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再誕世界のルカ  作者: 葦原 綾真
第九章 旅立ちの陰で

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第四十二話 女子会

「と、そのように仰られてまして……いかがしましょうか?」

 セオと馬を並走させながら、ノアは先ほどリィゼとの間で交わされた会話の内容について説明していた。

 セオの隣にいたはずのエリナは、ノアの馬が下がってくるのを見て入れ替わるように馬車の横まで進んでいる。

「ふむ……」

 ノアの報告を聞き、セオは少し考えるような仕草をしたが、それほど悩むこともなく決断した。

「お望みの通りにして差し上げろ。ただし、ミリア殿にリネットとエリナ嬢の身体検査をしてもらい、着替え以外の手荷物類はすべて持ち込み禁止し、持ち込む着替えもすべて検める、といったところは徹底するよう伝えてくれ。そこまでやれば、お嬢様を傷つけられる可能性が残りそうなのは術士のリネットくらいだろうが、彼女は身元も確かだ。」

「なるほど、ではそのようにお伝えしておきます。リネットとエリナ嬢への連携は野営準備に入ってからで構いませんか?」

「あぁ、それでいいだろう。」

「承知しました。では。」

 セオの判断を受け、ノアは早々に馬の腹を押さえ、馬車の方へ進んでいく。

 同時にノアの接近に気がついたエリナが、先ほど同様自身の位置をセオの隣まで下げてくる。

「また気を遣わせたようだな。感謝する。」

「いえ、たまたま気がついただけなので……何の話かはわかりませんが、ノア様が話さないといけないんですか?」

 エリナは先ほどから少し疑問に思っていたことを口にした。

 馬車の中にいる少女がこの隊列にとって最重要人物であることも、隊列の中での実質的な指揮命令系統の最上位人物がセオであることも、エリナは理解している。

 なのであれば、なおさら少女と会話し、様々なことを判断するのにセオが直接対応すれば済むというのに、なぜだがセオはノアを挟んで会話をしているのが、不思議でならないのだ。

「お嬢様はまだお若い。私のような堅物相手では話しづらいこともある、ということだ。今は気心の知れたミリア殿や当たりの柔らかいノアが周囲にいる方が心安らかに過ごせる、とでもしておいてくれたまえ。」

 それだけではないが、その理由を口にはしない。

 自身の前方、馬車の小窓から顔を出すリィゼと馬を横につけたノアが、穏やかに微笑み見つめ合いながら話しているのを眺めていれば、その理由もわかるというものだ。

 とはいえ、その理由はあまり公に広まっていいものでもない。

 誰にもわからないほどに小さくため息をついたあと、セオは馬の手綱を引き、更に後ろに下がりだす。

「エリナ嬢、少し馬車の反対側が気になるのだが、付いてきてくれるかな?」

「え? あ、はい!」

「(邪魔者は少し席を外すのがよかろう)」

 セオは湖を眺めていたエリナに声をかけ、リィゼとノアを見ることのできない、馬車の反対側へ移動するのだった。




 街道が湖を離れ、その左右どちらもが森林になる。

 先ほどまで湖に反射する陽の光のおかげで明るかったのに、今は街道の上だけに空が見えるだけで、やはり少し薄暗い。

 そんな街道を進むことしばし、隊列の後方、西の方の空に朱が差し始めたのを見たセオたちが、野営の可能な場所の検討を始めていた。

「この辺りは少し街道が狭すぎますね。馬車だけならともかく、天幕の設置は厳しいでしょう。」

「ふむ。エディル、先の方はどうなっている?」

「もう少し進んで貰えれば、ちょっとした広場があったっすよ。あの広さならお嬢の天幕くらいは設置できそうっす。」

 先行して街道周辺の状況を偵察しに行っていたエディルの情報を聞き、一行は今日の野営場所をその場へと決める。

 日が落ちると森の中はすぐに暗くなってしまうからと、セオは少し移動を急がせると、十数分程度進んだところにエディルの報告通り、少し開けた場所が現れた。

 以前にも誰かが使ったのか、焚き火の跡も残っている。

「報告通り、広さは十分だな。よし……隊列停止! 本日の移動はここまでとする! 小休止の後、各員、野営の準備に取り掛かるように!」

 セオは広場を確認すると、即座に隊列全体に号令を下す。

 昨日同様、皆手慣れた感じで野営準備を進め、ルカも昨日同様《石壁ストーンウォール》による防壁と間接照明型篝火の設置を進めていくのだった。

 日が落ちて広場の周囲が暗闇に覆われる前に作業は完了し、哨戒班ごとに警戒体勢を維持しながら夜を迎える準備が進んでいる。

 そんな中、リィゼがいる一番大きな天幕の前に、セオ、ノア、ミリア、リネット、そしてエリナが立っていた。

「――ということだ。質問はあるか?」

「わ、わ、私もですかぁ~!?」

 日中、リィゼからの「お願い」により、今夜はリィゼの天幕にミリア、リネット、エリナの三人が入り、共に夜を過ごす。このことについて、セオがリネットとエリナに説明したのである。

 エリナにとっては、リィゼ自身のことは容姿と「お嬢様」と呼ばれていること以外を知らされていないこともあり、その重大さがいまいちわかっていないようだが、リネットは別だ。

 彼女はもちろんリィゼがどこの誰なのかを知っている。

 リネットはたまたま風の感応術適性があるからということで索敵者(シーカー)に抜擢されただけで、ただの平民であり、本来王女でありリィゼとそうそう直接話せるような立場ではない。

 リィゼ本人の「お願い」とはいえ、萎縮してしまうのも仕方がない。

「お嬢様たっての希望なのでな。失礼のないようにだけ、気をつけてくれ。」

「は、はいぃ……(き、緊張しすぎて絶対夜寝れない~~~!!)」

 冷や汗と緊張で青い顔をしているリネットと、リネットを横目に不思議そうにするエリナに目を向けながら、ミリアが注意事項を説明していく。

 と言っても、ミリアが身体検査を行うこと、天幕に持ち込めるのは着替えのみということ、持ち込む着替えはミリアが検めるということくらいなのだが、リネットの耳に届いているのかは怪しいところである。

 程なくして、エリナとリネットも天幕へ入る準備を終え、二人はミリアの身体検査と持ち物の確認を受けて天幕に足を踏み入れた。

「り、リネット一等兵です! し、失礼しますっ!」

「えっと……エリナです。失礼しまーす……」

 リネットがうわずった声で自身の階級と名前を名乗り、エリナはおっかなびっくりという感じで天幕内を見回している。

 天幕の中は中心部の天井から小さなランタンがぶら下げられており、向かって最も奥の寝台に少女が腰掛けていた。

 栗色の髪はランタンの明かりを受けて少し赤みがかった色に見え、緩やかな曲線を描きながらも、ゆったりと纏められている。

 出発の日に挨拶に立った時のドレスではなく、就寝用の可愛らしい色合いの夜着と、初夏とは言え身体を冷やさぬようにとガウンを羽織っていた。

 寝台と少女の手前には小さなテーブルが置かれ、小さなカップが四つと、お茶が入っていると思われるポットが置かれており、テーブルの左手には一つ、右手には二つ、追加の簡易寝台が置かれている。

 今夜四人で過ごせるようにしっかりと準備済みのようだ。

「リネットさん、エリナさん、ようこそいらっしゃいました。エリナさんははじめまして、ですね。私は……そうですね、フィリス、と呼んでいただけますでしょうか。」

 フィリスと名乗った少女が立ち上がり、夜着の裾を摘んで小さなカーテシーをとる。

「わぁ……素敵……」

「こ、この度は、このような場に、お、お誘いいただきっ、あ、ありがとうございますぅ!」

 頭の上から足のつま先まで、可憐で優雅という他ない程に美しいカーテシーに、エリナが思わず声を漏らす隣で、リネットは緊張でどもりながら挨拶している。

「あら……ふふふっ、ありがとうございます。」

 エリナの様子に相好を崩したフィリスは、エリナに向けて柔らかな微笑みを湛えている。

「リネットさんも、そんなに緊張しないでください。今日は楽しくお話したくてお呼び立てしただけなのです。こういうのって"女子会"って言うのでしたっけ?」

「そうですね。年頃の女子が集まって楽しくお話する会、だそうですよ。年頃の女子、というには私はいささか年齢が行き過ぎていますが。」

 あまりの緊張に固まったままのリネットにもフィリスは優しく語りかける。女子会がしたかったのだと語る彼女に、テーブルのポットを手にお茶をカップに注ぎながらミリアが口を挟んだ。

「あら、私から見ればミリアもうら若き女性なのだけど。」

 くすくすと肩を揺らすフィリスはエリナとリネットの方へ身体を向け、立ったままの二人に腰掛けるように促した。

 ミリアもお茶を注いだカップをそれぞれが手に取りやすいように置き、自身も天幕左手の寝台に腰掛ける。

「して、お嬢様。今夜が女子会なのは理解しましたが、どのようなお話をされるのですか?」

「それなのですけど、私、お友達が欲しくて……お二人に私とお友達になってもらえないかと……」

「はひっ! お、お友だ……ち!?」

 緊張で固まっているリネットと、突然呼ばれて何を話していいのやらわからぬままのエリナの代わりに、会話の口火を切ったのはミリアだった。

 何かについて話すのか、それともフィリスが興味のあることでも聞かれるのか、などと思っていたところ、彼女が口にしたのは「友達になって欲しい」というお願い。

 緊張が限界に達しそうなリネットは友達になって欲しいと言われ、若干過呼吸気味にも見える。

「えっと、友達、ですか?」

「ええ。お友達、です。私はいろいろと事情があってお友達が中々できなくて……エリナさんのように私と何のしがらみもない方であれば、もしかして、と。」

「お嬢様……貴女という方は……」

 エリナの顔には疑問符が浮かんだままだ。エリナにとってみれば、友達などというものは「なろうとしてなる」ものではなく「なんとなくいつの間にかなっている」ものであって、気が合うもの同士であれば、友達になろうと意識する必要はないと思っている。

 友達が中々できないなどと言われても、相当気が合わないのか、本人ないしは相手の性格に問題があるのだろうと考えるところだが、今のところフィリスという少女の性格が友達ができない程おかしいようには見えない。

 しかし、残念ながら原因はそういう部分ではないところにあった。

 フィリス、つまりリィゼはヴェールスフィア王国王女リィゼ=セリオール=ヴェールスフィアであり、平民はもちろんのこと、貴族ですらも本人の家族以外は並び立つことを許されない地位にある。

 友達とは利害関係や上下関係なく、対等でいられる人間だ。だが、フィリスはリィゼであり、王族以外でリィゼを知る者は等しくリィゼよりも地位が低い。

 いくら貴族やその子女が親しくしようとしても、どこかに主君と臣下という線引きがなされてしまう。

 しかし今回、幸か不幸か王族が訪れることのないブレーヴェ村で、王族を見たことのない、年頃の少女、つまりエリナが随行することになったのである。

 任務の都合上、自身の素性も隠すことになっていて、エリナはフィリスがリィゼであることも知らなければ、王女であることも知らない。

 残念ながら護衛依頼という利害関係はあるが、それもバルディアまで行ってしまえば契約終了となり、利害関係も一旦なくなるのだと考えれば、もしかすると、と考えたのかもしれない。

 ミリアは渋面になってこめかみを押さえている。

「(王女の身では望んでも手に入らぬもの、か……)」

 フィリスの気持ちを理解はできるが、立場上は何とも言えない。

 王族以外は等しく得ることができるのに、王族だけは許されないそれが、彼女にとってどれほど渇望するものなのか、普段間近に接する分、痛いほどわかるのも事実だった。

「ダメでしょうか……」

「ダメというかなんというか……」

 眉尻を下げ、少し悲しそうにするフィリスに、エリナもどう回答すればいいのかわからず困ってしまった。

 エリナにとってはフィリスは素性がわからないなりに、高貴な身分であることだけは分かる。

 そんな相手から友達になって欲しいと言われても、そのまま受け入れていいのか判断に困るのだ。

「はぁ……お嬢様、あまり二人を困らせないでください。」

「ミリア……」

 見かねたミリアが割って入った。「困らせるな」と言われ、フィリスは見るからに意気消沈している。

 ミリアが天を仰ぐようにしながら考えることしばし、天幕の外に声が漏れないようになのか、少し声のトーンを落として言う。

「では、まずこの場において、フィリス、ミリア、リネット、エリナという四名は対等な関係であり、過度な気遣いなどはしないものとする。で、いいですか?」

 はっとしてフィリスが顔を上げる。みるみるその表情に色が戻っていく。

「"この場において"は不要だわ。せっかくですから、"私たち以外の人がいない時は"にしましょう?」

「本当にもう……」

 困ったような表情を浮かべつつも、目の前の少女の喜びように、ミリアは顔が綻んでしまう。

 ここまで来てしまった以上、ミリアとしては、この場をしっかりと纏めておかねばならない。

 おそらくエリナは問題にならないだろうと、先に意思を確認することにした。

「エリナさんは、それでもいいですか?」

「え? あ、はい。皆さんそれで問題ないのでしたら……」

「ではそのように。さて、リネットさん。」

「は、はいっ!」

 問題はリネットである。

 リネットはフィリスの素性を知っている。知っている以上「対等な友人関係」というのは難しい。

 であるならば。

「お嬢様と貴女と私を《風の封壁(ウインド・シール)》で包んでいただけますか?」

「え? 私の《風の封壁(ウインド・シール)》はほとんど意味が……」

「矢や投石はどうか知りませんが、音は遮断できるでしょう?」

 ミリアはエリナ以外を《風の封壁(ウインド・シール)》で隔離するように指示した。

 リネットの《風の封壁(ウインド・シール)》が障壁としてほとんど意味をなさないことは元より聞き及んでいるが、風の障壁が形成できるのであれば、「音」は止められる。

 リネットが小さく障壁を作り出したのを確認すると、ミリアはリネットを正面に居住まいを正す。

「このようなやり方はいささか不本意ではありますが……リネット一等兵。ロウラン男爵家三女、王女殿下付き侍女であるミリア=ロウランの名において貴女に命じます。フィリス――すなわちリィゼ=セリオール=ヴェールスフィア、ミリア=ロウラン、エリナ。以上三名と共に過ごす時に限り、この三名との貴女との間に一切の身分の差は無いものとします。なお、この命は相互の信頼関係が破綻せぬ限り有効とします。よろしいですね?」

「は、はい……はい? え? えぇ~~~~~!」

 ミリアは困り顔のまま、今この場にいる四人の間に身分の差という前提だけを取り除くという命令を下した。

 そうしてフィリスと自分、リネットとエリナの両者の間にある差をなくす。見かけ上でしかないが、それでもこれは必要なことと飲み込む。

 リネットは自分に下された命令に一瞬承諾したものの、その意味するところを理解するにつれ、驚きと戸惑いに目を白黒させている。

 王女と平民の自分の間で身分の差は無いものと考えろ、と言われているのだから、無理もない。

「ほ、本当に……よろしいのですか? お、恐れ多くて、そんな……」

「いいも何もありません。そのように命令しているのですから。拒絶するに足る理由がないのであれば、命に沿ってそのように行動なさい。」

「ぎょ、御意のままに!」

 リネットは慌てて立ち上がったかと思うと、すぐに片膝をついて命令への恭順の意を示すが、フィリスはすぐにリネットへと歩み寄った。

 その手を取ると、リネットを立ち上がらせ、柔らかな微笑みを彼女へ向ける。

「リネットさん、そのような行動は不要です。私たち、今は立場に差がないのですから。」

「ええ、そうですね。さぁ話の続きをしましょう。エリナさんも障壁内へ入れて差し上げて下さい。あぁ、そうそう。まだエリナさんには殿下や私の立場の詳細を明かさないでください。こちらはしかるべきタイミングを見計らう必要があるでしょうから……」

「はい……」

 リネットが障壁を操作して、《風の封壁(ウインド・シール)》の効果範囲を天幕の内側全体に広げる。

 風が作り出す障壁の中はとても静かで、先ほどまで天幕の外側から聞こえていた兵たちの声も、作業の音も、木々のさざめきも聞こえない。

 無音といってもいいその空間が、この場に四人だけしかいないと意識させる。

「さて、エリナさん、お待たせして申し訳ありません。」

「いえ、私は部外者ですし、話せない事もあると思いますので……」

 フィリスが立たせてしまったリネットを座るように促して、自身も天幕奥の寝台に戻っていく。

 その様子を確認したミリアは、改めてエリナとリネットを交互に見ながら口を開いた。

「エリナさんも薄々感づいていらっしゃると思いますが、私とお嬢様は貴族階級の人間です。特にお嬢様にはいろいろとありまして、うまく友人を作ることができませんでした。」

「み、ミリア? それだと私のせいでお友達ができなかったみたいに聞こえるのですけど……」

 ミリアの説明に誤りがあるわけではないが、狙ってなのかフィリスに原因があるかのようにも聞こえる。

 小さな口を少し引きつらせるようにして、フィリスが抗議した。

「あら。それは失礼しました。」

「も、もう……」

「まぁ可愛らしく拗ねてらっしゃるお嬢様はさておき、貴族階級というのは、対等な友人作りという点ではいろいろと難しいのです。」

 頬を膨らませ、小さく口を尖らせるフィリスをチラリと見る。リネットもエリナも少し緊張しつつも微笑ましいものを見るような表情ではある。

「ですので、先ほど一度お話した通り、私たち四人は対等でお互い過度な気遣いはしないという前提の元、少しずつで構いません、友人としてのお付き合いを考えていただけますか?」

 王女としてのあるべき姿であってくれることを願いつつも、一少女としてのささやかな願いを叶えてやりたいという思い。そしてそのために無理を承知で二人に「お願い」をしなければならない申し訳なさ。

 いろいろな感情に複雑な思いが表情に出そうになるのを押し留め、ミリアはエリナの答えを待つ。

「私みたいな田舎の村娘が貴族でいらっしゃる方々と、どんなふうにお付き合いすればいいのか全然見当がつきません。たぶんいろいろとご迷惑をおかけしたり、不快な気分にさせてしまったりすると思います。それでも大丈夫ですか?」

「ええ、何の問題もありません。そういう意味では私はきっと世間知らずですもの。」

 エリナがおずおずと不安を語ると、何故か自身ありげな表情で手を腰に添えてフィリスが可愛らしく胸を張った。

「ぷふっ!」

「ふふふ……」

 今にも「えっへん!」と言い出しそうなフィリスの仕草に、その様子を見ていたリネットは思わず吹き出した。

 釣られるようにミリアも笑みを零す。

「私、おかしなこと言ったかしら……?」

 周囲が吹き出したのを目に、手を腰にやったまま、きょとんとした顔をするフィリス。

 フィリス、ミリア、リネット。笑い合っている三人を見たエリナは、何故だか少しだけ距離が縮んだような、そんな気がした。

 多分フィリスは、自らが貴族階級だというミリアが付き従うくらいなのだから、相応に高貴な身分なのだろうと想像はするけれど、相手がそれを望むのであれば、友人として付き合っていけるのではないだろうか。

「へへっ……私なんだか大丈夫な気がしてきたかも。」

 ランタンの中で揺らめく炎が照らす中、四人は手探りながらも少しずつ、お互いのことについて会話するところから互いの距離を縮めていく。

 時にミリアがフィリスをいじり、リネットがおろおろあたふたと慌て、エリナが明るく話せば、市井の人々の話を聞いたフィリスが目を輝かせる。

 偶然と思いつきで集まった四人は、意外にも噛み合う組み合わせだったのかもしれない。それは楽しそうにしているフィリスを優しく見守るミリアの瞳が雄弁に物語っていた。

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