目覚めたときは
ゆっくりと目を開けると、白い天井が視界に入った。
ここはどこ…
「綾斗!気が付いたの!?」
母親の和子の顔がいきなり視界の中にフレームインしてくる。
「お母…さん。僕は一体…」
「よかった、よかった…」
和子は目に涙を溜めてそう繰り返していた。
少しまわりを見てみるとここが病室だということがわかった。
なんとなく記憶が蘇ってくる。
確か英語の授業中に具合が悪くなって…
「そっか、僕授業中に倒れて…」
まだ身体全体がだるく、力が入らない。
治ってないのかな?
「お母さん、僕なんかの病気なの?」
不安になりながら聞くと、和子は答えるのをためらっている様子だった。
それが余計に不安になる。
僕…まさか死んじゃうのかな…
そこにやってきたのは白衣を着た男性だった。
田辺というネームプレートが付いている。
どうやら担当医らしい。
その田辺が綾斗を見ながらゆっくりと口を開いた。
「意識が戻ってよかった。もう心配ないよ」
「じゃあ死んだりしない?」
「もちろん!ただ…」
ここで田辺は話すのをためらってしまった。
再び不安が押し寄せてくる。
田辺は和子に確認を取っていた。
「お母さん、私から話していいですか?」
和子は「はい」と言いかけてから「待ってください」と言い直した。
「私が話します」
そういってから和子はじっと綾斗の目を見てきた。
やはり何かある…恐怖と不安と緊張が綾斗を襲ってきた。
そこへ和子が真顔で話をした。
「綾斗、あなたは女の子になってしまったの…」
和子の口から出た言葉が理解できなくて、頭の中が混乱してしまった。
「へ?どういうこと??」
「身体が女の子になっちゃったのよ…」
「僕が女の子になった…?」
予想もしなかったことを言われて、綾斗は固まってしまった。
そんな非現実的なことがあるのだろうか?
とにかくこの言葉通り、岡崎綾斗という男の子の人生は13年で終わりを告げた。