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一人百物語

母が見たもの

作者: 犬猫夜行
掲載日:2026/07/19


三十年程前の話。

その日は朝早くに出勤した父を見送ってそのまま、うちの母は自宅前でゴミ出しをしていた。

当時家族で住んでいた我が家の前には、バレーボールコート三つ分程の児童公園があり、ブランコやすべり台の他に公園の隅には小さな平屋建ての公民館が建っていた。

その、公民館の方を母がふと見ると。

公民館の出入り口の軒先に…

何か、青白いものがある?

(何だろう?)

と母がそちらをじっと見ていると。

公民館の軒先に、小さな青白い光?がちろちろと明滅して、ゆらゆらふわふわと宙を揺れ動いている?

母はそれに火事かとも思い、何歩か歩み寄って更によくよく見てみると。

それは普通の火ではなく?てのひらに乗る様な、小さな青白い“綺麗な”炎の様な、光の様なモノだった。

それが

公民館の軒先にゆらゆらふわふわと……?

それに母は

(人魂?)

と思い、そう思うや何だか怖くなってあわてて家の中に入ったという。

母はそれを私に話して

「綺麗だったよ~。

こんなちっちゃい青白~い花火みたいな火の玉がさ。公民館の軒先に、ふ~わふ~わち~ろち~ろ、燃えながらくるくる動いてるのっ!写真に撮っといたらよかった!」

などと、言っていた。


そしてその“綺麗な青い火の玉”を母が見た日の夜、公民館ではお通夜があった。

後に母が“綺麗な青い火の玉”を見た日にお通夜があった、と同じ町内の人たちに話すと

「別の時に私も見た」

という人が他にも何人かいたという。

町内の人はたいがいこの町内の公民館で通夜や葬式を出すため、亡くなればここに来る事になるとわかっているものだから、それで公民館に

“一足早く”

帰ってくるのだろう、と皆でそう言っていたとか。


後に公民館は新しく建て直されたが

今も時々、人魂(?)が公民館の軒先に出る時があり、その日の夜や翌日には、たいがい通夜やお葬式になるらしい。





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