02-2.歪んだ時間:イレイside
初めは、自分は子供に欲情する変態なのかと思った。
けれども、ヨゥラ以外の子供を見てもなんともなかった。
ほっとした。
ちょっとした気の迷いなのだろうと。おそらく、某かの流行小説や芝居の影響を受けたのだろうと。
依然として欲望の対象は、成人女性だった。
けれども・・・何度も見るのだ。
夢の中の自分は裏腹に・・・ヨゥラを思うままに嬲っていた。
上気した肌を撫で上げ、自らで貫き・・・達していた。
起きて自らのみた夢に絶望したのは、一体何度あるだろう。
ヨゥラに窘められても女遊びを止められなかったのは、自分がいつか彼女に夢の中ではなく本当に手を出してしまうことを恐れたからだ。
ヨゥラ。
『一生懸命お探しします。おじ様が戻っていらっしゃる方法を。だから、おじ様、必ず待ってくださいませ。例え・・・たとえ何年かかろうと必ず。』
可憐な声で、一生懸命に訴えるヨゥラに罪悪感を覚える。
ヨゥラが気にかける必要などないのに。
ああ、お前は、本当に優しい子だ。
「いいのだ。いっそ・・・忘れてしまっても構わない。」
半年。大きな時間。この世界での一日が、向こうの半年であるというのなら。
きっと、ヨゥラはあっという間に大人になる。
そのうち、自分がいないうちに、恋人を作って結婚して子供ができて年をとって・・・きっと忘れてしまう。
いや、忘れてしまったほうがいい。自分のことなど。
想像するだに心臓に突き刺さるような痛みを覚えるが、ヨゥラの為にはそれがきっと万全だ。
二周りも年の離れた子供を夢の中とはいえ欲望の対象にするような男が傍にいるよりは。
「早いうちに忘れてしまってくれ。・・・ただ、願わくば、お前の幸せを祈っている。」
『そんなこと!そんなことできるわけございませんわ!わたくしの、わたくしのせいなのに!』
「ヨゥラのせい?・・・私の行いが悪いせいに決まっているだろうに」
ヨゥラと最後に買い物にいった日のことを思い出す。
自分にとってはほんの数日前の出来事だったから、鮮明に思い出せた。
きっとヨゥラはあの日のことをいっているのだ。
女癖の悪さを彼女に叱られた後、ちょっとした諍いになった。
その時のことをきっといっているに違いない。
「おじ様なんてどっかいってしまってくださいませ!」
彼女はイレイに向かってそう言い放っていた。
きっと、その言葉がこの事態を引き寄せたのだと思っているのだろう。
「お前の言葉が原因などではないよ。普段からお前に叱られていただろう。きっと、神様が余りにも私の行いが悪いと判断されたのだよ。仕置きが必要だと考えたんだろうね。だから気にしなくていい。お前を悲しませているとわかったら、私の行いの悪さに磨きがかかったと判断されて、今度は神にどこに連れて行かれてしまうかわかったものじゃない。」
『いいえ、そうではないのです!そういうことではなくて、わたくし・・・』
「ああ、そういえば、いっていなかったな。御誕生日おめでとう、11歳になったのだね。また一つレディに近づいたかな?」
何か言葉を続けようとするヨゥラを遮った。
ヨゥラも私の言葉で、これ以上この話題を続けたくない心情を悟ったのだろう。
大人しく、
『ええ、11になりましたわ。』と続けてくれた。
どこか、声が涙混じりだった気がするが、ヨゥラの顔が見えない今、それが真実かどうかを確かめる術はない。