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イートニャン  作者: 坂本龍馬♀
―エンデルーン―
204/273

剣術教練



「あ、兄貴が一撃で!?」


「何が起こったのか分からないんだなぁ」


「転校生君ってばカッコいいじゃないの」


「その上、強いときてますねぇ……」


「やはりな。余の期待を越える逸材よ」



予想以上の戦果に

ドラクルを含めた

みんなが声を上げる。



「イテテ、つえぇなぁお前……」


「同じ武器なら結果は違った()()ね」



悟空は頭を擦りながら

ターヒルに手を差し出され

立ち上がる。


一瞬、ここではないどこかで、

猿になった自分と、八百とホムンクルス、

そして妙な猫が一緒にいる姿が、

悟空の脳裏に再びチラつく。



「……さて、両手に刀を持てば誰しも、

このような技を放てるわけでないが、

そろそろ諸君らも自らの適正に合った

得物を選ぶ時期かもしれん。

武術の教練を行うにあたって

武器庫の物であれば以後自由に使って良い。

無論、訓練用の刃無しのものに限るがな」



ドラクルの言葉に一同は色めき立つ。



「単調な訓練には飽きてたとこですぜ」


「オイラも、物足りない気分だったなぁ」


「私はもっと軽めでいいかな……」


「フフ、僕も最弱とオサラバしますかねぇ」



生徒たちは我先にと武器庫へ押し寄せる。

そんな仲間達の背中を悟空は、どこか

呆けた表情で立ち尽くし、ぼんやり見ている。



「どうした、貴様も新しい

武器を選びに行かぬのか?」



「そぉだなぁ……」



気分の乗らない悟空をよそに、

他の生徒たちは基礎練習から解放され、

一段上の自分なりの戦闘スタイルを

模索する喜びにはしゃいでいた。


早速、お目当ての得物えもの

手に入れた猪八戒とユティが、

一対一で向き合い演習を始める。



「……凄い。

互角にやり合ってるよ……」



猪八戒が長柄ながえの斧刃である

ポールアックスを振り回す。


持ち前の巨体と腕力を活かせる

妥当だとうな得物の選択といえる。


対するユティも負けず劣らず、

小柄な体に不釣り合いな石斧を

二丁両手に装備していた。


猪八戒が力任せに上段から

ポールアックスを振りかざすと、

ユティはその重い一撃を受け止め、

勢いよくはねのける。



「うおっ、あの馬鹿力を!?」


「遅い遅いよ」



やがて、野生児の本領を発揮した

ユティの二丁斧の猛攻に防戦一方

となった猪八戒は、バランスを崩し

武器を落としてしまう。



「こ、こりゃ参った」


「ユティってば凄い!」


「あんなに強かったのか……」



尻餅をついて降参の

意思表示をする猪八戒を見て、

他の生徒はおろか幾人もの士官候補生の

素質を見抜いてきたドラクルさえも、

ユティの戦いに刮目する。



「ほう……

まさかあの小さき体に、

あれほどの荒ぶる力があったとはな。

思わぬ原石を見落としていたかもしれぬ」



一方、他の生徒も各々手探りで

戦いながら演習を続ける。



「二回もホム君に勝っちゃったw」


「武器を変えても変わらぬ僕の弱さ……」



レイピアに得物を変えた

ホムンクルスが、同じく

短剣に得物を変えた八百に

またも敗北していた。


突きによる一転集中型の

レイピアを選んだものの、


白兵戦における反射神経、さらに

筋力も足りていないという欠点は

覆しようがなかった。


そんな最弱のホムンクルスを

冷やかすのも飽きたか、沙悟浄は

自身の相手の悟空に向き直る。



「兄貴、どうしやしたぁ?」



「おう……」



「せっかく、このジャベリンに

変えたのに兄貴がそんなんじゃ、

張り合いがないっすわ」



悟空は得物を槍に変え、

沙悟浄と模擬戦をしているが、

体が腑抜けたように力が入らない。


本来の自分であれば強敵の存在、

新たな自分の武の可能性に、

心躍るはずであった。


しかし、さきほど、ターヒルの一撃を

頭に受けてからどうにも、痛みとは別の

痒い所に手が届かない何かを感じていた。



「よし、本日の教練はこれまでだ。

自分だけの得物に慣れる様、

精進するように」



ドラクルが生徒たちを解散させる。

一方、悟空はというと

相変わらず上の空なのであった。





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