ばったりと…
夕方になって、少しだけ涼しくなった。
日が沈んだから気温が下がったらしい。
梨華は一人で買い物をしに駅まできていた。
買うものを買い、ひとりでブラブラしていたが、
もう夕方になったので帰ろうと思い、
駐輪場へ向かっていたらバス停に向かう女の子を見かけた。
あれ?愛梨ちゃん??
近づいて声をかけてみる。
「愛梨ちゃん」
女の子はビクッとなって「は、はい」と言って振り向いた。
やっぱり愛梨ちゃんだ。
そう思ったが、なんか違う。
こんな髪長かったっけ?それにこんなかわいい服着るイメージないし…
でも愛梨と呼んだ女の子は「はい」と返事をした。
見た目は間違いなく愛梨だが、なにかおかしい。
とりあえず愛梨と思って話をすることにした。
「愛梨ちゃん買い物?」
「う、うん…」
「そっか、なんか学校と雰囲気違うね。髪も伸びたの?」
「そ、そうなの…」
やっぱりおかしい…なんでタメ口なんだろう?
別にそういうのはあまり気にしないが後輩の愛梨はいつも敬語で話してくる。
「あ…バ、バスきたから…じゃあ、山口さん」
山口さん?いつも梨華先輩と呼ぶのに山口さん…
このとき梨華の中で何かがピンときた。
確信はない、確信はないけどひょっとして…
「綾斗くん?」
その名前を呼ぶと女の子は固まってしまった。
バレてしまった…もうお終いだ…
綾音は思わず走って逃げだしてしまった。
なんでここで山口さんに会うの?すごく楽しい1日だったのに…
逃げる綾音を「待って」と言いながら梨華が追ってくる。
元々足が遅いうえにサンダル、それに対し梨華はスニーカー、
あっという間に追いつかれ腕を掴まれた。
「待ってよ!なんで逃げるの?」
「だって…誰にも知られたくなかったから…」
「よく…わからないよ…事情話してくれる?」
それでも綾音は逃げたかった。
このまま消えてしまいたかった。
「ずっと心配してたんだよ!急に倒れて、病気で転校したって聞いて…愛梨ちゃんに聞いても全然教えてくれないし…」
梨華は泣き出していた。
その涙を見て逃げる気はなくなっていた。
「山口さん…」
「何があったか話して…わたしたち友達でしょ…」
「友達…」
梨華は事情がわかってなくても今の綾音を見て友達と言ってくれた。
逃げ出した綾音を友達として見てくれていた。
綾音もずっと梨華のことは気になっていた。
それは前の学校で一番仲が良かった友達だからだ。
話せば…前みたいにまた仲良くなれるかな…
「誰にも…言わない?」
「もちろん、話してくれるの?」
「山口さんになら…でも誰にも聞かれたくないから人がいないところでいい?」
「うん、綾斗くんに任せるよ」




