「新章突入」の巻!
短編です
ある日の朝、顔を洗おうと洗面所に立ったら、「第24話 恋の行方」と頭の上に浮かんでいた。
「・・・・は?」
もう一度水で顔をジャバジャバと洗い流しても、浮かんだ文字は消えなかった。
学校に遅刻しそうだからそのまま家を出たけど、どうやら俺にしかその文字は見えていないようだった。
その代わり、自分の分だけじゃなくて、他人の分も見えるようになっているのが厄介だった。
友人の頭の上には「【悲報】ランチA定食売り切れの段」と書かれていた。その文字の通り、一緒に学食に行ったら、あいつが楽しみにしていたA定食が売り切れていて、泣く泣く少し高価なB定食を選んでいた。
講義の時、新婚の先生の頭に「妻のお使いを忘れた夫の末路・・・」と書かれていた。確かに今日は元気がない様子で、いつもはウザイくらいの妻自慢から授業が始まるのに、ソレがなかった。
つまり俺は今日、恋に関する何かが動き出すということになる・・・のか?でも俺、いま好きな子とかいないけどなぁ。俺の恋の行方・・・一体何が起こるんだろう。
ちょっとだけワクワクとした気分を抱えたまま、今日の午後の講義まで何も起きずに終了。バイトにも行ったけど何もないまま、帰宅した。・・・え、告白イベントとかないわけ?なんだよ、ちょっと期待したのに。バイト先でもらってきたまかないを家で食べる。ただの寂しい大学生生活だ。何が恋の行方だよ。
課題を済ませて、寝る前にゲームでもとTVを付けた。そう言えば、今やってるの、乙女ゲームだったなぁ。
昨日までの続きを開いて、しばらくゲームを進めていると、コツコツ好感度を上げていた主人公との会話で選択ミスをして喧嘩をしてしまい、好感度が急に下がって主人公とはバットエンドを迎えてしまった。
なんだ、恋の行方ってそう言うことか。ゲームの話だなんてつまらん。
なんとなくやる気が無くなって、いつもより早くゲームを切り上げた。
風呂に入った時、すでに日を跨いでいたから、鏡を見てみると、頭上の文言が変わっていた。
「最終話 眠れない朝が来る」
最終話?・・・最終話って・・・・最終話!?まてまて、これって人生のタイトルみたいなもんだよな・・・眠れない朝が来るってのはまぁいいとして、最終話?最終話ってことは物語の終わり・・・。え、俺の物語、明日で終了!?えぇ!?眠れない朝が来るってことは、俺、夜中の内に死ぬの!?コレは寝ないほうが良いやつ?いや待てよ?眠れない朝が来るんだから、寝てしまえば、眠れない朝とは言わないよな!良し寝よう!
泡だけ流して、濡れた体のまま布団にもぐりこんだけど、不安と恐怖で全然眠れない。そのまま俺は朝を迎えた。
タイトル通り・・・。眠れないまま朝が来てしまった・・・・。でもまだ死んでない・・・え、じゃぁ俺、今日のどこかで死ぬの?
俺は大学に休みの連絡を入れた。家を出なければ事故には遭わないだろう。実際濡れたまま寝たせいかちょっと熱っぽかったし。
カーテンを閉めて、鍵を閉めて、玄関も閉めて、誰も入ってこられない様にして、頭まで布団にもぐりこんだ。
死ぬのは嫌だ。でも家の中から出なければ何とかなるんじゃないか?待てよ?風邪が悪化して死ぬ可能性もある。風邪薬を飲んでおこう。
ドキドキしたまま時間だけが過ぎていく。どうやって死ぬんだろう・・・死ぬのは嫌だ。死ぬにしても痛いのは嫌だ!不安な思考がグルグルと巡る。
眠れなかったのと薬の効果が相まって、いつの間にか眠ってしまっていた。次に気が付いたのは、日を跨ぐ頃だった。
23:59分・・・0時!・・・。
「死んでない・・・・」
恐る恐る鏡を見ると頭上に「新シリーズ 第一話 風邪ひき男、病院へ行く」と書かれていた。
——何なんだよもぉ~!——
暇だし、別の子の攻略でもするかぁ・・・。




