02-1.歪んだ時間:イレイside
『おじ様・・・もう朝のようですわ。起きてくださいな。』
「ヨゥラ?ああ、すまない、仕事の準備をしなくてはならないな。」
のそり、と気だるげにイレイは身を起こした。
『・・・夢の中でも、寝ぼけるということがあるんですのね。』
言われて、【昨日】の出来事が蘇る。
よくよく見れば、周りは寝台などではなく、草むらだった。相変わらず枯れた色。
心まで枯れそうなその色から、イレイはすぐに目を離した。見ているだけで、気が滅入る。
枯れた草から目を話した後、彼は正面を向いた。
目の前には光の球がちらちらと瞬いている。昨日と同じだ。ヨゥラの声はそこから聞こえてきていた。
『おじ様、お目覚めになられまして?』
「・・・ああ、今、目が覚めた。夢の中なのに目が覚めるとは妙な気分だが。やれやれ、昨日は草むらなどで寝たせいか、体が痛む気がするよ。ヨゥラ、お前は元気かね?」
『わたくしは元気です・・・と申し上げたいのだけれど。』
「・・・ど!?風邪でも引いたのかね?昨日、お前に無理をさせたから。」
既に、彼女の中に残っているのは【力】の残滓だけだ。
きっと、搾り出すようにして無理に【力】を使っているに違いない。
【力】の無理な行使は体力を奪う。
よもや、そのせいで病を得たのではあるまいか。
『ああ、違うのです。病など得ておりませんわ。そうではなく・・・その前に確かめさせて頂けるかしら?』
「何をだね?」
『おじ様の中で、わたくしにあったのは昨日、それで間違ってございませんわね?』
「ああ、確かだ。だが、お前のその口ぶりからして・・・何かあると思ってよいのかね。私にとっては間違いなく昨日なのだが。
・・・お前には違う。そういうことか?」
『・・・・・・・ええ。あれから、半年がたちました。わたくし、今日が誕生日ですの。』
半年。
一年の半分。
それだけの月日が、この一日の間に流れていたと?
『ごめんなさい、おじ様。半年もこちらではたっておりますのに、そちらからお呼びできなくて。都では漸く病の原因らしいものを特定しつつあるそうですが、治療法のほうとなると未だに手がかりも見つかっておりませんの・・・』
しゅんと意気消沈したヨゥラの声が響く。
きっと、もし顔が見えれば、俯いて唇をかみ締めているヨゥラの姿が目に入ったはずだ。
「いや・・・いいのだよ。ヨゥラが気にする必要はない。」
ヨゥラが気にする必要はないのだ。
きっと、これは罰だから。
殆ど自分の子のようなお前に焦れていた、自分への罰。
夢の中で、十のお前を何度穢したことか。
浅ましい願いを抱いた己へ、とうとう下された罰なのだから。