転校生
「兄貴~、おはようっす!」
「パンを買ってきたんだなぁ」
「いらねぇよ、引っ付いてくんな!」
昨日同様、馴れ馴れしく近寄って来る
沙悟浄と猪八戒の二人を悟空は邪険にする。
「貴様ら、静かにせい!!」
厳しい表情で入ってきた
ドラクルの姿を見るや、
即座に席に着く沙悟浄と
猪八戒であったが、
教室に入ってきたドラクルの横には
見知らぬ青年が立っている。
「今日は諸君らに
転校生を紹介する」
「ターヒル・フサインです、以後よろしく」
「ターヒル……
古の二刀流の剣豪と同じ名だな。
その名に恥じぬよう日々励むがよい」
「ハッ、この名高いエンデルーンにて
研鑽できる事は光栄であります」
すらりとした長身の、
長髪で片目を隠した転校生が、
将来のエリート軍人に相応しい
敬礼をしてみせると、
その凛々しい美少年ぶりに
教室中の女子の少ない数が
黄色い歓声を上げる。
「良い返事だ。
さて、本日も午前中は剣術の教練だ。
各自遅れず支度をするように!」
ターヒルの態度に
気をよくしたドラクルは、
いつも通り、生徒を引き連れ
教練場へと向かう。
昨日と同様キリジと盾を装備した
一同を見まわしドラクルは、
ターヒルの前に歩み出て足を止める。
「……基礎からやってもらう
つもりだったが気が変わった」
「と、言いますと?」
「余には分かる、貴様はすでに
修羅場を潜り抜けてきた面構えだ。
そこで、どうだ悟空、一つ
ターヒルと手合わせしてみぬか?」
「俺様が?」
思いもよらない提案に
悟空が唖然としていると、
ドラクルがニヤリと笑ってみせる。
「手加減はいらん。
貴様にとって不足なき相手ぞ」
座学はさておくとして、
剣術での成績はピカイチの悟空と
いきなり対戦を組ませる。
それほどの強者であると、
厳しさが服を着ているような
ドラクルが言い放つ。
「いいぜ」
ここ最近のモヤモヤを
吹き飛ばすかのように、
悟空は本能的に暴れられる喜びに
拳を強く握りしめる。
「大丈夫ですかねぇ、
いきなりうちのクラスで
最強の悟空と戦っちゃって」
ホムンクルス達も見守る中、
双方得物を構え静かに前に歩み出る。
ターヒルはキリジと盾ではなく
使い慣れているという本人の希望で、
曲刀シャムシールの二刀流という
型破りなスタイルで立ちはだかる。
その左右の剣は
アルファベットのAを左へ
横倒しにしたような構えであり、
上段と下段でそれぞれ
切っ先を悟空に向けている。
「どこからでもどうぞ」
「ほう、じゃあマジで行かせてもらうぜ————」
悟空が持ち前の反射神経をもって
襲い掛かろうとした、その直後である。
ターヒルは両手の
シャムシールを瞬時に動かすと、
まるで二匹の白い蛇が円を描き
視界を遮るように動きまわる————
その太刀筋を辛うじて
捕らえた直後には、
悟空は盾と剣を手放し
床に倒れ込むのであった。




