クリスマスデートになっちゃった
特に予定もなく、家でのんびりとしていたら光樹からラインで電話がかかってきた。
「もしもし」
「綾音ちゃん、突然電話しちゃってごめんね」
「ううん、大丈夫」
この頃になると、さすがの綾音も普通に光樹と会話できるようになっていた。
「あのさ、急かなとは思ったんだけど明日って空いてるかな?よかったら2人で遊びに行かない?」
明日、それはクリスマスイブだ。
まさかこの日に誘われるなんて…しかも初めての2人きり、間違いなく告白される…
「やっぱりダメ…だよね。ゴメンね、急に」
返答が遅かったので、光樹はダメと決めつけていた。
違う、ダメじゃない…ダメじゃないけど…
「大丈夫…だよ」
結局断ることができなかった。
「え?ホントに??やったぁ、よかった」
電話越しからでも光樹が喜んでいるのが伝わってきた。
光樹くんはこんなにわたしのことを想ってくれている。
それの何が不満?わたしには贅沢すぎるよ。
そうだ、これからは光樹くんだけを見ていこう。
「楽しみにしてるね」
「うん!じゃあ明日」
電話を切って、自分自身に言い聞かせた。
これでいいんだ、これで…。
翌日、綾音は早起きをして身支度をしていた。
どの服を着ようかな…
何着も取り出して一人ファッションショーをしていたら、突然後ろから声がした。
「デートだな」
驚いて振り返ると、そこには愛梨が立っていた。
「ちょっと、いつからいたの?」
「それより誰と?ひょっとして星野先輩?」
まさかここで勇の名前が出てくると思わなかった。
もう勇のことは考えないと決めていたのに…
「違うよ。別にデートじゃないし」
「お姉ちゃん、今日はクリスマスイブだよ。そんな気合い入れて出かけたらデート以外ないから」
「うぅ…」
バレバレなのが恥ずかしくなる。
「白状しないとお母さんにデートって言っちゃうよ」
「それはダメ!!」
別にバレてもいいんだけど、なんとなく恥ずかしい。
それにまだ付き合っているわけじゃない。
「佳純ちゃんの友達に紹介してもらった人…」
「なんだ、うちの中学じゃないならわかんないや。写真とかないの?」
「な、ないよ…」
答えに詰まったのを愛梨は見逃してくれなかった。
「あるんじゃん。見せてよ」
「嫌だよ!」
「あ、そう。おかーさーん」
「わかった!わかったから…」
渋々スマホから光樹の画像を開いた。
前にみんなでカラオケに行ったときに撮ったものだ。
「お姉ちゃんの彼氏すごくカッコいい。いいなぁ」
「まだ彼氏じゃないよ…」
「でもお姉ちゃんは好きなんでしょ?」
愛梨の言葉が頭をこだまする。
好き…好きか嫌いかと聞かれれば、間違いなく好きだ。
でも大好きかと聞かれたら答えられる自信がない。
これ以上こういう話をしていると、光樹に会う自信がなくなりそうだったので
愛梨を追い出すことにした。
「もういいでしょ、支度しないと間に合わないから」
「はいはい、頑張ってね」
愛梨はニヤニヤしながら部屋から出て行った。
よし、とりあえず支度しないと。
鏡を見て姿をチェック。
ニットに紺のスカート、タイツ、それにベージュのコートを着てみた。
髪は普通にロングのストレート、前髪だけアイロンで流しておいた。
大丈夫…かな。
ショルダーバッグを持って玄関に向かい、
ブーツを履くのに時間がかかっていたら和子がやってきてしまった。
「今日何時頃帰ってくるの?って、ずいぶんオシャレしてるじゃない。まあクリスマスだしね」
和子はデートと気づいたのに、そこにはあえて触れなかったのでほっとした。
ようやくブーツが履けたので立ち上がる。
「7時くらいには…」
遅いと怒られるだろうか。
以前、からまれてこっぴどく叱られてからは学校以外の日の門限は6時だ。
でも、どうしてもこの時間までは許してほしかった。
「綾音、門限超えてるじゃない」
「お願い、お母さん!」
「6時半、30分だけ伸ばしてあげる。そのかわり今日だけよ」
30分か、ギリギリ間に合うかな…
「はーい、行ってきます」
すこしドキドキしながら待ち合わせ場所へと急いだ。




