2.五月中旬
「まずは、何を作るのか、決めたい。」
「作品展って、どんなの作るやつなんだ?」
青空がよく見える部室に、二人は集まって話し合いをしている。
前々から案が決まっているかと思ったが、未定らしいな。
部室に生徒だけが出入りするのはダメなので、俺も仕方なく同席している。
「前に作ったやつだと、懐中電灯型マイクロ波発振器とか、従来品よりも長持ちするカイロとかだな。」
「そんなの作ってどうすんだ?」
「最先端の科学を生み出したり、それを活用するのは楽しいし、喜びがある。」
「まぁ、楽しけりゃ全部よし!だもんな。」
前に作ったもののレベルが高いな。どうやって作るのだろうか。
「では、どんなものを作りたいと思うか?」
「おいしいものって作れねーかな。」
「美味しいもの?科学をつかって食べ物を作ろうってことか?」
「わかんねーけど、どうせならおいしいほうがいいだろ?」
「……いいアイデアだな。流石だ。」
ふふんと鼻をならす高橋に、俺は呆れていた。
食べ物…?安直がすぎる。もう少し真面目に考えてもらいたいものだ。
「例えば、どんな美味しいものがいい?」
「ん~、科学っぽくだろ?じゃあさ、雲から雨じゃなくて、あまーい飴が降ってくるやつとかいいんじゃね?」
まったく、バカ丸出しだな。理論上、雲が水や塵など以外を含むケースはほぼない。
飴を降らせる?やはりこういうものはちゃんと理科を学ばないとだな。
けれど、亀井は目を輝かせて
「素晴らしい考えだと思うぞ!それを作ってみよう!」
「おう!頑張ろうぜ!」
…う、嘘だろう。
「雲はこうやって作れる。」
「すげー!!」
1週間が経ち、テーマを絞り込んだ亀井たちは早速実験に取り掛かっている。
「じゃあ、ここに砂糖入れたら、砂糖が雲になるんかな。」
「…どうだろう。やってみるか」
亀井たちは、沸騰した水にためらいなく砂糖を入れる。
すると、お湯が急に暴れだしてビーカーから噴きあがった。
「あっつ!!!」
噴きあがった熱湯は、俺の足に直撃した。
「沸騰した水に砂糖を入れるとこうなるんだな。初歩的なものだが、初めてやってみたぞ。」
「すっげぇ!メントスコーラみたいだな!」
「…ちゃんと片づけて下さいネ。」
のんきに眺めている亀井たちに、俺は濡れた足元をタオルで拭きながら呟いた。
「じゃあ、俺たちは帰ります。」
「じゃあな~、田中せんせー。」
…ふう、やっと一息つけるな。
亀井たちは実験の後処理の後、最近はすぐに帰宅する。
俺が窓から外を見ると、ちょうど亀井たちが校門前を通っているところだった。
そろそろしっかりとしないと、作品展にも出せないのに、亀井はなにを考えているのだろうか。
高橋アイツと一緒に続けることは時間の無駄になると、気づかないのだろうか。
…まぁ、どうでもいいか。俺の評価がどうこうなることでもないしな。
高橋と談笑しながら帰る亀井を横目で見送り、俺は部室の電気を消した。




