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LaLa7~深淵の帝國と硝子の世界~  作者: 長良 橘
プロローグ
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プロローグ 女傑と海神

今回はプロローグです。


基本的に、作中に登場する兵器のデータは書かず、少し描写するに止めるつもりです。


また、今作の日本帝國の技術力は史実よりも発展しております。

「シスター・サラ」という愛称で親しまれているそのフネは、正式名を『サラトガ』といった。


 巡洋戦艦を改装した、現代型空母と呼ぶには旧式すぎる巨大な船体は、古臭いとも表現できる。

が、彼女を見つめる無数の瞳は、そんな思いなど全く抱いていなかった。

それは当然だろう。彼女を、旧式空母と馬鹿にする者など一人もいない。

彼女は、太平洋戦争後、米合衆国海軍に残された、唯一・・の「戦前に就役した空母」なのだから。

姉妹艦は全て沈み、先輩達や後輩達も多くが沈んだ。数々の海戦を、傷つきながらも生き残った艦。


嘗ての敵である帝國国防海軍将兵ですら、尊敬して止まなかった浮かぶ城。

それが、「シスター・サラ」だった。


一九四五年から約四年間に渡って行われた太平洋戦争は、日米両国にとって決して忘れられない戦争となるだろう。史上最悪の悲劇として、だ。

しかしその後、ソヴィエドという共通の敵を見付けることで、日米関係はかつてないほどの蜜月時代を迎えていた。帝國と合衆国という二つの軍事大国は、世界を赤色に染め上げる悪魔と戦う義務を負わされたのだ。

合衆国相手に勝利、というよりは有利な講和までこぎ着けた日本帝國は、今や自然に「強国」の一つにカウントされるようになっていった。

 しかしそれは、アジアとオセアニアの防衛と共産主義(赤色)の撲滅を任されるという代償を強いられる、塩辛い称号だった。


もっとも、すでにソヴィエドが連合国軍との戦争で崩壊、ロシア共和国となってからは、帝國は強大な軍事力を保持しながらも、一応は平和を享受していたのだが。






そんな「シスター・サラ」は、現在日本有数の軍港である、佐世保させぼに錨を下していた。

付近には、星条旗を掲げた大型巡洋艦『サモア』が停泊し、その周囲は旭日旗を掲げた帝國国防海軍艦艇に囲まれていた。


戦前や戦時中では、決して見られなかった光景であるが、今ではイチイチ騒ぎ立てる者もいない。


旭日旗を掲げる軍艦の中には、改大鳳かいたいほう型航空母艦や神威かむい型防空巡洋艦などの歴戦の艦もいれば、新鋭ニューフェイス雷鶴らいかく型航空母艦や凪風なぎかぜ型駆逐艦も停泊していた。


その中で、一際目立つ大型艦が、ゆっくりと出師すいしのために動いていた。それは決して張子の虎ではなく、獲物の喉笛を引き千切る、獰猛な豹だった。


スマートな艦影シルエットに、一目見ただけで、唖然とさせる程の高角砲や対空機銃。そして何より、優美さと醜悪さを兼ね揃えた巨大な砲塔が三基。


戦艦『駿河するが』が、アジアオセアニア連合(UNAO)艦隊の一員として、出撃しようとしていた。


西暦1958年、5月8日の出来事だった。






 


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