼓を破裂させんばかりですよ」



あまりの悪ノリに、

フェノメノンも非難気味に

ユティの演奏を止めにかかろうとする。



「力み過ぎだ、楽器が壊れ————」



直後、音楽室に黒煙が炸裂し、

女子生徒の悲鳴と混乱と、

どよめきが音楽室に響き渡る。



「キャー」


「ナッカーラが爆発したぞ!」


「ユティ、大丈夫!?」


「うん、ダイジョウブじゃない」



生徒たちの心配をよそにユティは、

残骸となり果てたナッカーラを手放し

黒いすすだらけになってかたまっている。

さいわい、大きなケガはないようであった。


ホムンクルスがまさかと目を凝らし、

焼け焦げた麻袋の切れ端を

指でつまみ取り出して見せる。



「武器庫から無くなっていた火薬袋です!」


「酷い……」


「誰がこんな悪戯を!?」


「授業は中止だ、お前達は教室に戻れ」



ざわつきだす生徒を前に、

フェノメノンはあくまでも

冷静に生徒を落ち着かせ誘導する。



「そのナッカーラと

麻袋は私が預かろう」



ホムンクルスから壊れた楽器を

受け取ろうとして、うっかり床に落とす。


それを拾おうと近くにいたターヒルが

床にしゃがみ込むと、胸に赤い宝石が

はめ込まれた大きなペンダントが垣間見える。



「あの石は————」



悟空に見られターヒルは慌てて

胸元から見えた赤い石のペンダントを、

隠すように服の中にしまい込む。



「何度も、この目で

見てきたやつじゃねぇか!

そして、アレがある所に

必ず現れる存在がいたな!」



激昂し今にもターヒルに

掴みかかりそうな悟空を、

フェノメノンが人差し指を

唇に添え制してみせる。


音楽室では静かにしろと

示している様にも見て取れた。


結局その後、火薬を盗みナッカーラに

細工をした犯人について見当は付かず、

午後にはドラクル指導の元いつも通りの

軍事教練が再開された。



「……ようやく尻尾を掴んだぜ。

ユティよりも先に俺様がナッカーラを

使うとみて仕込みやがったな。

警告のつもりか?」



悟空はこれまでこの世界で、

旅の仲間達と今までに会った

事のある人々と再会してきた。


しかし、自身の記憶のどこを

探してみてもターヒルの

存在だけは思い出せない。


そして、音楽室で見た

カブレラストーンの存在。


すでに自分たちは敵の

術中にハマっているらしい。


すぐにターヒルを倒し、この

茶番劇を終わらせるべきではあるが、

今の自分では勝てないと本能が告げている。


では、どうするべきか?


足りない頭で考えている間に、

午後の軍事教練も終わり、

悟空が帰り支度を整えようと

教室に戻った時であった————



「おい、お前ら

何読んでいやがるんだ?」



皆の机の上に何やら

紙切れが置かれていた。


一瞬入室と共に皆の視線が

悟空に集まるが、なぜか気まずい

雰囲気が教室中に広まる。



「兄貴、実はこんなものが」


「あぁん?」



沙悟浄がそっと自分の机に

置かれていた紙切れを

悟空に差し出す。


紙切れには例の爆発事件は

悟空が犯人であると書かれている。


似たような紙切れは複数あり

教室の生徒は皆、目にしているらしい。



「馬鹿な……

何でこの俺様が!?」



「もちろん、こんなの

信じていないっすよw」



「兄貴はあんな事を

する男じゃないんだな。

でも、誰がこんなものを……」



悟空は紙をくしゃくしゃに丸め

ゴミ箱に放り投げる。



「……そうかい。

正体をバラされる前に、

俺様を追放するつもりだな。

おい、ホムに八百姉、聞いてくれ」



「何ですか?」


「いつからあんたの姉になったのよ」



紙片を読んでどうしたものか

迷っているホムンクルスと八百に、

悟空が鬼気迫る表情でいることに

何か異様な雰囲気を感じ取る。



「これを書いたのはターヒルの野郎だ。

俺たちは幻術に掛けられてんだよッ」



真顔でそう言い切る悟空を見て、

ホムンクルスと八百は

口を開き呆けている。



「……あのさぁ。

いくら、武術でターヒル君に

ボロ負けしたからって、

男の嫉妬は苦しいわよ?」



「フフ、前世の次は幻術ですか。

劣等生の意見など聞くものでは

ありませんねぇ」



「なんだとてめぇら!」



嘲笑あざわらうホムンクルスの言動に、

悟空は思わず頭に血が上る。



「では僕が実は神だったんだ!

と言ったら信用するんですか?

するわけないじゃないですか。

つまり最近のあなたは頭がおかしい。

医務室へ行きなさい」



「もういいってホム君w

どうせ馬鹿の創作なんだから」



そう言うと二人は、

そそくさと教室を出て行ってしまう。


気が付けば沙悟浄と猪八戒、

他の生徒もいない。


一人夕焼けの差し込む

教室に残された悟空は、

つれない二人の背中を

ただ呆然と眺めていた。



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