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異世界転生×ユニークスキル 武器使い ありとあらゆる武器を使いこなして無双する!?  作者: 月神世一
第二章 新たな若鷲

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ep 9

ラッキー・ストライカーズ、波乱の宿探しとブロンズ亭の夜

アルクス冒険者ギルドでの、前代未聞の初陣報告と報酬受け取りを終えたアレンたち「ラッキー・ストライカー」の四人は、夕暮れの喧騒に包まれ始めたアルクスの街へと再び繰り出した。レッドオーガの素材という思わぬ臨時収入で、アレンの革袋はずっしりと重くなっている。

「さて、これからどうするかな……。ひとまず、今夜泊まる宿を探さないと」アレンは、額の汗を拭いながら仲間たちに提案した。

「そうだな。いつまでも父さんたちの家に世話になるわけにもいかないし、これからは自分たちで拠点を確保しないと」アレンは、英雄の息子という立場に甘えず、自立した冒険者としての道を歩むことを改めて心に誓っていた。

そのアレンの真面目な言葉に、真っ先に反応したのはコハクだった。彼女は目をキラキラと輝かせ、アレンの腕に飛びつくようにして言った。

「宿!? やったー! ねぇアレン、どうせならさー、今日の報酬でパーッと騒ごうぜ! 美味しいご飯がたくさんあって、ふかふかのベッドがある、ちょー豪華な宿がいいな!」彼女の虎耳と尻尾が、期待に満ちて大きく揺れている。

「フン、騒ぐのも悪くはないが、オイラはこの貴重な資金を『轟鉄 Mk-II』のさらなる改良費用に充てるつもりだ! もっと強力な魔力圧縮チャンバーと、反動軽減スタビライザーを組み込めば、次こそ完璧な『フルバースト・ロマンキャノン』をお見舞いできるはずじゃ!」ボルガンは、ぶつぶつと専門用語を呟きながら、既に頭の中は魔砲のことでいっぱいのようだ。

そんな騒がしい二人をよそに、レミーラは少し離れた場所で、先ほど市場の露店で買ったらしい、串に刺さった色とりどりの甘そうなお菓子(フルーツ飴だろうか)を、小さな口で幸せそうに頬張っていた。

「ん~! このお菓子、とっても美味しいです~! 木の実の酸味と、蜜の甘さが絶妙ですわ~」彼女は、周囲の喧騒など全く気にしていないかのように、マイペースに味覚の探求を楽しんでいる。

そのレミーラの言葉と、甘い香りに、コハクとボルガンの注意が一斉に彼女へと向いた。

「何ぃ!? レミーラ、そんな美味そうなもん、いつの間にゲットしてたんだよ! アタイにも一口くれ!」コハクが、獣のような素早さでレミーラのお菓子に手を伸ばす。

「むむっ! その色鮮やかな物体は、もしや『轟鉄』の新型魔力弾の素材になるような、特殊な鉱石か何かか!? よこせ、エルフの小娘!」ボルガンもまた、見当違いな期待を込めて、レミーラのお菓子に詰め寄った。

「ひゃっ!? こ、これはただのお菓子ですぅ~! ダメです、これはレミーラの分ですから~!」レミーラは、二人からの強奪を必死に避けようと、お菓子を抱きしめて後ずさる。

「うわあああああっ! なんなんだよ、もうこのパーティーはーっ!」

アレンは、そんな自由奔放すぎる仲間たちの姿に、思わず天を仰いで頭を抱えた。真面目に今後のことを相談しようと思っていたのに、これでは話が全く進まない。彼の胃は、早くもキリキリと痛み始めているような気がした。

結局、アレンは半ば泣きそうになりながらも、なんとか三人をなだめすかし、アルクスの街で手頃な宿を探し始めた。コハクとボルガンが主張するような高級宿は予算的に厳しいし、レミーラは「清潔なお部屋で、静かに本が読める場所ならどこでも……」と控えめに言う。

いくつかの宿を回り、ようやくアレンたちの目に留まったのは、「ブロンズ亭」という名の、少し古びてはいるが、どこか温かみのある木造二階建ての宿屋だった。大通りから一本入った路地にあり、派手さはないが、冒険者たちがよく利用するという噂も耳にする。

「ここなら、値段も手頃そうだし、落ち着けそうだな……」アレンは、三人に同意を求め、恐る恐るその扉を開けた。

カラン、と軽やかなベルの音が鳴り、中から「はい、いらっしゃいませー!」という、少しハスキーだが元気の良い女性の声が聞こえてきた。カウンターの奥から現れたのは、年の頃は三十代半ばくらいだろうか、赤いバンダナで髪をまとめ、テキパキと仕事をこなしていそうな、気の強そうな、しかしどこか面倒見の良さそうな笑顔が魅力的な女性だった。彼女が、この「ブロンズ亭」の女将、プチラらしい。

「おや、若い冒険者さんたちだねぇ。四人かい? 今夜は空いてるよ。うちは安いけど、飯は美味いし、ベッドもそこそこ綺麗にしとるつもりさ」プチラは、アレンたちの身なりと、その若さを見て、手慣れた様子で声をかけてきた。

「あ、はい。四人なんですけど、今夜泊まれますか?」アレンが代表して尋ねる。

「もちろんだよ。ちょうど大きな部屋が一つ空いてる。少し手狭かもしれんが、あんたたちみたいな若い衆なら、雑魚寝でも文句は言うまい?」プチラは、悪戯っぽく片目をつぶって笑った。

コハクとボルガンは、部屋の広さよりも食事の美味しさの方に興味があるようで、「飯が美味いってのは本当か!?」「どんな肉料理が出るんじゃ!?」と、早速プチラに詰め寄っている。レミーラは、そんな二人の後ろで少しオロオロしていた。

アレンは、そんな仲間たちの様子に再びため息をつきそうになったが、プチラの飾らない、しかしどこか懐の深そうな人柄に、ここなら何とかやっていけそうだと感じた。

結局、アレンたちは「ブロンズ亭」に宿を取ることに決めた。案内された部屋は、プチラの言う通り、四人で使うには少し手狭ではあったが、掃除は行き届いており、窓からはアルクスの街の夜景がささやかに望めた。

夕食は、プチラ自慢の、大鍋で煮込んだ肉と野菜のシチューと、焼きたての黒パンだった。コハクとボルガンは、その素朴ながらも奥深い味わいに目を輝かせ、何度もおかわりを要求し、レミーラも普段よりたくさん食べていた。アレンも、久しぶりに心から美味しいと感じる食事に、少しだけ今日の疲れが癒えるのを感じた。

食事を終え、それぞれのベッド(と言っても、床に敷かれた硬めのマットだが)に潜り込むと、四人はまるで泥のように深い眠りに落ちていった。初陣の興奮と疲労、ギルドでの報告、そして個性豊かな仲間たちとの騒がしいやり取り……。アレンにとっては、あまりにも目まぐるしく、そして刺激的な一日だった。

(本当に……このパーティーで、これからやっていけるんだろうか……)

アレンは、隣で豪快な寝息をかいているコハクと、そのまた隣で「むにゃむにゃ……轟鉄……フルバースト……」と寝言を言っているボルガン、そして反対側で小さな寝息を立てているレミーラの姿を薄暗い部屋の中でぼんやりと眺めながら、そんな一抹の不安を抱きつつも、不思議と胸の奥には、これから始まるであろう波乱万丈な冒険への、確かな期待感が込み上げてくるのを感じていた。

「ラッキー・ストライカー」の、アルクスでの共同生活と、本当の意味での冒険は、まさにこの「ブロンズ亭」の一室から、静かに、しかし確実に始まろうとしていた。

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