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Be My Self  作者:
9/48

身だしなみ

その日の帰り、綾音はそのまま和子とショッピングモールに寄ることになった。

買うものはもちろん綾音のものだ。

今のところ、服は愛梨のを着ているがこれからずっとというわけにはいかない。

他にも下着はもちろん、細々したものが圧倒的に足りないので

一気に買うことになったのだ。

まずは下着だった。

初めて入る下着売り場は少しだけ緊張する。

女になってからは、愛梨用に買ってあった新品のショーツを履き、

ブラはするほど膨らんではいなかったので付けていない状態だった。

ただ、学校へ行くとなるとそういうわけにもいかないので

それらも今買うことになる。

「まだスポーツブラでいいんじゃないかな」

和子がいくつか手に取って見せてくる。

少し恥ずかしい気持ちになったが、これからは毎日付けなければいけないもの。

気を取り直して真面目に選び、ショーツも含めていくつかを購入した。

次は服だ。

「綾音はどういうのがいい?」

「うーん…これとかかな」

選んだのは無難なロンTやデニムといったものばかり。

それを手に取りながらも視界はその隣にあるかわいらしいデザインの服だった。

特にワンピースが気になって仕方ないが、コレという勇気がなかった。

「そんな普通のでいいの?」

「愛梨もこういう服が多いから…」

愛梨はまだオシャレとかには興味がない。

しかも髪は長いがちょっとボーイッシュな感じなので、

今の綾音も違和感なく着られるものばかりだ。

「綾音、今は綾音の服を買いに来てるんだよ?自分が着たいと思ったのを選んでいいんだから」

そうだ…今は自分の服を買いに来てるんだ。

綾音は今持っている服を戻し、ワンピースを手に取った。

「お母さん…これがいい…」

すると和子はニッコリして「うん」と言ってくれた。

この笑顔で気にしていた部分が一気に払拭され、

綾音はかわいい系の服を次から次へと選び、結構な量の服を買ってもらってしまった。

買い物はこれだけではない。

今度は靴売り場だ。

学校用のはもちろんだが、スニーカーもレディース用のものを買った。

元々のサイズが22.5cmで男にしては身長が低いのもあって小さいほうだったが、

これは女になっても変わっていなかった。

なので、そのまま履くことはできたが、やはりレディース用ではデザインが全然違うので、

靴も何足か買いそろえてくれた。

さらに…

「こういうのも買っておいていいんじゃない?」

それはヒールのあるサンダルだった。

男が履くことがないものにドキドキ、そしてワクワクする。

足を入れてみると視界が少しだけ高くなった。

歩くのは…ちょっと慣れるまで大変かな。

それでも気に入ったので、一緒に買ってもらうことにした。

他にも文具系を一新したり、バッグ、ゴムやピンといったヘアアクセサリーなども

買揃え、これで持ち物のほとんどが女物になった。

綾音の中で、増々自分が女の子という意識が芽生えていた。


家に着き、荷物を置くと今度は別の場所にすぐ出かけることになった。

そこは美容院だった。

今の綾音の髪は女の子のショートくらいの長さだが、ボリュームがあって

切っていない間があったのでせっかくだからと、

ちゃんと女の子っぽい髪型にしてもらうことにした。

そう、女の子は身だしなみが大事だ。

前髪を眉より少し下くらいの長さに揃えてもらい、横や後ろの長さは揃える程度にして

全体的に軽くしてもらった。

顔がもう完全に女の子ということもあるが、ショートでも完璧に女の子にしか見えない。

この髪型をとても気に入った綾音はウキウキしながら家路に着いた。

「あら、いいじゃない」

和子がほめると、愛梨が「その髪型いいなぁ」と羨ましがっていた。

これで気をよくした綾音は買ってもらった服を着てみることにした。

部屋に入って買ったものを並べる。

「相当な量だ…どれにしようかな」

迷った結果、小花柄のワンピを着てみることにした。

まずはその前に買った下着だ。

スポブラを付けてみると、今までになかった感覚が伝わってくる。

これから毎日こんな感じになるんだ…

次にタイツを履く。

これも今まで経験したことがない肌触りだったが、とても気持ちよく感じた。

そしてワンピース。

鏡でチェックしてみる。

完全に女の子の姿に綾音のテンションが一気に上がった。

気分はもう完全に女の子だった。

リビングに戻ると和子も愛梨も「かわいい」と言ってくれたので

綾音はずっとニコニコしていた。

すると和子が「これ付けてみて」といって、

リボンの付いたカチューシャを渡してくれたので早速付けてみた。

これのおかげでより女の子らしくなる。

嬉しくなって、家でもこのままの恰好でいることにした。

もう僕、完璧に女の子だ…そうなると「僕」っておかしいよね…

よし!

愛梨がジュースをコップに注いでいたので綾音が愛梨に向かって言った。

「愛梨、わたしも飲む」

「わかったー」

愛梨は気づいていなかったが、和子はすぐに気づいた。

驚いた顔をしたが、すぐにニコッとして何も言うことはなかった。

綾音も少し照れてからニコッと笑い返した。


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