dairokuwa
テスト終わったー
そして久しぶりの更新
僕は。
僕は手の中にすっぽり収まるサイズのガラス玉を弄くりながら、街中を歩いていた。
隣には先ほど仲間になった少年、アレックス。
自分の身長ほどある剣を抱えながら健気に付いてきている。
ちなみに僕とアレックスの身長は同じくらいだよ、その所為で端から見ると姉弟だね、ハハッ!
笑えねえよ。
僕大学生だぞ? もうすぐ成人だぞ? どうして小学生くらいの子供と身長が変わんねえんだよ、えぇ?
そんな僕の内心の葛藤はいざ知らず、アレックスはしっかりと僕の隣を歩いている。
僕はガラス玉を自分の固有結界の中に放り込み、足を止めた。
「? どうしたんですか?」
アレックスも足を止め、心配そうにこちらを窺ってくる。
いやさ、凄く言いにくいことなんだけどもさ。
「お、……おぶってくれる?」
体力の限界である。
*****
「どんだけ体力無いんですか……」
宿屋に付き、ベッドに降ろしてもらった矢先にアレックスがそんなことを言ってきた。
僕はそれに良い笑顔で「こんだけ!」と指で半径2cmくらいの円を作って言った。
凄く呆れ顔された。
「言葉通りの意味、マジでこんだけしか体力無いのが僕の凄いところだよね」
「全然凄くないです」
ばっさりと言われた。
少しショックだ。
まあ慣れてるけど。
「まあいいや、閑話休題閑話休題。本題に入ろう」
僕はベッドの縁に座りなおし、アレックスは椅子に礼儀正しく座った。
ちょうど向かい合う形だ。
「そうだね、まずはちゃんと自己紹介しよう、僕はマコト、マコト・フミハラ
見ての通り――」
男だ。
と、言おうと思ったが、あえてやめておいた。
なんか面白そうだし。
「えっと、見ての通り、超絶美少女です☆」
「……まあ否定できませんが……」
超絶美少女が認められてしまった。
まあいいけど。
「じゃあ俺――いや私は――」
「俺でいいよ」
「あ、はい、ありがとうございます」
この世界では目上の人には一人称を私にするらしい。
まあ僕は別に目上じゃないし、使い慣れてるほうを使ったほうがアレックスも楽だろう。
「……っと、俺の名前はアレックス……です。姓名は無し、騎士見習いです」
「敬語もいらないんだけどね」
「えっと、それは流石に……」
見習いと言えど騎士だから、仕える人に敬語無しは拙いらしい。
ふーん。
「ならばいつかその敬語を無くして見せるぜ!」
「何ですかその決意……」
今更だがアレックスはつっこみキャラっぽいな、僕の周りには今までいなかった新しいタイプだ。
……僕の周りの人物、
姉、変態
幼馴染、変態
……変態しかいねえ。
「ど、どうして泣いてるんですか?」
「違う! これは塩酸なんだ! 決して涙なんかじゃ無いんだー!」
「塩酸!? 何ですかそれ!? 素直に涙って言いましょうよ!」
あ、アレックス……君ってやつは……!
「常識人だー! 死んだ母さん以来の常識人だー!」
「ぅえ……!?」
抱きついた。
あまりの常識人ぶりに感動して抱きついてしまった。
結構勢いよく跳びついたため椅子ごと倒れるかと思ったが、アレックスは子供ながらも流石騎士、耐えてくれた。
ぎゅ、と手を後ろに回し、胸に頭を押し付ける。
あ、やべえ、結構落ち着く。
あれだな、新生児は母親の心臓の音聞くと落ち着くって言うけどそれに近いものかなこれは。
……いや、違うか。
「あ、あの……マコトさん……そろそろ……」
「ん? ああ、はいはい」
素直に離れる。
アレックスは顔を赤らめながら服を整える。
……、僕は見逃さなかった。
アレックスのズボンがわずかに盛り上がってたことに……。
まあ男の子だから仕方ないか、うん。
「それじゃ、僕の目的について話しとこうか」
「あ、はい」
僕は再びベッドに腰掛ける。
「まずはそうだな……異世界って分かる?」
「イセカイ……? すいません、分かりません」
分かんないか……。
「うーん、つまり、こことは別の世界ってこと」
「こ、この世界以外にも世界ってあるんですか?」
「あるよ」
それはもう、無限に近いくらいに。
「僕はその無限に近い世界の一つに住む凡庸な一般人だったんだけどね、何の因果か、神様に目を付けられて幾つかの世界を救えとか言われちゃったんだよ」
「え、えっと……?」
「要するに……滅亡しかけてる世界が幾つかあるからそれをちょっと救ってきてって神様に頼まれたんだよ」
かなり省略したが、アレックスは理解出来て無いようだ。
いや、まあいきなり神様とか言っても混乱するだけか?
「えっと……」
「信じられないかもしれないけど、これは事実だよ」
「いえ、そうじゃないです。信じてます……が、そんな世界とか神様とかが関わってる問題に俺なんかがお役に立てるのでしょうか」
「立てるよ」
僕は即答した。
即答の名人とはこの僕のことだ。
自称だけど。
「僕は戦えないんだよ、世界最弱と呼んでも遜色が無いくらい。だから戦ってくれる仲間が必要不可欠なんだよ」
「……だけどそれは僕じゃなくても……」
「うんそうだね、けど君みたいな子供のほうが僕は都合が良いし、もう探すのめんどくさいから仲間になってくれるとすごい嬉しい」
「で、でも俺そんなに強く無いですよ?」
「問題ない、僕が強くしてやろう」
この世界の強くなる方法というのは、色々あるが、僕が一番効率良いと思ったのは『魔物を倒す』というものだ。
何でも、魔物を倒すと経験値っぽいものが手に入り、能力値がアップするらしい。
僕の補助魔法はかけると窮鼠がネコどころか虎まで倒せるようになるほど強力だから、なんとかなるだろう。
「うーん……」
「ま、よく考えて、僕に付いてくるってことは、暫くの間元の世界――この世界には帰れなくなるってことだから」
「…………」
アレックスは目を伏せてしまった。
考え込んでるのだろう、当然だ。
「それに命の保証も出来ない、後悔するかもしれない、だから――」
「お供します」
今即答しなくてもいいよ。
と、言おうとしたのに遮られてしまった。
でも、その返事は僕にとって凄くありがたい返答だった。
「あ、でも、一つお願いしていいですか?」
「……? なんだい?」
「俺の――俺のお母さんを、助けてください」
――ふぅん。




