積み木の学び舎と「御意向」という名の耐震偽装
今回は、少しだけ空気の重たい日の記録です。
いつものように遊んでいるだけのはずなのに、
ある一言が出た瞬間、場の雰囲気が変わってしまって——
子どもたちの世界にも、「言いにくいこと」や「触れにくいこと」があるのかもしれない、と感じた出来事でした。
そんな春の午後のひとこまです。
春の光が差し込む、リビングの一角。
そこに——
異様な高さがありました。
---
積み木。
---
高い。
高すぎる。
---
建てているのは、あの子。
いつもマスクの騎士のすぐ後ろにいる、あの子でした。
---
積む。
また積む。
まだ積む。
---
しかも、その場所。
---
CEOの“カベ用地”。
---
誰もが分かっている場所に、
なぜか堂々と建っている。
---
報道官が、止まる。
---
「……ここ」
---
一歩。
---
「みんなの」
---
さらに一歩。
---
「なんで、ここだけ、たかい?」
---
空気が、止まる。
---
そのとき。
---
建てていた子が、ゆっくりと振り向きました。
---
そして——
---
布を掲げる。
---
騎士の布。
---
「バブ」
---
短い。
---
「……ごいこう」
---
一瞬。
---
沈黙。
---
空気が、変わる。
---
報道官の動きが、止まる。
---
周りの子たちも、動かない。
---
「……いま、なんて?」
---
報道官が詰める。
---
「だれの?」
---
さらに一歩。
---
「ほんとに?」
---
「いつ?」
---
「どこで?」
---
「だれが、きいた?」
---
一気に来る。
---
しかし、建てていた子は、うなずくだけ。
---
布を、もう一度、掲げる。
---
「……ごいこう」
---
それだけ。
---
——強い。
---
報道官が、騎士を見る。
---
「せつめいは?」
---
騎士は、顔を上げる。
---
しかし——
見ていない。
---
少し斜め上。
---
「……いかんです」
---
間。
---
「きわめて、いかんです」
---
違う。
---
「それじゃない!」
報道官が食い気味に入る。
---
「ごいこう、あったの?」
---
騎士、うなずく。
---
「こべつの、やりとりについては——」
---
間。
---
「こたえを、さしひかえます」
---
ざわつく。
---
「じゃあ、あったの?」
---
「なかったの?」
---
「どっち?」
---
騎士は、少しだけ口を開く。
---
「……きおくに、ございません」
---
間。
---
「きろくは、のこっていません」
---
その手で。
---
紙を、丸める。
---
つぶす。
---
見えないところへ。
---
「ちょっと!」
---
報道官が一歩踏み出す。
---
「それ、いま、けしたよね!?」
---
騎士は、うなずく。
---
「てきせつに、しょりしました」
---
完全に、ずれている。
---
そのとき。
---
CEOが、立ち上がる。
---
何も言わない。
---
高い積み木を、見上げる。
---
一番下。
---
そこに、手を置く。
---
「……クビだ」
---
押す。
---
ガシャーン。
---
全部、崩れる。
---
御意向も、校舎も、いっしょに。
---
静寂。
---
誰も、何も言わない。
---
報道官が、小さくつぶやく。
---
「……やっぱり」
---
騎士は、何も言わない。
---
ただ、新しい布を持ってくる。
---
また、配る。
---
何もなかったかのように。
---
私は、崩れた積み木を拾いながら、少しだけ笑いました。
---
「まあ、春だからね」
---
風が吹く。
---
花びらが、舞う。
---
床の上に、まだ少しだけ——
高かった名残が、残っていました。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
あの日は、にぎやかなようでいて、どこか静かな一日でした。
はっきりとした答えは出ていないのに、
なぜか話が進んだような気になってしまったり、
一言で空気が変わってしまったり。
不思議なやり取りが続いていた気がします。
結局、最後はいつものように落ち着いたのですが、
あのとき出てきた「言葉」が、どこまで本当だったのかは、よく分かりません。
それでも、また同じ場所で遊び始めるのでしょうし、
それもまた、ひとつの“かたち”なのかもしれませんね。
また次のお話でお会いできたら嬉しいです。




