予想外の人物
翌日、佳純と遊んで少し遅い夜の8:30に駅へ着いた。
バス停からバスに乗り、家の近くのバス停に着く。
そこから家に向かうには大通りをぐるっとまわるように進むのと、公園を突っ切って進む
2つのルートがある。
大通りを行けば10分程度、公園を突っ切れば5~7分程度。
暗い時間はあまり公園を通らないが、
時間が遅くなっているので少しでも早く家に着くよう、公園を突っ切ることにした。
夜の公園は人気がない。
そこが逆に怖かったりもする。
失敗したかな…
少し早歩きになると、公園のグラウンドのベンチから会話をする声が聞こえてきた。
「だろ!マジでヤベーんだよ」
「それお前が悪いんじゃん。ギャハハハ」
若者の声だ。
チラッと見てみると柄の悪そうな少年たちがたむろっている。
これはこれで嫌だな。
通り過ぎようとしたら、少年の一人が綾音に気づく。
「おい、女だぜ」
「おーい」
少年たちはこともあろうか、綾音を呼んできた。
やだ…かかわりたくない…
聞こえないふりをして歩いていたが、少年たちが綾音に近づいてきて囲まれてしまった。
「んだよ、中学生か。ってことは後輩か?」
少年は全部で4人、いかにもチャラそうな雰囲気だ。
そのうち3人は見覚えがあった。
綾音の前の中学校の2つ先輩で秋山、前田、小野。
不良で目立つ存在だったので、話したことなどないが知っていた。
「何年?1年2年?」
関わりたくないので、恐怖を振り切って足を動かす。
すると秋山に腕を掴まれた。
「逃げんなって。よく見りゃ結構かわいいじゃん」
「お前ロリコンかよ。ギャハハハ」
なんでこんな目に合うの…
腕を掴まれたことで、全身を恐怖が支配し、一歩も動けなくなってしまった。
足はガクガクと震えている。
「俺らさ、暇しているだよ。一緒に遊ぼうぜ」
「そうそう、女っ気がないからさ」
やだ…やだ…誰か助けて…
心の中で叫ぶが言葉は出てこない。
「とりあえずこっちこいよ」
秋山が腕を引っ張り、暗がりのほうへ綾音を連れて行こうとする。
えっ?えっ??
混乱する綾音を横目に、小野が笑っている。
「おいおい、マジかよ」
「たまにはこういうのもいいだろ、見張っててくれよ」
うそ…うそでしょ…やだやだやだやだ…
秋山が何をしようとしているのか綾音も理解した。
こんな男に…まだ好きな人もいないのに…
「いやぁぁぁ」
やっと声が出た。
そして必死に抵抗して逃げ出そうとする。
だが、力の差は歴然だった。
「暴れんじゃねーよ…おい!」
怒鳴られ、再び恐怖が体を支配して動けなくなる。
顔は涙でグシャグシャになっていた。
もう何も考えられなくなり、絶望するしかなかった。
「おい!何やってるんだ!!」
突然声がしたので、綾音も少年たちも声の方向を向く。
「ヤベっ」
前田がそう声をあげ、秋山も手を放したので、その隙に距離を取り、
駆けつけた人物を見て綾音は驚いた。
「あん?こいつもガキじゃねーかよ」
「あ、俺こいつ知ってるぜ、2コ下の柔道部だったやつだ」
「こいつも後輩かよ」
そういって4人が笑っている。
その人物は、綾音の同級生だった星野勇だ。
Tシャツにハーフパンツで汗をかいている。
どうやら走っていたらしい。
勇がそのうちの名前の知らない1人の胸ぐらを掴むと、瞬時に投げ飛ばした。
「ガハッ」
背中を強打して苦しんでいる。
「て、てめー」
向かってきた小野も勇は投げ飛ばした。
ドスンという音とともに地面でもがいている。
その光景を綾音はポカーンとみていた。
す、すごい…
次に前田に向かっていく。
ところが、秋山が勇の背中に飛び蹴りを食らわせ、今度は勇が地面に倒れてしまった。
「星野くん!」
綾音は思わず叫んでしまった。
秋山たちは今がチャンスとばかりに倒れている勇に何発も蹴りを食らわす。
「くそ…」
立ち上がろうとするが、秋山、前田の2人に何発も蹴られてはさすがに立ち上がれない。
それどころか、立ち上がってきた小野ともうひとりも加わり、
4人に袋たたきにされてしまった。
「クソガキが、調子に乗ってんじゃねーぞ!」
こうなるとなす術がない。
いくら柔道をやっていても、ケンカは別物だ。
誰か助けを呼びにいかないと…
そう思った綾音も足がすくんで動けない。
このままじゃ星野くんが死んじゃう…
そこへ今度は別の声が聞こえてきた。
「おいおい、4対1なんてずいぶん情けないな」
「あ?」
いつの間にか綾音の後ろに20代半ばくらいの男性が立っていた。
その横には男性と同じくらいの年齢の女性もいる。
いつも更新が不定期で申し訳ありません。
やっと書き終わったので、これからはこまめにアップしていきますので、
引き続きよろしくお願いします。




