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Be My Self  作者:
11/48

似ている2人

一週間後、リビングに降りて和子に話しかける。

「愛梨は?」

「もうすぐ入学式だからって髪切りに行ったよ」

「ふーん」

愛梨ももう小学校を卒業して春休み。

入学式が間近だった。

といっても愛梨は公立の中学校、つまり綾音が前まで通っていた中学校だ。

「そういえば制服届いたよ」

「ホントに??」

「テーブルの上に置いてあるから」

慌ててテーブルのところまで行く。

開けてみると石原女子中の制服が入っていた。

「わー…着てみようかな」

「そうね、ちゃんとサイズの確認もしなきゃいけないしね」

ドキドキしながら制服に着替える。

これ、わたしの制服なんだよね…

着た姿を鏡でチェックする。

少しだけ大きいサイズになっているのがまた中学生っぽい。

というのも、まだ成長する可能性が高いから少し大きめのサイズにするのだ。

綾音は中2なので、1年よりは成長する可能性が低いが、

それでも念のため大きくしておいた。

「大丈夫そうね」

「うん♪」

「ちょっとお母さん買い物に行ってくるから」

「はーい、いってらっしゃい」

母親の言葉がほとんど耳に入らないくらい綾音は浮かれていた。

なんか脱ぎたくない…

しばらく着ていることにした。

それくらいこの制服が気に入っていた。


30分ほどして、玄関の開く音がした。

もうお母さん帰ってきたんだ、早かったな。

ところが入ってきたのは愛梨だった。

しかも、その姿を見てビックリしてしまった。

「愛梨…その髪型って」

「どう、似合う?お姉ちゃんと同じにしたの」

長かった髪をバッサリ切り、まさかの綾音と同じ髪型にしていた。

でも驚いたのはそこじゃなかった。

「わたしにそっくり…」

「だよね、わたしもそう思ったの!お姉ちゃんが女の子になって似てるなって思ってたんだけど髪型同じにしたらここまでそっくりだと思わなかった。まるで双子だよね」

そういって愛梨は笑っていた。

最初はただただ驚いていた綾音も思わず笑ってしまう。

「だね、でもわたしのほうが1つ年上なんだからね」

「どっちみち姉妹なんだから気にしないの~。それよりお姉ちゃん、制服届いたんだ、かわいい」

「でしょ」

嬉しそうに返事をすると、愛梨はちょっと切なそうな顔をしていた。

ははーん、なるほどね。

その切なそうな顔の理由が綾音にはすぐわかった。

「着てみる?」

「いいの?」

「もちろん!その代わり…綾音の制服着させて」

もしあのまま同じ中学校に行っていたら…

それは常に考えていたことだったので、元の学校の制服も着てみたかったのだ。

2人で制服を交換して着てみた。

愛梨の姿はさっきの綾音とほとんど同じ姿だ。

本当に双子のように見える。

一方の綾音は見慣れた制服なのに初めて着たせいかドキドキしていた。

そして過去のことを振り返った。

この制服着て山口さんとかと一緒に学校行ったら楽しかっただろうな…

山口さんや香川さん元気かな、星野くんなんてこの姿見たら驚いちゃうかな。

でも…この姿でみんなに会う勇気はない…

綾音は病気で遠くの施設に行ったため、転校したということになっている。

やはり同級生たちに女の子になったことを知られるのが怖かったのだ。

少し寂しい気持ちを振り切ってもう一度制服姿をチェックした。

すると、愛梨がとんでもない提案をしてきた。

「ねえねえ、このままの格好でいない?お母さんが見抜けるか確かめるの」

それは面白そうだ。

2人のいたずら心に火が付いた。

「うん、そうしよう!」

しばらくすると和子が帰宅した。

「あっ帰ってきた。じゃあ作戦通りね」

「うん」

綾音がまず隠れる。

リビングには愛梨だけが残り、そこへ和子がやってきた。

「ただいま。あれ、綾音まだ制服着てたの?」

和子は綾音と呼んだ。

つまり気づいていないということだ。

このまま愛梨が綾音に成りすます。

「うん、すごく気に入っちゃって」

「それはいいけど、あんまり着てるとシワになるよ。せっかく新しい制服なのにシワになったらみっともないから」

「はーい」

愛梨は心の中でクスクス笑っていた。

そこへ綾音が登場。

「お母さん、わたしも制服着ちゃった」

「あら、愛梨帰ってきてた…の?」

話しながら振り向いて和子は固まっていた。

「あや…ね?え?」

和子は制服姿の2人をキョロキョロ見比べている。

「なんで綾音が2人…」

そこで愛梨のふりをしている綾音がいたずらっぽく

「お姉ちゃんと同じ髪型にしたの」といった。

「そっくり…まるで双子じゃないの」

「でしょ」と2人が声を揃えて言った。

ところが和子は愛梨だと思い込んでいる綾音に向って怒り出した。

「なんでお姉ちゃんと同じ髪型にするの!見分けがつかないじゃないの」

「だってお姉ちゃんの髪型いいなって思ったから…」

ちょっといじけてみると、和子はすぐに綾音に成りすましている愛梨のほうを向いた。

「愛梨!」

「あれ、バレた」

「当然でしょ!最初は驚いたけどちゃんと見ればわかるんだから。お母さんを見くびらないで」

「てへへ」と2人で笑ってから普段の服に着替えた。

「愛梨、もうお姉ちゃんと同じ髪型にしないように。わかった?」

「だって区別つくんでしょ?」

「そういう問題じゃないの。わたしはわかるけどほかの人はわからないでしょ」

「はーい」

わかってくれてホッとした。

実は和子も区別がつかなかったのだ。

ただ、入れ替わるというイタズラはこれだけ似ていればやるだろうなと想像できたので

わかっただけだった。

私服になれば区別がつく。

女の子らしい恰好をしているのが綾音、ボーイッシュな格好をしているのが愛梨だ。

それでも区別がつかない場合は、名前を呼ばず会話をする。

そうすればどっちがどっちかさすがにわかる。

それにしても…ここまでそっくりなんでビックリ。


ちなみに、義弘も2人を見て固まったのは言うまでもない。


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