前世
午後の授業も終わり
今日も平穏に一日が過ぎようと、
夕暮れ時の教室にたたずんでいると————
「俺たち一緒に冒険してたよな!?」
突然、叫び出した悟空を前にして、
ホムンクルスは呆れたように
肩をすくめてみせる。
「……まだ貴方は
寝ぼけているんですか」
「本当なんだ。
ここではない時代、
この姿じゃない体で、
ホムや八百の姉貴と色々旅しただろ!
海とか山とか、もちろん砂漠もよ!」
「なにそれ、前世の記憶?
そんなロマンチックな話を
する性格だったっけw」
八百が哀れみ半分、爆笑半分を
滲ませた笑顔を浮かべると、
沙悟浄と猪八戒も一体何事かと
興味本位で駆け寄ってくる。
「兄貴ぃ、その旅って
オイラ達も一緒にいた~?」
「いや、オメェら二人とは、
しばらくして別れた気がする」
「気がする?
思い出したとか今
言ってたじゃないっすか。
墓穴を掘っちまいやしたねw」
悟空のあやふやな答えに
沙悟浄がニヤニヤと指をさす。
「お前は黙ってろ。
とにかく、本当なんだってホム!
ここは俺様がいた場所じゃねぇ!」
「フフ、馬鹿馬鹿しい」
これ以上、意味不明な戯言には
付き合ってはいられないと、
ホムンクルス達は悟空の元から去って行く。
昨日と同じ悟空は自分の頬を
つねってみせるも、やはり夢は覚めない。
それでも思い出しつつある、
ここではないどこかの記憶は、
より鮮明に何かを覚醒させ
つつあるのであった。
そんな悟空の様子と、
仲間達との何気ない会話を、
何者かが盗み聞きしていた事を
悟空はまだ知らない————




