貧困領地の防衛
気がつくと、なぜか家にいた。
「おお!目を覚ましたか!すまなかった。」
いきなり何のことだと思ったが父から謝られた
「ゲホッ!ゲホッ」
声を出そうとしたが、声が出なかった。
「無理をするな、ほら、水だ」
水を飲むと喉が潤い、声が出るようになった
「私は隣の村で、グランという者に敗れたはず
それがなぜ家に?」
ちょっとカスカスした声で聞いた。
「そう、グランのやつが暴れ回ってな」
「グランをご存知なのですか?」
父は頷き話を続ける
「知っているとも、ビクトルが倒れた後のことを
話そう。」
父の話では、グランが暴れ回って、被害が大きく
なった為、皆撤退して来たとの事。
そして隣の村では自警団の中にも、グランに
付くものが一定数おり、隣の村の一揆は成功
隣の村はグランが統治する事になった。
グランは数ヶ月前に現れたとされているが
実は王国中心部からやって来た腕利きの
軍人崩れで、その戦闘力は高い。
王国西部の端の端に位置するこの地域を
実効支配し、王国中央へ革命を起こそうと
しているのでは?と噂されているようだ
「というわけで、そんな過酷な戦に
あんなに簡単に出してしまい申し訳なかった」
父が頭を下げる
「いえ、グランは強かったですが、私もやはり
まだまだ未熟でした。これからも鍛錬を
積もうと思います。」
これからグランがこちらの領地に踏み出してこない
とも限らない。できる事はしようと思うが
あの強さを体現できる人間を俺は知らない。
あの一瞬の中で見た動きを基に鍛錬を
積むしかない。
それからすぐにいつものルーティンを
こなすようになった。午前は畑、午後は自警団
夜は魔法。
しかしこのルーティンに新たな事柄が追加となる
それは領地の防衛だ
隣の村からいつグラン達が攻めてくるかわからない
村の会議で柵や塀の建造を急ぐように指示が出た。
これが午前の終わりの時間帯と午後の始まりの
時間帯に追加された。
この作業がまたきついのだ、いかにいつも
訓練しているからと言っても、重量物を
持つ事がさほどない為、数日は筋肉痛に
悩まされた。
領民総出で作業し、一ヶ月ほどで村を囲むくらいの
柵と塀が出来た。
「ようやく完成したな、まだまだ拙いものだが
皆で頑張った結果だな」
父が完成した塀を見て、皆を労う。
「これからは見張りが必要となりますね」
俺がそう返すと
「そうだな、昼夜問わずの監視体制が必要だ
もう少しシステマチックにして
警備者を据えよう。」
父は既に考えがあるように答える。
きっと既に色々と頭の中では構築しているのだろう
こうして俺のルーティンがまた変更となった。
当番制で監視を実施することになり
俺は週に一回夕方の時間に見張りを
実施することになった。