小さな報道官と若き最高責任者
前回に続き、我が家の小さなCEOの記録です。
……と思っていたのですが、どうやら今回は少し様子が違います。
気がつけば、彼のそばには“説明役”のような存在が現れていて——
しかも、私よりずっとはっきり物を言うのです。
育児とは、本来こんなに「反論される」ものだったでしょうか。
どうぞ、少し騒がしいリビングの様子を、そっと覗いてみてください。
我が家の小さなCEOに、ライバル……ではなく、強力な「側近」が現れました。
隣の家に住む、利発そうな赤ちゃん。
彼女が遊びに来た瞬間、リビングの空気がぴんと張りつめます。
——なにかが始まる。
そんな予感がしました。
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私がCEO(我が子)の食べこぼしを指摘しようとした、その瞬間。
彼女はおもちゃのマイクをぐっと握りしめ、すべるようなハイハイで前に出てきます。
勢い余って少しよろけながらも、体勢を立て直し、こちらを見上げる。
そして——止まりませんでした。
「おかあさま、そのしつもんはダメです!ダメです!ダメです!」
マイクは逆さまのまま。
それでも彼女は続けます。
「しーいーおーは、ちゃんとたべてます!たべてます!ぜんぶ、けいかくです!」
一度息を吸って、さらに押し込む。
「いまのは、もんだいじゃないです!ぜんぜん、もんだいじゃないです!」
言いながら、なぜか自分で大きくうなずく。
「だから……えっと……だいじょうぶです!」
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その背後で、CEOが積み木を崩しました。
「カベ……!クビだ……!」
また何かを思いついた顔です。
すると彼女は、くるっと振り返り、即座に説明に入ります。
「いまのは、こわしたんじゃないです!ちがいます!」
勢いよく言い切った瞬間、尻もち。
それでも止まらない。
「つくりなおしです!つくりなおし!もっといいカベになります!」
立ち上がる。すぐに指を立てる。
「だから、しんぱいは、いりません!」
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CEOが強気な声を上げるたび、彼女は一歩前に出て、なぜか自信満々にうなずきます。
言葉は少しあやふやでも、不思議と空気だけは支配している。
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そんな二人の「おやつタイム」。
私は黙って、ボーロの皿を差し出しました。
CEOは迷わず一番大きな粒を掴み、
彼女はそれを見て一瞬だけ考え、なぜか頷く。
「……それで、いいです」
誰に向けた同意なのかは、分かりません。
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気づけば二人は並んで座り、静かにボーロを食べていました。
さっきまでの緊張が嘘のように、穏やかな時間が流れます。
ただ一つだけ違っていたのは——
彼女が、誰にも聞かれていないのに、小さな声でつぶやいたこと。
「……だいじょうぶです。ぜんぶ、うまくいってます」
その隣で、CEOはもう次の積み木に手を伸ばしていました。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
この日はとにかく、よく喋る一日でした。
もちろん言葉としてはまだ不完全なのですが、不思議と「通ってしまう」瞬間があって、思わず聞き入ってしまう自分がいます。
気づけば、私よりも上手に“場の空気”を作っていて——
誰が主導権を握っているのか、少し分からなくなってきました。
これから先、この小さなCEOと、その頼もしい(?)報道官がどんな連携を見せるのか。
正直なところ、少しだけ楽しみにしています。
また次のお話でお会いできたら嬉しいです。




