ep 14
ラッキー・ストライカーズ、閃光と轟音、そして勝利の咆哮
ボルガンの魔砲「轟鉄 Mk-II」が再び火を噴くまで、時間を稼がなければならない。アレンは、レミーラの植物魔法によってわずかに動きを封じられたガルムに、休む間もなく連続で斬りかかりながら、脳内で瞬時に戦術を組み立てた。
(僕の剣技だけでは、このガルムに決定的なダメージを与えるのは難しい……火力が足りない。でも、ボルガンの『轟鉄』が準備できるまでの時間を稼ぐこと、そして確実に仕留められる状況を作り出すことなら、今の僕にだってできるはずだ!)
アレンは、鋭い呼気と共に闘気を練り上げ、その青年のものとは思えぬほどの闘志を瞳に宿した。ガルムが、絡みつく蔦を力任せに引きちぎり、再びアレンに襲いかかろうと牙を剥いた瞬間、アレンは低い姿勢から、まるでバネが弾けるかのように踏み込み、左腕に装備したラウンドシールドを、ガルムの大きく開かれた顎の真下から強烈に打ち上げた!
ゴッ!という鈍い衝撃音と共に、ガルムの巨体がわずかにのけぞり、一瞬だけその動きが完全に止まる。怯んだのだ!
「よし! でやあああああっ!」
アレンは、その千載一遇の好機を逃さず、右手の片手剣に闘気を集中させ、鋭い閃光と共にガルムの右前足の腱と思しき箇所を、力任せに、しかし正確に斬り裂いた!
「ギャウウウウウンンン!!」
ガルムは、これまでにないほどの甲高い苦痛の悲鳴を上げ、斬り裂かれた前足を押さえるようにして激しくもがき苦しむ。その俊敏だったスピードは、これで格段に下がったはずだ。
「アレン君、お見事ですの! わ、わたしも……!」
アレンの勇猛果敢な戦いぶりに勇気づけられたレミーラは、恐怖を振り払うように、その手に握る白樺の杖に自身の魔力を懸命に高めていく。杖の先端に埋め込まれた小さな魔法石が、パチパチと音を立てて青白い光を放ち始める。
「聖なる雷よ、邪悪を打ち据えよ! サンダーシュートォォォ!!」
レミーラの可愛らしい、しかし芯の通った声と共に、杖の先から眩い電撃の矢が数本同時に放たれ、足を引きずりながらもがき苦しむガルムの巨体に次々と命中する!
「ギィィィン! ギャン! ギャウッ!」
電撃がガルムの体表を駆け巡り、その黒い毛皮を焦がし、筋肉を痙攣させる。ガルムは、さらなる苦痛に身をよじり、もはやまともに動くこともままならないようだ。
「よし、いいぞ、レミーラ! その調子だ!」アレンが叫ぶ。
その時、後方からボルガンの、興奮と期待に満ちた声が響き渡った。
「エネルギーチャージ、最終段階突入! 発射まで、カウント開始! じゅぅ……きゅう……はち……」
(ボルガンのカウントダウンが始まった! それまでに、もう一体のガルムも、できるだけ射線上に……!)
「よっしゃあっ! こっちの犬っころは、アタイが遊んでやるぜ! おいで、おいでー!」
アレンの意図を瞬時に察したコハクは、それまで彼女が相手をしていた、まだ比較的元気なもう一体のガルムに向かって、わざと大きな声で挑発し始めた。そして、その虎のような俊敏さでガルムの攻撃をひらりひらりとかわしながら、巧みにボルガンの魔砲の射線上に誘導していく。
「な、なかなかすばしっこい奴だな! だが、アタイから逃げられると思うなよ!」コハクは、ガルムの背後に回り込むと、ニヤリと笑った。「じゃあな、アバよ!」
そして、彼女は地面を力強く蹴り上げ、大量の土と枯れ葉を、まるで煙幕のようにガルムの顔面めがけて浴びせかけた!
「グフッ!? ガウッ、ガウウウ!」
突然の目潰しに、ガルムは視界を奪われ、苦しそうに顔を振りながら混乱している。
「ボルガン、今だ! 二体まとめて、吹き飛ばせ!」アレンが絶好のタイミングで叫ぶ。
レミーラも、最後の力を振り絞り、足止めしていたガルムに、もう一発「サンダーシュート」を叩き込んだ!
「カウント、さぁん……にぃ……いちぃ……よっしゃあああ! 待ちに待ったぜ、この瞬間を! オイラの鍛冶魂とロマンの全てを込めた、一撃必殺砲! 発射ああああああああっ!!」
ボルガンの魂の叫びと共に、「轟鉄 Mk-II」の砲口から、これまでとは比較にならないほど巨大で、そして眩いばかりの、全てを焼き尽くさんばかりの魔力の奔流が、凄まじい轟音と衝撃波を伴って射出された!
その極太の光線は、コハクによって巧みに誘導され、そしてレミーラとアレンによって動きを封じられていた二体のガルムの巨体を、寸分の狂いもなく、同時に、そして完全に飲み込んだ。
ズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンンン!!!!!!!!
天変地異を思わせるほどの、耳をつんざく大爆発。衝撃で大地が激しく揺れ、周囲の木々は根こそぎなぎ倒され、巨大な土煙が天高く舞い上がる。爆心地には、もはやガルムたちの姿はなく、ただ焼け焦げた大地と、地面に深くえぐられた巨大なクレーターだけが残されていた。
二体の凶悪なガルムは、ボルガンの「一撃必殺砲」によって、文字通り、跡形もなく爆殺されたのだ。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………やった……のか……?」
しばらくの間、四人はそのあまりにも圧倒的な破壊の跡を、ただ呆然と見つめていた。やがて、立ち込めていた土煙がゆっくりと晴れていくと、そこにはガルムの姿は影も形もなく、ただ地面にいくつかの焼け焦げた牙や爪が転がっているだけだった。
「や、やった……! やったぜぇぇぇぇぇ! 見たか、これぞオイラの『轟鉄 Mk-II』の真の力じゃあ!」ボルガンは、魔砲の熱くなった砲身を誇らしげに撫でながら、歓喜の雄叫びを上げた。
「すっげー! ボルガン、お前のあの筒っぽ、マジで最強じゃん!」コハクも、目をキラキラと輝かせ、ボルガンの肩をバンバン叩いている。
「ふ、二人とも、お、お見事でしたわ……! わ、わたしも、少しはお役に立てたでしょうか……?」レミーラは、まだ少し腰が抜けたようにへたり込みながらも、安堵の表情を浮かべていた。
アレンは、その光景に苦笑いを浮かべながらも、心の底から込み上げてくる達成感と、仲間たちへの感謝の気持ちで胸がいっぱいだった。(確かに、素材はほとんど残らなかったけど……でも、このパーティーなら、きっとどんな困難も乗り越えていけるかもしれないな)
「ラッキー・ストライカー」の初陣は、予想を遥かに超える波乱と、そして想像を絶するほどの破壊力をもって、見事に(?)勝利で幕を閉じたのだった。
彼らの冒険者としての物語は、まさに今、大きな爆発音と共に、その輝かしい第一歩を踏み出したのだ。




