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ダイゴワアアアアア

テスト週間なのに小説なんて書くな?

違うね、テスト週間で学校が早く終わるからこそ、小説を書くのさ(キリッ

 さて、僕の能力の一つ、回復魔法や補助魔法についての説明でもしようか。


 まずこれは僕の貰ったチートな能力の中でも一際強力であると僕は思っている。


 制約として僕自身には掛けることはできないとはいえ、ホイミ並みの魔力消費量でベホマズンが放てるというチート。

 さらにザオリクやらレイズデッドやらリカームの蘇生魔法すら普通に使える。

 ようするに仲間が死んでも蘇生可能。まあ跡形もなく消えたら無理かもしれないけど。


 そして補助魔法、これはさらに酷い。

 回復魔法と同じく自分に使うことはできないが、その効果は絶大、実験としてちょうどネコっぽい生き物に襲われてたネズミに攻撃力強化バイキルト速度強化スティームブラッドを掛けたら次の瞬間には腹に大穴を開けたネコの死体が倒れていたほどだ。


 しかもこの能力、なんとオリジナルまで作れるのだ。

 試しに全能力強化とか作ってみたが、まだ使ったことは無い。


 なんかごっそりと魔力持ってかれそうで怖いのだ。

 僕は弱いから、何が起きてもいいように魔力はなるべく温存してるのだ。




 まあそんなこんなで、現在地、スラム街。


 この世界に来て三日経ち、最初に来た街――ベベベベーベベベベーベベー街――をあらかた探索し終わったとき……。

 て、もう何回も思ってんだけどベベベベーベベベベーベベーってなんだよ、うん、いやまあ僕は異世界人だから感性とかがこの世界の住民とは違うってのは理解してるんだけどさ、理解はできても納得はできないって言うのか、こういうの。


 閑話休題。

 つまりまだ行ってないとこがこのスラム街だけになったのだ。


 スラム街といえば、パワポケ4裏のスラム街が浮かぶ僕だけど、ここはそれ以上に酷かった。

 異臭。腐敗、そして痩せ細った人。

 ……なんかこう、イラッとくるな。

 街の奴らとここの人達の貧富の差が、むかつく。


 ふと道端で寝てる老人が目に着いた。


「…………」


 まだ生きているようだ。


「んー……」


 理解はしている。ここで僕が能力を使って一時しのぎで助けても、根本的な解決にはならないことを。


 まあ、納得はしてないんだけど。


「大丈夫ですか?」


 思わず、声を掛けていた。


 老人は、「ぅう……」と呻く。

 そして僅かに目を開けると、静かに笑い、言った。


「ふ……ふふ……この街で……誰かに看取られて……死ねる……とは……の……――」


 ガクンと、糸が切れたように老人は死んだ。


 蘇生しても、無意味だろう。

 蘇生出来ることには出来るが、その次の瞬間にはまた死んでしまうだろうから。


「……アーメン」


 別にキリスタンじゃないけど、アーメン以外に死者を送る言葉を知らないからとりあえず言っておく。


 ……少し、心が重いな。


 立ち上がり、また歩き出す。


 崩れかけの小屋の間を抜け、舗装なんて欠片もされてない道を進むと、少し広いとこに出た。


 さっきの老人とは明らかに違う、若い――とは言い難い人もいるが、どう見ても働き盛りの年齢の人たちが、くたびれた鎧を着て数十人、座りこんでたのである。


 全員が全員――無気力な瞳をし、この世の終わりのような顔をしていた。


「一体何が――」

「旅の人?」


 突然横から声を掛けられ、声の主の方を向く。

 子供がいた。7~8歳くらいの子供。

 汚れてくすんだ茶色の髪をした遊び盛りであろう男の子。

 騎士見習いか何かだろうか、周りの大人たちの鎧より一回り小さい軽鎧を着ている。


 そんな子供すら、無気力で無意味な眼をしていた。


「すぐどっか行ったほうがいいよ」


 子供は感情のこもって無い抑揚のない声で言う。

 まるでRPGのNPCみたいに。


「ここで――何があったの?」

「伝染病さ、俺らの隊が全員掛っちまってね、ここまで追いやられちゃったのさ」

「伝染病」


 ……穏やかじゃない言葉だな。


 要は、隔離か。

 これ以上伝染病が広がらないための。


「ああ、もう……」


 いらつく、むかつく、腹が立つ。


 いくら伝染病だからってさー、もうちょっとまともな場所に隔離してやれよ。


「その伝染病の薬は?」

「開発された、でも、お金が無いから買えない。俺らの隊は成り上がりの貧乏人で構成されてたからね」


 カチン。


 今の一言で、もうキレた。


「僕はなぁ……善人でも聖人君子でも無いけど……


 ――偽善者なんだよ!」


 自己満足のために良いことをして、褒められるために善行をする。


 偽善者。


「アナライズ!」


 子供の容体を見る。


 ふむふむ、神経を食い荒らして徐々に殺していく病か、症状は段々と手足が動かなくなり、最期脳が死んで死ぬ、性質たちわりい。


「ベホマ! 浄化! ディスペル!」


 ベホマは体力回復、浄化は汚れを落とし、ディスペルは状態変化を回復。


 アナライズを通して見る限り、これで完全に回復したようだ。


 うん、満足満足。


 子供を見ると、驚いたような目でこちらを見ている。


 そして開口一番。


「か……金ならねーぞ」


 と言った。


「あ……あんた魔法使いだったのか? 何が目的だ?」

「金なんていらん、魔法使いか、一応そうなる。目的は自己満足」


 律義に答えてあげた。


 それでも子供は納得しないのか――理解も出来て無いのだろうか、茫然とした目でこちらを窺っている。


 僕は手を差し出し、立ち上がることを促す。

 子供は警戒と疑問と安堵を混ぜたような表情で僕の手をとり、立ち上がった。


「さてと……」


 周りを見渡すとこの広場にいた全員が僕のことを見ていた。


 その眼には、何か信じられないようなものでも見たかのような感情を映している。


「彼らも治さなきゃね」


 全員に動揺が走った。


「お、おいアンタ、正気か?」

「正気さ、僕は自分の気持ちに正直だからね」


 何使えばいいかなー、こんだけいるから一人ひとり直してくのはめんどくさいし……。


「例え利益にならなくても僕は彼らを――キミを救いたいと思ってしまった。だからそれに従うまでさ」


 使う魔法が決定したので魔力を込める。


「範囲設定、OK、ベホマズン、大浄化、オリジナル――ディスペリアン」


 まず回復効果が及ぶ範囲を設定、そして範囲内の生物全ての傷を完ぺきにいやす魔法、ベホマズン。

 汚れを落とす、大浄化。そして今考えたオリジナル、ディスペルの複数効果版のディスペリアンを使った。


 キラキラっと光が走り、傷をいやす。

 ジュワアアアという音を奏でながら、汚れを落とす。

 そして最後に伝染病にかかってた全員の身体から、紫の光が飛び出て、空に消えていった。


「……ぅ」


 次々と座ってた人達が立ち上がっていく。

 そしてその中の一人が、その眼に涙を浮かべながら叫んだ。


「う、ぅおおおおおおおお! 治った、治ったぁあああああ!」


 それを口火に鎧の騎士たちが、騒ぎ出した。


 皆、涙を流し、仲間たちと抱き合い、死を免れたのを喜んでる。


「あ……アンタ、何者だよ……こんな凄い魔法……見たことも聞いたことも……」


 子供が目を見開いて言う。

 しかしその続きは一つの渋い声で遮られた。


「失礼」


 白髪が混じったオールバックの髪、蓄えられたヒゲ、そして、鎧に他の人には無い盾と剣の紋様が入っていた。


 ……騎士隊長とか、そんなのだろうか。


「た、隊長!」


 ビシッと、子供が敬礼する。


 やっぱ隊長だったか。

 隊長は子供を一瞥すると、こちらを見た。


「まずはお礼を言わせてもらいます。部下を……我らを助けていただき、誠に感謝しております」

「いえ、お礼なんて……」


 年上には敬語、日本人の基本である。


「いえ、死地から救ってくれた貴女にはいくら感謝しても感謝したりませぬ、何か礼をしなければ……我らの気持ちが収まりません」


 そう言って隊長さんは膝を着き、手を胸にあてた。

 この世界での服従の格好だろうか。


 年上に頭を下げられるのに……違和感を感じる。


「……ん?」


 ふと眼の片隅に、まだ座ってる人が見えた。


 回復の範囲内には入ってたはずだから……まさか……。


「……彼は?」

「ん? ……ああ、彼は……つい先日……」


 間に合わなかったのか……。


「……っ」


 罪悪感が浮かんでくる。

 僕があと一日早くここに来ていれば……。


 そんなこと言ってもしょうがないけど、気分は晴れない。


「……レイズソウル」


 光の渦が僕から放たれ、死体に落ちた。


「アーンドベホマ、浄化、ディスペル」


 それぞれの呪文のエフェクトが死体に降り注いでいく。


 すると……。


「……ぅ」


 はい蘇生。


 すっげー滅茶苦茶だなこの能力。


「死者が……生き返った――!」


 隊長さんが口をあんぐり開けて驚いてる。


 そりゃそうだろーなー、僕も逆の立場だったら絶対驚くし。


 はー、まあこれでやっとスッキリした。

 魔力の消費は……まあ気にするほどのもんじゃないな。


「貴女は――」


 隊長さんがこっちを向いて、言う。


「女神様なのですか?」


 わお、女神と来たか。


 女神、ねぇ。まず僕は男だから女神じゃないことは確かだな。


 まあでもある意味、


「いえ、半神ですよ」


 一応創造神の眷族扱いらしいし、こんな偽善を行った理由付けとしては妥当だろ。


「半……神……?」

「半分人間の、半分神様です。神の眷族みたいな存在ですよ」


 それを聞いた途端、隊長さんが低かった頭をさらに下げて平伏した。


 それに釣られるように他の騎士たちも頭を下げていく。


「ちょー! タンマ! 頭なんて下げなくていいですって」

「そ、そういうわけには行きませぬ。神の使いを前にそんなこと……!」


 随分簡単に半神なんて信じるなぁ……まあ目の前で使者蘇生なんて見せられたらそうなるか。


「あー、じゃあ、お願いがあるんだけど、いい?」

「なんなりと」

「まず僕のことは他言無用でお願い」


 神の使いが訪れたなんて広められたらたまらん。

 隊長さんは神妙に頷いた。


「そんで、この子頂戴」


 そう言って、僕は僕の右後ろで平伏してた子供を指差した。


 騎士たちに動揺が走る。子供は突然指差されてテンパってるようだ。


「ちょ……頂戴というのは?」

「その言葉の通りです、今仲間集めの最中なんですよ」

「そ、それでしたら他の、もっと強い者のほうが……」

「子供の方が都合が良いんですよ」


 ごついおっさんと旅なんてしたくねーし、ていうか僕の見た目だと相手が大人だと夜あぶねーんだよ。

 その点子供なら可愛いし、将来性あるし、襲われる心配ねーし。


「あ、でもこの子がOKを出したらですけどね」


 そう言って僕は子供のほうを向く。


「どう? 僕と来ない?」


 優しい声色で言う。


「はい……えと……」


 子供は隊長らをちら見した後、僕の目を見て言った。


「よろしく、お願いします」


 …………。


「そか、よろしく。それじゃあまずは自己紹介しよう、僕はマコト、マコト・フミハラ。キミは?」

「えと、アレックス……です」


 これが、僕とアレックスの、最初の出会いだった。


最初の仲間、アレックス登場

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