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異世界転生×ユニークスキル 武器使い ありとあらゆる武器を使いこなして無双する!?  作者: 月神世一
第二章 新たな若鷲

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ep 1

新章:アルクスの若鷲、運命のランダムボックス

アルクスの丘の上に建つリュウとセーラの家には、今日もまた、剣戟の音と、時折混じる魔法の詠唱、そして父の厳しくも愛情深い声が響いていた。伝説のS級冒険者、元ウェポンズマスターであるリュウと、聖女としてその名を馳せたセーラ。その間に生まれた長男アレンは、今年で13歳になる。

幼い頃から、暖炉の前で語られる両親の英雄譚は、アレンにとって何よりも心躍る物語だった。邪悪な魔物を打ち破り、絶望の淵にあった人々を救い、そして世界に光を取り戻した父と母。その輝かしい姿は、アレンの胸に深く刻まれ、いつしか彼もまた、両親のような強く、そして優しい冒険者になることを、何よりも強く願うようになっていた。

リュウは、息子アレンのその真っ直ぐな憧れを受け止め、日々の畑仕事の合間を縫っては、彼に剣術の基礎と体捌きを叩き込んだ。それは、かつて自身が振るった千変万化の武器のほんの一部ではあったが、全ての戦いの基本となる、揺るぎない土台を築くためのものだった。セーラもまた、アレンの中に眠る聖なる魔力の才能を見抜き、回復魔法や補助魔法の基礎、そして何よりも他者を思いやる慈愛の心を、その優しい言葉と共に教え諭した。

そして今日、アレンは長年通ったアルクスの街の学舎の基礎課程を、優秀な成績で修了した。それは、彼にとって冒険者としての道を歩み始めるための、最初の関門を突破したことを意味していた。そして、その新たな門出を祝うかのように、アルクスの大教会で、彼自身の未来を左右するかもしれない重要な儀式、「神託の儀」が執り行われることになっていたのだ。

「アレン、準備はいいかい? あまり気負うことはない。お前はお前らしく、神託を受ければいいんだ」

大教会へと向かう道すがら、少し緊張した面持ちのアレンの肩を、父リュウが大きな手で優しく叩いた。30代後半となったリュウは、かつての鋭さはそのままに、より深い落ち着きと、父親としての温かみをその佇まいに漂わせている。

「はい、父さん。でも……少しだけ、ドキドキします」アレンは、正直な気持ちを打ち明けた。

隣を歩く母セーラもまた、30代後半とは思えぬほどの若々しさと、聖女と呼ばれた頃と変わらぬ慈愛に満ちた微笑みを浮かべ、アレンの手をそっと握った。

「大丈夫ですよ、アレン。どんなスキルを授かったとしても、それはきっと、今のあなたに必要な力ですわ。わたくしたちは、いつもあなたの味方ですからね」

アルクスの大教会は、街の中心に聳え立つ、白亜の美しい建造物だった。その荘厳な雰囲気は、いつ訪れてもアレンの心を清め、そしてどこか引き締める。教会の内部は、高い天井から差し込むステンドグラスの光が床に美しい模様を描き出し、厳粛な祈りの空気に満ちていた。

祭壇の前には、アルクスで最も高位の神官である老齢の司教が、金糸で刺繍された純白の祭服を身にまとい、静かにアレンを待っていた。周囲には、他の神官たちや、アレンの門出を祝うために集まった街の人々、そしてギルドマスターのバルガスも、どこか感慨深げな表情で見守っている。

アレンは、リュウとセーラに小さく頷くと、一人で祭壇の前へと進み出て、司教の前に深く頭を下げた。

「アレン・ウェルナーよ。よくぞ参られた。これより、汝に神託を授ける儀を執り行う。心静かに、女神の声に耳を澄ますのだ」

司教の厳かで、しかしどこか温かい声が、静寂な聖堂に響き渡る。

アレンは、言われた通りに目を閉じ、胸の前で手を組んで、深く、そして静かに祈りを捧げ始めた。両親への感謝、仲間たちへの想い、そしてこれから歩むであろう冒険者としての道への、期待と、ほんの少しの不安。様々な想いが彼の胸をよぎる。

やがて、祭壇の奥から、まばゆいばかりの、そしてどこまでも清らかで温かい光が溢れ出し、アレンの全身を優しく包み込んだ。まるで、女神そのものが彼を抱擁しているかのような、心地よい感覚。

そして、アレンの脳裏に、直接、しかしどこか遠い場所から語りかけるような、不思議な声が響いた。

《汝、アレン・ウェルナーに、ユニークスキルを授けん……》

《その名は……ランダムボックス……》

《汝の運命力に応じ、異界の物品、あるいは現象を、一日に三度まで限定的に召喚するであろう……》

《その力、善きに用い、世界の調和に貢献することを願う……》

光がゆっくりと収まっていくと同時に、アレンの目の前に、半透明のステータスウィンドウが浮かび上がり、そこに新たなスキルが刻まれているのが見えた。

【ユニークスキル:ランダムボックス】

【効果:使用者の運命力に応じ、異界の物品または現象を限定的に召喚する】

【使用制限:1日3回まで】

「ランダムボックス……? 異界の物品……?」アレンは、そのあまりにも奇妙で、そして曖昧なスキル名と効果説明に、思わず首を傾げた。これが、自分のスキルなのだろうか。

司教も、神託の内容を読み上げた後、わずかに眉をひそめ、隣に立つ神官たちと小声で何かを囁き合っている。彼らにとっても、このような前例のない、そして効果の判然としないスキルは初めてだったのだろう。見守っていた街の人々の間からも、困惑と、そして好奇のざわめきが広がり始めた。

セーラは、アレンのその戸惑いを察し、優しく微笑みかけた。「アレン、素晴らしいスキルを授かりましたね。きっと、あなたにしか使えない、特別な力ですわ」その言葉には、息子を信じる母の、揺るぎない愛情が込められていた。

しかし、リュウだけは、そのスキルの説明の中にあった「異界の物品」という言葉に、内心で激しい衝撃と、そして拭いきれない動揺を感じていた。(異界の……物品……? まさか、そんなことが……。いや、俺自身がこの世界の人間ではないのだ。ありえない話ではないのかもしれないが……)彼は、表面上は平静を装いながらも、アレンのそのユニークすぎるスキルが、自分の過去と、そしてこの世界の運命と、何らかの形で深く関わってくるのではないかという、漠然とした、しかし確かな予感を覚えていた。

「アレン、そのスキル、早速ここで試してみるかい? どんなものが出るのか、父さんも興味がある」リュウは、努めて明るい声で、しかしその瞳の奥には複雑な感情を隠しながら、息子に促した。

「は、はい、父さん!」アレンは、まだ戸惑いを隠せないながらも、新しい力を試してみたいという好奇心に背中を押され、右手を前に突き出し、スキル発動を強く意識した。「いでよ! ランダムボックス!」

アレンの掛け声と共に、彼の掌の上に、ふわりと淡い光が集まり始め、やがてそれは小さな、手のひらサイズの、しかしどこか不思議な輝きを放つ箱のような形を成した。そして、パカッという軽い音と共に、その箱の蓋が開き、中から現れたのは……。

黄色く、丸みを帯びた、プラスチック製の、小さなアヒルの玩具だった。プカプカと水に浮かび、押すと可愛らしい音を出す、あれだ。

聖堂内は、一瞬、水を打ったように静まり返り、そして次の瞬間、抑えきれない小さな失笑や、あからさまな困惑の声が、あちこちから漏れ聞こえ始めた。神官たちは顔を見合わせ、司教は額に手を当てて天を仰ぎ、セーラはそれでもなお、優しい笑顔を崩さずにアレンを見守っている。

アレン自身は、顔を真っ赤にして、今にも泣き出しそうな表情で、その小さなアヒルの玩具を見つめていた。「こ、こんなものが……俺の、スキル……?」

しかし、リュウだけは、その小さなアヒルの玩具の底面に、微かに、しかしはっきりと刻まれている「MADE IN CHINA」という、彼にとってはあまりにも懐かしく、そして衝撃的な文字列を、誰にも気づかれることなく見つめ、内心で激しい冷や汗をかいていた。(ま、間違いない……これは、俺のいた世界の……地球のものだ……! アレンのスキルは、本当に……!)

「は、はは……。アレン、なかなか面白いものが出たじゃないか。どんなスキルも、使い方次第だ。きっと、このアヒルにも、何か特別な使い道があるのかもしれないぞ」リュウは、必死に平静を装い、引きつる顔の筋肉を何とか笑顔の形に保ちながら、息子を励ました。

アレンは、父のその言葉に少しだけ救われたような表情を浮かべ、気を取り直してもう一度スキルを発動させた。「今度こそ……何かすごいのを……!」

二度目に出てきたのは、くしゃくしゃに丸められた、どこかの新聞紙の切れ端だった。広げてみると、そこにはアレンやセーラには全く読めない、しかしリュウにとっては見慣れた、日本語の文字列が印刷されていた。

三度目。最後に出てきたのは、小さな、銀色に光る、平たい円盤状の物体。セーラが「まあ、綺麗な銀貨かしら?」と期待の声を上げたが、リュウはそれが「ボタン電池(おそらくは切れている)」であることを、一目で理解した。

「……」アレンは、もはや言葉もなく、その場にがっくりと項垂れた。

「ユニークスキル:ランダムボックス」。それは、アレンの冒険者としての輝かしい未来を約束するどころか、むしろ波乱と、そしておそらくは多くの胃痛に満ちた、予測不可能な道のりの始まりを告げる、あまりにも奇妙で、そしてユニークすぎる力だった。

リュウとセーラは、顔を見合わせ、どちらからともなく苦笑いを浮かべた。この規格外のスキルを持つ息子を、これからどう導き、そして育てていくべきか。二人の新たな、そしておそらくはこれまでのどの冒険よりも難しい「子育て」という名の冒険が、今、まさに始まろうとしていた。そしてリュウは、アレンのこのスキルが、いつか自分の封印してきた過去と、そしてこの世界の根幹に関わる、大きな秘密の扉を開いてしまうのではないかという、言い知れぬ予感を胸に抱くのだった。

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