9.天才と俺 ー前編ー
「高橋勇気、俺と科学作品展に出展する作品を作ってほしい。」
目のまえで立ち止まったやつは、俺の名前を呼んだ。
…どっかでみたとこある顔だけど、、思い出せないなぁ。
「だれだ、お前?よくわかんねぇけど、いいぜ!暇だし」
軽ーい気持ちで俺は返したけど、こいつは目を輝かせてた。
まぁ、きっとこいつの期待にはこたえられないけどな。
俺は出会うみんなから、バカとしか言われてこなかった。自分でもそうだなって思うけど、家族にまで言われたときはちょっと悲しかったな。
高校受験も、小学六年生から必死に勉強して、ボーダーラインぎりぎりだったらしい。
そんな俺に、仕事を任せる人はもちろんいなかったし、一緒に作業しようと言ってくれる人も、もちろんいない。
だから、誘ってもらえて少しだけ嬉しかったのだ。
期待通りの仕事はできないかもだけど、俺なりに一生懸命がんばるぜ!
「なぁ、お前の名前聞いてないぞ、俺。あ、俺の名前は…」
「高橋勇気だ。知っている。俺の名前は亀井義之だ。」
亀井、か…。
「へぇ~、亀井って亀って字だろ?お前、亀なのか?」
「?俺は亀ではないぞ。」
俺の冗談に真剣な顔で返事をした亀井に、俺は心の中で大笑いしていた。
冗談なのか本気で言ってるのかわからないと、いつも冷めた雰囲気になっちゃうから、こんな風にふつーに冗談言えるのは新鮮だ。
「亀井って呼ぶの、なんか固いからさ、亀って呼ぶな!」
「…よくわからないが、いいぞ。」
俺は自然と口のはしとはしが上がっていた。
亀とは、いい友達になれそうだなっ!
亀とはいろいろな話をした。
科学サクヒンテン?は亀にとってすっごい大切らしくて、科学部こもんの田中せんせーは、部活中はずーっと怖い顔してた。亀はあんまり気にしてなさそうだったけど。
亀は俺の話をめっちゃ聞いてくれて、なんか全部褒めてくれるしで、助っ人に入ってから、めちゃめちゃ楽しい。
そんな中で亀が
「一緒に帰らないか?」
と言ってきたときは、すっげぇテンションが上がった!
なんか、めっちゃ友達って感じだ!
「おうっ!!」
俺はもちろんオーケーサインを出した。
せっかくだからと思って、帰り道にあるファミレスに行こうと亀を誘ったら、
「ふぁみれす?」
ってカタコト口調で返事してきた。
ファミレス行ったことないのか?ポテトめっちゃうまいのにっ!!
「やっぱり強制だ!行こう!」
俺は亀の手を引いて、ファミレスに駆け込んだ。
席に着いたら、俺はバッグと上着を脱いで空いてるソファーにごそっと置いた。
亀は緊張してるのかわからないが、ちょっと固いような気がする。
「ポテト、頼もうぜっ!!」
タッチパネルをすらすらーっと操作して、超大盛ポテトを2個注文した。
ここは注文した商品を素早く届けるっていうのを売りにしてるところだから、3分もかからずにお姉さんが
「ご注文の超大盛ポテト2つになりますっ」
とたかーく盛り付けられたポテトをどんどんっと置いていった。
「…高橋、これは多すぎるんじゃないか?」
「そうか?みんなと来るときはいつも…って!今日二人しかいないんじゃんっ!!!」
いつもの感じでぱぱっと注文しちゃったから…、これ全部食べたら絶対夜食べれないよっ!!
俺が頭を抱えて悲鳴を上げてるのをみて、亀は笑い出した。
「かっ、亀も食べるんだぞっ!!俺だけじゃないからなっ!」
「そうか…、時間がかかりそうだなっ…」
ほ、ほんとにちゃんと食べるんだよなっ!?
でも、大笑いしてる亀はおなか抱えながらポテトを10本くらい一気に掴んでいった。
おおっ!!豪快だっ!
俺も負けてられないと、亀の倍は掴んで口にねじ込む。
永遠に笑い続けてる亀とポテトに必死で食らいつく俺の話なのかはわからないけど、
「青春って感じね~」って横の席のおばさんがにこにこしてた。
「うう…、気持ち悪い…。」
一人一皿食べて、俺らはポテトに勝利することが出来た。
長ーい戦いだったため、まわりはもう薄暗くなって目の前の街灯が俺らを照らしていた。
「久しぶりだな、こんなに食べたの。」
亀はポテト食ってた時に大笑いしてから、ずっとにこにこしてる。
まぁ、亀が楽しかったならいっか!
俺が笑い返した瞬間、亀のスマホの着信ミュージックが流れた。英語の歌だ。
「…母さんだ。そろそろ帰るな。」
「送っていこうか?」
「いや、いい。またな。」
亀はすたすたと、暗い道を歩いて行った。
俺は亀の背中を最後まで見て、反対の道を歩いて家に帰った。
キーンコーンカーンコーン。
授業おわりの合図のチャイムが学校中に響く。
「あっ、今ちょっとチャイム遅かったくね?!」
俺は時計を指さして隣を向く。
「どーでもいいわっ」
動きを見落として、隣の席のひろちゃんからのチョップを食らってしまった。
いってぇぇぇ!
俺は頭を押さえてモンゼツする。
「おおっ、当たった!」
「まさひろから食らうなんて、今日調子悪いのか?勇気。」
後ろから、”けんすけ”と”まっちゃん”がやってくる。
宿題に結構てこずってるらしい”たい”は一番後ろの席でぐぬぬと唸っている。
「よっ、よそ見してただけだし…。」
「嘘だぁ、目と目あってましたよ、君と僕」
ひろちゃんが俺をちゃかすと、みんなが笑い始めた。
ぐ、ぐぬぅ、
「あっ、そういえばさ。勇気、天才君と帰ってなかった?」
けんすけが思い出したっ!って顔で指を指してくる。
「…テンサイクン?よくわかんねぇけど、最近一緒に帰ってるのは亀とかな?」
「「「亀…?」」」
3人は口を開けたまんまにして俺をガン見してくる。
こんな感じの面白ショート動画を見たことがあったから、笑いそうになったが、
冷静になって俺は考える。__あっ、あだ名だから、みんな知ってるわけないよな!
「ええっと、亀井よし…まさ?いや、はる、だったかな…?」
「よしゆきだよ!よ・し・ゆ・き!!てか、やっぱり天才君じゃんね?」
まっちゃんが俺にそういうと、みんなでなんかひそひそタイムが始まった。
「なっ、なんだよっ!ひそひそすんなっ!」
俺の悪口とかは、俺のいないところで言ってくれ!いや、言ってたら嫌だけど…。
そしたらみんなは、かわいそうって感じの目で俺を見つめてくる。
「な、なんだよ…。」
「お前さ、パシリとかにされてない?」
「孤高の天才との、感動ストーリーの幕開けかよっ、泣けるっ」
「亀井って裏の権力者なんだって、小島が言ってたぜ。」
けんすけが俺の肩に手を置いて、まっちゃんは泣きまね、ひろちゃんは、真顔だ。
ほんとになんなんだよ…。おれが誰か説明してくれ顔をすると、空気をよむ漢、けんすけが眉毛を下げて話し出した。
「亀井は小さい頃から科学でめっちゃすごい賞とかとってきたエリートで有名だろ。一緒に帰ったとか、ちょーおったまげだわ。」
そ、そんなにすごいやつだったのか、亀!!!
俺はびっくりして、口を大きく開ける。
「なんで勇気がからまれたんだ?」
「実験のための労働力が欲しかったんじゃないか?…それか、…人体実験の?」
「ばっ、松本、怖いこと言うんじゃねぇよ!!」
「なっ、何言ってんだよっ!ふつーに友達だわっ!」
俺はあいてた口を急いで閉じる。
なんだよこいつらっ!亀はいいやつなのにっ!
俺の機嫌悪いぞ顔をみんなに見せつけたけども、みんなの話の熱は冷めそうにはない。
まぁ、たぶんみんなはバカな俺が天才の亀と一緒にいるから、ありえないってなってんだろう。
__でも…俺の話を最後まで聞いたら、こんなこと思えなくなるなっ。
「いいか?俺はなっ…、亀に”助っ人”を頼まれたんだっ!!」
俺が席からばーんと立ち上がって、どーんと胸をはったのを見て、みんなはぽかん、としてる。
ふふふ、驚きすぎてこえもでないってか。
すると、またひそひそタイムがはじまって、
「……ありえるのか、そんなこと。」
「天才君が?学校屈指のおバカ、勇気に?」
「やっぱり、踊らされてるんじゃないのか?」
「__おいっ!聞こえてるぞっ!!」
みんなは、まだ俺のことを疑っているらしいなっ。
しかたないっ、ぷらいばしーのしんがいになるかもしれないけど、亀とのメールを見せるしかないようだ…。
俺がスマホをぽっけから取ろうとごそごそしていると、ひろちゃんが
「でもさ、仮に勇気に助っ人依頼してたとするじゃん。じゃあ、勇気になんのメリット見込んで、天才君が助っ人依頼してんのか、勇気理解してるの?」
「?、どういうことだ?」
仮に!と強く言ったあとに、なんかよくわかんないことを言ってきた。
俺は自分の頭をフル回転させて、意味を考えるが…、そのまえにけんすけがもう一回、ひろちゃんよりはわかりやすく教えてくれた。
「つまり、どうして亀井が、あえて、おバカな勇気に助っ人を頼んで、勇気に何をしてもらいたかったのか、勇気がわかってるのかなってことだよ。まぁ、そのようすじゃ分かってなさそうだけどな。」
「亀が、俺に頼むもの…。」
あれ?そういえば何頼まれてたっけ。つーか、俺亀としゃべってたことしかあんま記憶にないんだよな。雲の実験とかも、俺しゃべるだけでぜーんぶ亀がやってたし。
うーーーむ…。
腕を組んで、じっくりと考える俺を「だいじょうぶかー」「石像だ」とか言ってみんながつついてきた。
~~~!うざったいっ!
「あれ?もうそろそろ購買終わるんじゃね?勇気、パン買ってこなくていいのか?」
けんすけの声で、俺はバッと時計を見た。__今20分で、終わるのが30分…。
「うわっ、やべぇ!!ちょっと買ってくるっ!!」
俺は教室から飛び出て、廊下を全力ダッシュした。
「__はーぁ、科学の作品作るとか、勇気も偉くなったもんだな。」
勇気の姿が見えなくなると、松本は机にもたれかかって息をつく。
「すげぇよな。しかもあの天才君のご指名で!」
廣川は少し興奮ぎみているようすだ。左手でこぶしを作って皆に語り掛ける。
「亀井が勇気のこと誘ったっていうのもびっくりだけど、勇気があんなに熱心になってるのも、俺はびっくりしたかな。ほら、中学の時にクラス対抗美術大会みたいなやつでさ、アイツ、やる気なさすぎて役の立候補の時間に爆睡して、後片付け係になって俺らに泣きついてきたじゃんよ。」
けんすけは2人に語ったが、誰も賛同はしない。
「あっ、そうだよな。お前ら高校からだったな、めっちゃ忘れてた。_そうだよなっ!たいっ!」
後ろに振り返ったけんすけは、絶賛補習中のたいきに話しかける。
「えっ?なに?よくきこえねー!」
そこまで離れているわけでもないが、彼は耳に手を当てている。
けんすけは顔をむっとさせて、「なんでもねーよっ!」と先ほどより大きな声で返した。
はぁ、と正面に顔を戻すけんすけ。
三人で囲んだ一つの机には、ノートの切れ端が置いてある。なにやら字が書いてあるようだが、相当汚いため解読はほぼ不可能であろう。
その切れ端を見て、顔を合わせた三人は、ほぼ同時にブッとふきだして
「まあでも、勇気、楽しそうだったな。」
「亀井も天才ってだけで、悪いやつではなさそうだしな。」
「ほら、よく言うじゃん。””バカと天才は紙一重””って。案外、勇気って天才思考なのかもしれないぞ!」
三人は笑いあいながら、談笑を続ける。最初の彼らの心配事は、もうきれいさっぱりなくなったようだ。
「勇気がすっごい賞もらってきたらどぉするよっ!?」
「僕たちが彼を育てましたっ!って言ってみる?」
「バレるバレるっ!」
彼らの大きな笑い声は、教室の外まで響き渡っていた。
横田けんすけ→けんすけ 廣川まさひろ→ひろちゃん 松本ゆうしん→まっちゃん
大川たいき→たい
どれも高橋くんがつけてます。ひろちゃんとまっちゃんすっごくわかりにくいですけど。
けんすけくんとたいくんは中学校から一緒でした。一番高橋くんと仲が良いのは、けんすけくんです。




