我が家の小さな最高経営責任者(CEO)
はじめまして。
これは、我が家の生後十ヶ月の息子との、なんでもない日常を切り取ったお話です。
……のはずだったのですが、気がつけば、どうも様子がおかしくなってきました。
言葉はまだはっきり話せないはずなのに、なぜか妙に「指示」が的確で、こちらが従ってしまう場面が増えてきて——
「赤ちゃんって、こんな感じだったかしら?」
そんな小さな違和感から、この記録を書き始めました。
どうか、肩の力を抜いて、くすっと笑いながら読んでいただけたら嬉しいです。
その日は、どこにでもある穏やかな昼下がりのはずでした。
生後十ヶ月の我が子が、スプーンをじっと見つめたまま、微動だにしなかったその瞬間までは。
やがて彼は、ゆっくりと顔を上げ、私をまっすぐ見据えました。
そして——
「……オマエハ、クビダ!」
スプーンが、カチンと皿に当たる音を立てました。
リビングの空気が、ほんの一瞬、固まりました。
聞き間違い。そう思いたかったのですが、彼は迷いなく次の指示を出します。
小さな指で、積み木をびしっと指し示し、
「カベヲ、ツクレ!」
命令でした。完全に。
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第二章:子供部屋の統治
それからというもの、我が家の意思決定は、明らかに彼を中心に回り始めました。
• おむつ替えの交渉:
仰向けにされた瞬間、彼はじっとこちらを見つめます。
そして気に入らなければ、無言で人差し指を突きつける。
その小さな指先に、なぜか逆らえない圧があります。
• 境界の設置:
キッチンにベビーゲートを設置した日、彼はそれを一周して確認しました。
軽く叩き、揺らし、最後に満足げに頷く。
——どうやら「完成」を承認したようです。
• 演説の練習:
おもちゃの電話を耳に当て、彼は延々と何かを語り続けます。
「バブ、バブバブ……!」
内容は不明ですが、なぜか途中で自分で頷いているあたり、すでに結論は出ているようです。
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結末:将来の夢は……?
私は頭を抱えました。
「将来は優しいお医者さんか、スポーツ選手に……」
そんな穏やかな未来を想像していたはずなのに。
今朝も彼は、少し冷めたミルクに不満を示し、執務室の中からこちらを見据えます。
「カベ……!カベ……!」
その視線の先には、おやつをしまった戸棚。
そして次の瞬間。
彼は、自分で積み木を崩し始めました。
——どうやら、防衛線の再構築に入ったようです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
育児は毎日が慌ただしくて、思い通りにいかないことばかりですが、こうして振り返ってみると、ひとつひとつが少しだけ可笑しくて、愛おしい時間でもあるのだなと感じます。
本人はきっと、ただ一生懸命に「伝えよう」としているだけなのでしょうが、なぜかこちらが試されているような気持ちになる瞬間も多くて……。
これから先、この小さな“CEO”がどんな判断を下していくのか、正直、少しだけ不安です。
でも同時に、少しだけ楽しみでもあります。
またよろしければ、次のお話も覗いてみてくださいね。




