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***蝶々の粒子***  作者: 音羽
新世界の標的
10/33

誰かの為のクランクアップ-2


お弁当を冷やすために持ってきた保冷剤を皆に配ってから、私たちは外へ出た。


「今日は本当にお疲れさまでした。」

写真部の一団から進み出て、部長が改めて私たち三人に頭を下げてくれる。


「取引だから、いーよ。」

それを制するように晴ちゃんは笑って、滅茶苦茶楽しかったもん!と感想を述べた。

誰が見ても、あれだけはしゃぎ倒せばそれは一目瞭然だろうし、

部長も「それなら良かった」と答える。


「でもまさか、今回で私たちはお払い箱ってワケじゃないですよねえ……」


キコが背後から怨念を揺らめかせながらつぶやいた。


そう、まだ誰もそのことに触れていないけど、今回の撮影の切っ掛けとなった

晴ちゃんの撮影が残っているのだ。


「あー、それ言ってくれますか…」


部長がニヤリと笑う。

晴ちゃんは、聞こえてませんけれども何か。と言った表情でそっぽを向いた。


「晴さん、散々っぱら私を玩具にしてくれた罪は重いですよ……」


キコは晴ちゃんの肩をガッシリと掴んで目を吊り上げる。

美人が本気で怒ると落差が増してかなり恐い。


「ええ…キコの後なんてやり辛いことこの上ないよー。

僕のはもうイイでしょ、十分いいの撮れたよね!」


「それは関係ないですよ、この事態の発端のクセに逃げられると思っているんですか。


……何なら私が思いっ切り恥ずかしい写真を撮ってやりますよ……」


キコが目を付ければ地獄の果てまで追いかけられることは軽く想像できるのに、

それでも逃れようとする晴ちゃんは勇敢だなあと私は思う。


「じゃ、じゃあ、期待していますよ美野和さん。」部長はただならぬ雰囲気に、

さっさと退散した方が身のためだと察知して部員ともども早々に姿を消した。




 その時、私の携帯電話が震えだす。

この二人か、家族からしか着信がないから、私は家族だと断定してディズプレイを確認する。


そこに表示されたのは"真昼さん"の文字。


私は心底ビックリして息をのんだ。

その姿を見て二人が訝しげな顔をする。


「どしたの?出れば?」


本当は、滅多にない真昼さんからの電話に勢いよく出たかった。

まるで犬のようだけど、すぐ返事して良い子だと思われたい。


でも、人前で真昼さんとお喋りすることは憚られた。

曲がりなりにも学校の関係者と、親密にお話するなんて他の生徒の前では厳禁だって解ってる。


それに、話し方やなんかで、私が彼女を好きなことを悟られてしまうかもしれないし……



「えっと、2人は、先に帰ってて。」



私は急いで踵を返すと、軽くなったカートを力任せに押しながら走った。


人気のないトコで、早く電話に出ないと、という想いのみ先行する。


後で謝れば、許してもらえるよね。



誰も居ない路地裏まで来たところで、途切れてしまったコールに慌て

着信画面を呼び出してすぐさまかけ直した。


「ごめんね、まだ撮影中だった?」


開口一番謝ってくれる真昼さんに、食い気味で

「もう、終わったから、大丈夫!」と返事する。


「大丈夫?息、上がってない?」


走ったせいだ……

私は胸を上下させて呼吸を整える。

真昼さんの柔らかい笑い声が耳元で響き、幸福と、その顔が見れていないじれったさで一杯になる。



「今ちょっと外に出てるんだけど、この後夕食でもどうかな、と思って。」




私はコンマ0.000000001秒くらいのスピードで返事した。

新記録。まさに犬。


「良いよ!!」


真昼さんがまた笑いを漏らした。


「じゃあねー、場所は………」




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