ダイニワ
さあ、回想の時間だ。
僕こと『文原マコト』は腐姉と同性愛者の幼馴染に無理矢理着せられた一サイズ小さいブルマを着て体育の授業に出るという羞恥プレーに涙目ながら耐えた後、最早普段着と化したメイド服を着て、帰路に着いた。
その後、腐姉の持ってきたドレスやらナース服やらで着せ替え人形にされるさなか、少し楽しんでる自分に絶望した後少し遅い夕食を食べ始める。
夕食をもう少しで食べ終わるってとこで我が腐姉が「そうだ、京都に行こう」と何の脈絡のなく言ったとこまでは覚えてる。
しかしここは何処だ、三百六十度全部真っ白な世界、空間。
そして僕の目の前にいる、小さい爺さん。身長は三十cmくらいだろう。
えーと、
「状況の説明を求めます」
「異世界召喚最強モノ」
成程、納得だ。
「こういうのはパターン的に考えて逃げられないんだろ? ならやってやんよ俺やってやんよ」
「ほっほっほ、それはそれは……流石ワシじゃな、最初っからこんな面白い娘を引き当てるとは」
「僕は男だよ、察するにアンタ神様なんだろ? わかねえの?」
「神様なんてちょっと力の強くて寿命の長いだけの人間とほぼ変わらんよ、全知全能な存在なんているわけないじゃろう」
「まあそりゃそうか」
「ふむ、ではそなたにやってもらいたいことは……て、え?」
「ん?」
「お、男じゃとおおおおおおおおお!?」
「遅っ!」
「信じられん! ワシは間違いなく『ロリ幼女』で検索したはずなのに! 世界の意思にさえ女と認識されるほどの女顔じゃとでも言うのか!?」
「……言葉も出ねえ……」
ていうか神様、アンタロリコンなのか……。
大丈夫かこの世界……。
そんな感じで暫く悶えてた神様は、ふと何かを悟ったのかこっちを見据えた。
「男の娘もいいよね!」
「変態か!」
「と、まあ冗談はこれくらいにしとくかな」
「半分くらい本気だったろ」
「失礼な、十割じゃ」
ふざけんなおい。
「いい加減話を進めようか、まず、お主を呼んだ理由じゃ」
「やっとか……」
「ま、端的に言うと世界を救ってもらいたいだけじゃ」
爺さんの話を要訳するとこうだ。
今、爺さんの管轄する世界で幾つかの世界が壊滅の危機に瀕してるらしい。
で、チートな能力あげるからそれ救ってきてとのこと。
いや、うん、清々しいほどテンプレだった。
「……行ってくれるかの?」
爺さんのその問いに、僕は答える。
「――だが断る」
~fin~
「……言ってみたかっただけじゃよな?」
「うん」
はぁ、と溜め息を吐いた神様は、僕を見つめ、こう言った。
「で、何の能力がいい? 三つまでなら何でもおkじゃ」
「うーん、そうだなぁ……ちょっと考える時間頂戴」
いいじゃろう。という神様の言葉と同時に、僕は思考を始める。
テンプレ的に考えて、戦闘はあるだろう。
しかしそこは僕という人間、戦闘に関しては他の追随を許さないほど僕は虚弱で、貧弱で、絶望的なまでに弱いのだ。
【究極の他力本願】、それが爛の付けた僕の二つ名。
その名に違わず、僕は人を使うのは得意で、好きだ。
好きなゲームは育成ゲーム、嫌いなゲームはアクションゲーム。
ならば……と、僕は決める。
「決めた、僕は決心したよ、爺さん」
「ほう、言ってみろ」
「一つ目、創造魔法、またはそれに近いもの」
「ふむ、創造魔法は……ちょっと無理かの、それに近いと言ったら……複製じゃな」
「ん、それでいいよ」
じゃ、次だ。
「二つ目、回復魔法や補助魔法を最大限まで使えるようにして」
「まあおkじゃ、それくらいならの」
よし、んで最期。
「僕自身の固有結界を使用可能にしてくれ」
「お主自信? あの有名なアンリミテッドブレードワークスとかじゃなくてお主の内面世界ってことかの?」
「うん」
「むぅ、どんなのになるかわからんぞ? それでもいいならいいが……」
「構わない」
「……了解じゃ」
そして爺さんがどこからか取りだした杖を振ると、僕の身体がポワッと淡く光った。
「完了じゃ、ああ、あとついでに固有結界を一時間維持できる程度の魔力も与えておいた、ついでに魔力の自動回復機能もな。では、質問とかが無ければもう一つ目の世界に送るぞ」
「ん、お願い」
こうして。
こうして僕の平和で平和で平和すぎる変わった日常は終わりを告げ、変わりすぎな非日常が幕を開けるのであった。
そういえば、姉と幼馴染は、どうしてるだろうか。
そんなことを、薄れゆく意識の中でふと思ったのだった。