3.六月下旬
「すげぇすげぇ!ほんとに甘いぜ!!」
先に部室に駆け込んでいったという亀井たちを追いかけるように、俺が部室のドアを開けると、高橋がぴょんぴょんと跳ね上がっていた。
「やったな。昨日の高橋のアイデアを試してみてよかった。」
「これで作品展に出せるな!」
「いや、まだ原理がよくわからないからな。比較実験も重ねたい。」
「ヒカク…、でも、今の実験は大成功だろ!?!?」
「ああ、そうだな。」
___マジでか。
「亀井さん!?!?成功したのかい!?」
「?何がですか?」
「だから、雨を飴に変えるって…」
「ああ…、固形物ではなく液体でしたが。いろいろな甘味料を入れてしまったので、どれでそうなったかはわかりませんが。」
「…その甘味料を教えてほしい。」
本当に成功するとは。きっとこれは世界の異常気象などを解明できるピースになりえるに違いない。
要するに、歴史的発見ってことだ。これを俺が発見したってことにしたら、きっと生涯分の名誉を得られるだろう。
__研究者を挫折してもなお、教師として頑張ってきたんだ。少しくらい、俺にスポットライトを当ててくれたっていいじゃないか。どうせ、亀井は小さい頃からいい思いをしているんだろう。
亀井はすっと目を細めて俺を見る。
「あー、ごめんな?田中せんせー。甘いやつさ、名前チョー長くて、しかも袋家に置いてきちまったから。亀も覚えてらんないよな?」
「ああ…。すみません田中先生。」
高橋の話にのっかるように、亀井は俺の話をかわした。
「そうか…」俺の嘆きに「ごめんなー」と高橋は素朴にあやまり、亀井はなにか考え込むようにしていた。




