学校の問題
読んでくださってありがとうございます。
いただいた感想の中に、展開や伏線についての質問をいただいましたが、
こういった部分は先へ進むうちにわかるので、質問にはお答えできませんのでご了承ください。
それでは、引き続きお願いします。
それから数日後、次は学校の問題にぶち当たっていた。
2年生となる4月まではあと2週間ほど。
普通に考えれば今までの学校へ通うのだが、事情が大きく異なる。
今まで男子だったのが女子となって通うのにためらいがあったのだ。
ただ、仲が良かった梨華たちに会いたいという気持ちもある。
「綾音、思い切ってほかの学校にする?」
「そんなことできるの?」
和子はもう普通に綾音と呼び、綾音もそれに違和感がなくなっていた。
ちなみに、もう戸籍上でも綾音という名前になっているし、性別も女になっている。
病気によるものなので、裁判所もあっさりと変更してくれたのだ。
「お母さんちょっと調べてみたんだけどね、ここだったら今からでも転校できるっていうの」
和子が見せてくれたのは、私立の石原女子中学校という学校のパンフレットだった。
「女子中?ってことは女子しかいないの?」
「ええ、やっぱり嫌?」
「嫌というかなんというか…」
女子しかいないという環境が想像つかなくて戸惑っていたのだ。
「これからのことを考えたら、綾音には少しでも早く女の子の生活に慣れたほうがいいと思うのよね。だったら思い切って女子校がいいんじゃないかなって」
和子が言うのも一理ある。
それとは別に、綾音は制服がかわいいなと思いながらパンフレットを眺めていた。
白いセーラー服に紺のリボン、いかにも私立っぽい感じがする。
「それにね、お母さん女子高だったけど楽しかったわよ。同性しかいない学校っていうのも」
和子の話と制服で綾音の気持ちはもう決まっていた。
「お母さん、この学校に行くよ」
「うん、じゃあ早速手続きの電話するね」
綾音は新しい学校にワクワクしていた。
その夜、寝室で和子が話すと義弘は反対した。
「何も女子中なんて入れなくたっていいだろ。いくら病気で女になったとはいえ綾斗は男だったんだぞ」
「もう女なのよ、それに名前だって綾斗じゃなくて綾音」
「そういう問題じゃない、俺にとって綾斗は綾斗なんだ。綾音じゃない」
「あなた、現実を受け入れて。それにこれからのことを考えれば絶対にそのほうがいいの!」
「もういい…好きにしろ」
義弘はふてくされたように布団にもぐりこんだ。
義弘にとっては、女になってしまったとはいえ綾音は綾斗のままだった。
家の中で一番現実を受け入れていないのが、この父親の義弘であった。
トントン拍子で転校が決まり、綾音は制服の寸法を測るために
和子と学校を訪れた。
「岡崎綾音さんね。まだ内密だけど、わたしは担任になる吉田です。いろいろ大変だったみたいね」
綾音のことはちゃんと学校に説明してある。
それをわかったうえで転校させてくれたことには感謝しかなかった。
「先に言っておくけど、岡崎さんのことは特別扱いせずに普通の生徒と同じように接するから覚悟しておいてね」
それだけいうと吉田は笑顔になっていた。
要は綾音を女子としてしか見ないとうことだ。
これからのことを考えると、そのほうが本人的にも助かるので安心した。
それはつまり、綾音が元男ということがバレる心配がないからだ。
「はい、よろしくお願いします」
綾音は珍しく明るく大きな声で返事をした。
寸法も図り、できたら郵送されるということだった。