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第2話・初日

「これより、鯖島市立ブロートタケフジインタレスティングギャシュヴァリンゴル鯖島高校の始業式を始めます」

いつも思うのだがこの生徒会長と言うものはどうしてこんな長ったらしい校名を覚えれ、そして噛まずに言えるのだろうか。

「では、まず校長先生のお話です」

出た。また始まった。恒例の校長の話。

「え〜おはようございます。さて、また今年も・・・・・・」

長い。無駄に長い。しかも堅苦しい。校長は喋ってて辛くないのだろうか?

「あのさあ栃香、何で校長の話って何回聞いても慣れないんだろ」

前に立っていた戸田浩(とだひろし)と言う男が話し掛けてきた。何回か話したことがあるのでこちらもむこうも知っている。

「お前は嫌いな食べ物を十回食ったら好きになれるか?」

「成程、よく分かった」

「さしあたり校長の話はグリーンピースだからな」

「なんだ?栃香ってグリーンピース嫌いなのか?」

「ああ」

「・・・・・・ガキ」

「うるせえよ。そう言うお前はなんだよ」

「・・・・・・ピーマン」

「お前の方がガキじゃねえか」

「あ、あと春菊とゴーヤと七草粥」

「あ、分かる分かる。ピーマンは好きだけど」

「ピーマンのどこが美味いか分からん。グリーンピースの方がマシだ」

「はぁ?明らかにピーマンの方がマシだろ。グリーンピースのどこに好ける要素がある」

「それはこっちのセリフだ。ピーマンなどと言う意味不明な植物など食う気がせん」

「グリーンピースよりはマシだろ。あの味は重罪だぞ」

「・・・・・・君達。なーに無駄話してるのかなぁ?」

俺と戸田がピーマンとグリーンピースについて論議を交わしていると、横からふと声が。

2人揃って横を向くと、竹刀を持って引き釣った笑顔を浮かべた岸田がいた。あ、岸田が担任だっつうこと忘れてた。

「あ、あ、や、やあ、お、おはようございますです岸田先生」

「こ、これはこれは岸田先生。い、良い天気で」

自分の顔が引き釣るのが分かる。戸田の顔をチラッと見ると、戸田も同様だった。

「始業式に私の前で話し込むなんて、良い度胸してるよねぇ」

「は、はい、面目ないないでありますです」

自分で言っといてなんだが動揺しまくりだ。

「まあ、今回は始業式だから見逃してあげるけど、今度やったら・・・・分かってるよね?」

「「は、はい!かしこまりました!!」」

2人揃って敬礼する。

「分かればよろしい」

岸田はそれだけ言うとその場を離れ、他の生徒を叱って(脅して)いた。てか叱られてんの桜山と佐山だし。

「次は、新しく赴任された先生方の紹介です」

と、気付けばもう校長の話も終わり、転任教師の紹介に移っていた。

「今年から1年生の数学として・・・・・・」




「あー怠かったー」

結局あの後も新任の紹介やら学校行事の予定やらで長々と話を聞かされ、もう少しで寝ると言う所まで行った。

教室に入ると、黒板には名前がズラッと並べられていた。席だ。

俺は真ん中の列の後ろから2番目だった。出席番号順らしく、前には戸田で後ろは中山と言う男子だった。

席に座ると、横を見る。両サイド共まだ教室に帰ってきてないようだ。

桜山と佐山は帰ってきて席に着いた瞬間から寝ている。ちなみに戸田も中山も爆睡である。

と、隣の奴が帰って来た。隣の奴は席に座ると、俺の存在に気付き微笑んできた。

「あ、えーっと、栃香君・・・・だっけ?元1組の。これからよろしくね」

俺は一瞬ドキッとした。可愛い。長い髪にパッチリとした大きい瞳、プックリした唇に綺麗な頬。誰もが美少女だと思う端整な顔立ちの女子生徒だった。

「あ、ああ。え、えーっと」

「あ、名前?信楽。信楽香月。1年の時5組だった信楽だよ。栃香君、下の名前は?」

「あ、ああ、俺は郵斗。栃香郵斗」

「へえ〜、郵斗か。なら、これから郵斗って呼んで良い?」

「へっ!?」

初対面でいきなり下の名前で呼ぶとは、大した玉である。

「ま、まあ別に良いけど・・・・・・」

「あっ、良い?なら改めて、よろしくね、郵斗」

「あ、ああ。こちらこそよろしくな、信楽」

「香月」

「え?」

「私の事は香月って呼んでね。ねっ、郵斗」

「お、おう。か、香月」

「うん、よろしい」

信楽、いや香月は満面の笑顔になるとこっちを凝視してきた。

「な、何?」

「ん、いや、なんでも」

「?」

なにがなんだか分からないがまあ良いとしよう。

そう思って前を向いた瞬間岸田が入ってきた。岸田も結構可愛いが竹刀を持つとそれも半減だ。

岸田が教壇の前に立つと、生徒は慌てて席に着いた。岸田は珍しく竹刀を持っていない。俺は岸田にバレないように香月に話し掛ける。

「香月、岸田の授業受けたことある?」

「無いなあ。聞いたことはあるけど。結構可愛い真面目な先生だって」

「ほう。知らないか。ならな、気を付けろ」

「岸田先生に?」

「ああ。あいつは危険だ」

「ええ、そんな風には見えないけどなあ」

いや、それは見た目だけだ。香月もあいつの地を知ったら国語が嫌いになるだろう。

「今年2年4組の担任になりました、岸田茉莉です。1年間、よろしくお願いします」

始めだけ体裁が良いのが岸田だ。俺も始めは騙されたものだ。このクラスの大半は岸田の事をよく知らない。だからみんな騙されるのだ。案の定騙されて一部から拍手が起こる。無論元1年1組はしてないが。

初日はこれで終わった。明日は授業らしい。1限目は国語。始めから終わったな。




俺は放課後桜山と帰ろうとしたが、あいつは岸田に呼び出されてるらしい。佐山と辻は野球部だし、戸田はもう帰った。

諦めて1人で帰ろうと教室を出ようとすると、呼び止められた。

「郵斗ー」

振り向くと香月だった。

「おう香月。どうした?」

「一緒に帰ろっ!」

いきなり言われてビックリしたが、一緒に帰る奴がいない俺はまあ良いとあっさり承諾した。




俺は香月と他愛もない話に華を咲かせながら帰路を歩いた。香月の家は俺の家の近所が同じらしく、香月が「明日一緒に学校行こうよ」と言い出した。俺は迷ったが、一緒に行くくらいならと、一応承諾しておいた。


別れ際になって、俺が家に入ろうとしたら、香月は「メルアド教えて」と言った。

「メルアドぉ!?まあ良いけど」

「やった♪」

俺はポケットから携帯を出すと、メールアドレスを紙に書き写して香月に渡した。

「はい」

「うわぁ、ありがとう♪」

香月はまるで子供がプレゼントを貰ったときのように喜んだ。

「じゃ、今日早速メールするね!」

「おう。じゃあな」

「うん。じゃあね」







やったぁ!郵斗のメルアドゲット!

え?私?香月。信楽香月。今はちょっと私視点なんだよ。

それより、郵斗のメルアドゲットぉ♪すんごい嬉しい!

一目見た瞬間から『これだ!!』っていう感じがあった。一目惚れって言うんだろうか。話してる内にもっとその思いが強くなっていった。

早速話し掛けたり下の名前で呼び合ったり一緒に帰ったりした。なかなか好感度は上がったみたいでアピール大成功。メルアドまで教えて貰っちゃった♪

今夜は早速メールしよぉっと。メールで上手いこと誕生日とか聞き出せたら良いけどなぁ。

とにかく、夜が楽しみ♪


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