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第七話(キリッ

遅くなりました

「マコトって可愛い顔して、常識人で、それでいて狂ってるよね」


 それは。

 それはかつて僕がまだ中学生くらいのころに誰かに言われたセリフ。


「人の皮を被ってるっていうのかな? いや、違うか、自分を騙してるのかな?」


 女だかも、男だかも、何もかも、存在すらも不明アンノウンな嘘吐きに言われた言葉


「私に言わせりゃ、キミは最弱なんかじゃなく、ただの超然者だよ」


 違う。

 僕はそんな大層なものじゃない。


 僕は偽善者だ、弱者だ、決して、超然などという言葉が似合わない男だ。


 否定しても、否定を否定してくるソイツがムカついて、僕はソイツを殺した。


 けど、僕もソイツに壊されたから、お互い様だよね?




 ……ね?






*****






 …………うあー。


「――うあー」


 声に出してみた。

 でっていう。


「変な夢みた気がする……」


 覚えてないけど。

 覚えてないだけ気持ち悪い。


「……あれ?」


 ふと隣を見るとアレックスがいない。


 うぅむ、僕の記憶では昨日ベッドが一つしかないという理由で一緒に寝たはずなんだが……。


 無駄にでかいベッドから起き上がり、周囲を見渡す。


 …………。


「……アレックス、何で床で寝てるの?」

「……難易度が高すぎる所為です」


 首を傾げておく。


 わかるけど。


 当分遊ばせてもらおう。


「じゃ、着替えるかな」

「お手洗い行ってきます」


 ちっ、逃げたか。


 僕は寝巻にしてたスクール水着を脱ぎだし、固有結界を頭の中で展開する。


 さてと、今日は何を着ようかな……。

 うーん。


 悩んだ末に巫女服を着ることにした。

 赤と白のスタンダートな色だが、腋が開いている。


 確か某弾幕ゲームのキャラの服だっけか、昔無理矢理着せられた覚えがある。


 男としては大分長い髪を赤いリボンで括る。

 ふさぁっと髪が靡き、僕の頬をくすぐる。


 今日も良い朝だ。



「あのー、着替え終わりましたかー?」

「ん? あ、ああ」


 終わったよー、と言うと、アレックスが入ってきた。


「……なんか神聖な格好ですね……腋見えてるけど」

「神様に仕える人の服だからね、腋見えてるけど」


 しっかしなんで腋開けてんのかねえ、わけわかめ。


「それで、あの……」

「わかってる、お母さんの病気を治してほしいんだっけ」


 アレックスの仲間加入条件ってやつだ。

 クエスト、アレックスの母親の病気を治せ。

 報酬はアレックスが仲間になる、ってね。


 と、言うわけで。


「到着です」

「意外と早く着いたね」


 まあキンクリったからな。


 目の前にはこの世界にとっては一般的にはサイズの木製の小屋。

 ここがアレックスの母親がいる家なのだろう。


「この小屋が?」


 一応確認。


「ええ」


 正解だった。


「じゃあ早速入ろうか」


 アレックスは頷くと、ドアをノックし、中に居る人――おそらく母親と一言二言話すと、ドアを開けた。


 アレックスが入ってくので、僕も遅れないように入る。


 小屋の中は、簡素なモノだった。


 椅子が数脚脇に置いてあって、豆電球に似た照明装置が天井から吊るされている。

 そして、ベッドが一つ。


 その上に一人の女性がいた。


「あら……」


 アレックスと同じ茶色の髪を肩口まで伸ばしたその人は、眠たげな瞳をこちらに向けた。


 見た目は齢は二十代後半くらいだろうか、焦心した表情をしてるため、少し実年齢より老けて見えるのだろうか。


 いずれにしろ、この人……。


「まー! 何? 何この子? かーわーいーいー! あーくんの彼女? 恋人? え、ちょ、かーあーいーいー! 持ちかえっていい? 駄目? 息子の彼女を寝取るというのも悪くないわね……じゅるり」


 本当に病人なのか?


「ちょ、母さん! 彼女とかじゃないから!」

「えー、違うの? なんだ残念、よし、じゃあ……えーと」

「あ、マコトって言います。こんにちh……」

「マコトちゃん! 私と一緒に百合の花を咲かせましょう!」

「いい加減にしろ!」

「もがもが……」


 母親の口を塞ぐアレックス。


 いや、テンション高すぎだろ……。


「もがもが……ぷはっ、なーんだ、片思いか、頑張れよ! 我が息子よ!」

「ち、ちげーし! 勝手に言うな!」


 ……? 頑張れよ、からしか聞こえなかったが……何か言ったのか?


「アレックス……そろそろ話しを進めたいんだけど」

「え? ああ、そうだな」

「何? 何? 何の話?」


「貴女を治すという話ですよ」


 瞬間。

 アレックスの母親の表情が変わった。


 おちゃらけてた顔が、真摯な顔に。


「……治す? 私の……この脚を?」

「ええ、完膚無きまでに治してあげましょう」


 てか、悪いとこ脚だったんだ。

 まだアナライズしてなかったからわかんなかった。


「……不可能よ」


 …………。


「この脚はね、あ「ケアル」……え?」


 よし、これで病原体は全滅した。

 あとは……。


「ベホマベホマ、はい、これで完治」


 ぱしーん、と軽く彼女の脚を叩く。


 ……手が痛い。


「もう痛くないでしょ?」


 にっこりと笑う。


 僕の回復魔法はもうチートの領域なんだよ。

 治せない怪我は無い、多分。


「……お金は無――」

「いりませんよ、そんなもの」


 だっていくらでも作れるし。


「じゃあ、何が望みなの?」

「僕の望みは、ただ一つです」






「――息子さんを、僕にください」




マコトの言動は全てわざとです

あくどいですねぇ

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