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異世界転生×ユニークスキル 武器使い ありとあらゆる武器を使いこなして無双する!?  作者: 月神世一
武器使いの勇者

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33/64

ep 33

終焉のロックレイン、そして双つの星の誓い

「セーラァァァァァァッ!」

リュウは、もはや声にならない絶叫を上げながら、必死に立ち上がろうともがいた。しかし、先ほどのドラゴンの尾の一撃で全身に深く刻まれた痺れと激痛が、まるで鋼鉄の鎖のように彼の自由を奪い、灼熱の火山灰が舞う地面に無様に縫い付けていた。焦りと、そして何よりもセーラを失うかもしれないという絶望的な恐怖が、彼の胸を内側から激しく締め付ける。かけがえのない、大切な仲間が、今まさにあの凶暴なエンシェント・ドラゴンの巨大な鉤爪に引き裂かれようとしているのだ。

セーラは、最後の力を振り絞って放った渾身の雷撃も、ドラゴンの強靭な肉体を完全に止めるには至らず、怒り狂ったドラゴンの猛攻に、徐々に、そして確実に追い詰められていく。彼女の掲げる純白の聖杖から放たれる小さな光の矢は、ドラゴンの鋼鉄よりも硬い赤黒い鱗に、まるで雨粒が岩を打つかのように虚しく阻まれ、決定的なダメージを与えることができない。

「グオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」

ドラゴンの、勝利を確信したかのような残忍な咆哮が、灼熱の火口全体に響き渡る。それは、抵抗する術を持たぬ哀れな獲物を捕らえた喜びと、これから訪れるであろう容赦ない死の宣告だった。巨大な、山のような影が、絶望的なまでにセーラの華奢な体を完全に覆いかぶさる。

「セーラァァァァァァァッ!」

リュウは、焦りと絶望で、もはや心が張り裂けそうだった。ウェポンズマスターとしての、あの変幻自在の力も、今はただ痺れて動かないこの肉体では、何一つ発揮することができない。ただ、ただ、己の無力さを呪い、この非情な現実を呆然と見つめることしかできなかった。

その、まさに絶望の淵に立たされた瞬間だった。セーラの様子が、いつもとは、いや、これまでのどの瞬間とも、明らかに違っていた。

これまで彼女の美しい顔に浮かんでいた不安や恐怖の色は、まるで朝霧が晴れるかのように綺麗に消え失せ、その表情は信じられないほどに冷静沈着、そしてどこか神々しいまでの静謐さを湛えていた。そのアクアマリンの瞳には、強い、強い光が宿っている。それは、彼女の魂の奥底にずっと秘められていた、決して屈することのない強い意志と、リュウへの深い愛情が、この極限状態においてついに表面に現れ出でたかのような、凛とした、そしてあまりにも美しい輝きだった。

「グオオオオオオオオオッ!」

ドラゴンが、その巨大な顎を大きく開き、セーラに最後の一撃を食らわせようと、再びその凶暴な勢いで襲いかかる。鋭く尖った巨大な鉤爪が、まるで死神の鎌のように、彼女の細く白い体を捉えようと迫る。しかし、セーラは、まるで風に舞う蝶のように、あるいは水面を滑る妖精のように、その致命的な攻撃を、信じられないほど軽やかかつ最小限の動きでひらりとかわした。その動きは、これまでの彼女からは到底想像もできないほどに素早く、そして洗練され、まるで熟練の戦乙女のようだった。

そして、彼女は静かに天を仰いだ。赤黒く燃え盛る火口の天井、その遥か上空の、火山灰と黒煙の隙間から僅かに覗く、遠い、遠い青空の欠片を見据え、静かに、しかしその場にいる全ての者の魂を震わせるかのように、力強く、そして厳かに言葉を放った。

「天よ、我が祈りを聞き届け、彼の者の傲慢を砕け! 終末の鉄槌、ロックレイン!」

セーラのその聖なる言霊と同時に、まるで天が裂けたかのような、信じられない光景が繰り広げられた。火口の天井、遥か上空から、家ほどもある巨大な岩の塊が、まるで意思を持つ神の鉄槌のように、無数に、そして凄まじい速度でエンシェント・ドラゴンめがけて降り注ぎ始めたのだ。それは、まさに天罰、あるいは終末の光景、燃え盛る隕石の雨のようだった。

エンシェント・ドラゴンは、その予期せぬ、そしてあまりにも規格外な天からの無慈悲な攻撃に、もはや回避することも、防御することもできず、その巨体は次々と、そして無防備に落下してくる灼熱の岩の豪雨に打たれた。ゴウッ!ゴウッ!ゴウッ!と、硬い鱗に巨大な岩塊が激突する鈍い音が連続して響き渡り、火山全体が激しく揺れ動き、煮えたぎるマグマの湖面が大きく跳ね上がり、灼熱の飛沫となって周囲に降り注ぐ。

ドラゴンは、これまでにないほどの苦悶の表情を浮かべ、その巨体を大きくよろめかせた。その数千年を生きたという強靭な体も、天から容赦なく降り注ぐ、神の怒りとも思える無数の岩の塊には、到底耐えきれるものではなかった。

やがて、岩の雨が一段落すると、セーラはまるで一枚の羽のようにふわりと、しかしどこか力なく地面に着地し、そのまま倒れ伏したリュウの元へと、震える足で駆け寄った。

「リュウ様……! リュウ様、しっかりしてくださいまし!」

彼女は、その小さな手で優しくリュウの体を抱き起こすと、もはや魔力の残滓すら感じられないほど消耗しきってはいたが、それでも震える指先で純白の聖杖を握り締め、最後の祈りを込めて回復魔法を唱えた。

「聖なる光よ、彼に癒しを……! キュア!」

温かく、そしてどこか懐かしい光が、リュウの傷つき、痺れた体にゆっくりと注ぎ込まれる。まるで凍てついていた大地に、待ち望んだ春の陽光がようやく降り注ぐかのように、彼の体から忌まわしい痺れが徐々に消え去り、失われたはずの力が、体の奥底からゆっくりと、しかし確実に蘇ってくるのを感じた。

「セーラ……! すまない……ありがとう……!」

リュウは、薄れゆく意識の中で、セーラのその美しい顔をぼんやりと見つめ、心からの感謝の言葉を、途切れ途切れに述べた。彼女の瞳に宿る、あの凛とした強い光は、今のリュウの心を、何よりも温かく、そして力強く照らしていた。

「いいえ……リュウ様……。わたくしが、当然のことをしたまででございます……」

セーラは、力なく、しかし安心したように微笑んだ。その笑顔は、先ほどの戦女神のような凛とした表情とはまた違う、いつもの、慈愛に満ち溢れた優しいものだった。

「さあ、リュウ様。わたくしたちの、最後の戦いですわ。力を合わせて、あの邪悪なる龍を、今度こそ完全に討ち滅ぼしましょう!」

セーラは、もはや立ち上がる力も残っていないかのように、しかしその声には揺るぎない力強さを込めて言った。その言葉には、もはや一片の迷いも、恐怖もなかった。

「ああ……! やってやるさ、セーラ!」

リュウは、セーラのその言葉に、そして彼女から注がれた最後の魔力に、心の底から力が湧き上がってくるのを感じながら、ゆっくりと、しかし確実に立ち上がり、背に背負っていた特注の両手斧、「ドラゴンスレイヤー」を、その両手で力強く構えた。ずっしりとした、しかしどこか手に馴染むその重みが、彼の闘志を再び燃え上がらせる。

エンシェント・ドラゴンは、まだ、辛うじて生きていた。天からの無慈悲な岩の雨に打たれ、その赤黒い鱗は無残に砕け散り、全身に夥しい数の深い傷を負いながらも、その血走った赤い双眸は、なおもリュウとセーラへの底知れぬ憎悪の炎を、執念深く燃やしている。しかし、先ほどの神懸かり的なセーラの攻撃で、相当なダメージを負っているのは明らかだった。その動きは目に見えて鈍く、あれほどまでに威圧的だった咆哮も、今はただ苦しげな、そして弱々しい唸り声に変わっている。

「聖なる氷の裁きを! ブリザード・ランス!」

セーラの掲げた聖杖が、再び、しかし今度はこれまでで最も強く、そして神々しいまでの青白い輝きを増し、彼女の澄んだ声から、先ほどゴブリンキングを凍てつかせたものよりもさらに強力な、極低温の冷気がほとばしった。それは、まさに全てを凍てつかせ、生命活動を完全に停止させる、絶対零度の裁きの息吹。彼女の最後の魔力によって生み出された純白の巨大な氷の槍が、よろめくエンシェント・ドラゴンを完全に、そして確実に包み込んだ。

エンシェント・ドラゴンは、その全身を瞬く間に分厚い氷の鎧に覆われ、巨大な、そして美しい氷の彫像と化し、完全にその動きを封じられた。その憎悪に燃えていた赤い双眸も、厚い氷の中に閉じ込められ、その怒りの炎は永遠に凍てついたかのように見えた。

「今だッ! これで、本当に終わりにしてやる!」

リュウは、この千載一遇の、そしておそらくは最後の好機を、決して逃さなかった。氷漬けとなり、もはや抵抗する術もないエンシェント・ドラゴンに向かって、残された全ての力を込め、「ドラゴンスレイヤー」を天高く振り上げた。

「オオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

リュウが、魂の全てを込めた雄叫びを上げると同時に、エンシェント・ドラゴンは、その氷の中から、最後の力を振り絞るかのように、その口から細く、しかし極めて高濃度の灼熱の火炎を、最後の抵抗として吐き出した。それは、全てを焼き尽くし、道連れにしようとするかのような、執念の最後の抵抗だった。

しかし、リュウは、ウェポンズマスターとして極限まで研ぎ澄まされた感覚で、その眼前に迫り来る灼熱の火炎を、まるで踊るかのように紙一重でひらりとかわすと同時に、氷漬けとなったエンシェント・ドラゴンの、まさにその心臓があるであろう位置を狙い、紅蓮の炎ごと、その「ドラゴンスレイヤー」を力任せに、そして正確無比に叩きつけた。

バギィィィィィィィィィンッ!という、氷が砕け散り、そして何か硬質なものが断ち切られる凄まじい破壊音と共に、「ドラゴンスレイヤー」は、エンシェント・ドラゴンの氷の鎧と、その下の強靭な鱗、そして肉体を、まるで熟れた果実でも切り裂くかのように、深々と、そして容赦なく斬り裂いた。

エンシェント・ドラゴンは、もはや声にならない、しかし魂そのものが砕け散るかのような断末魔の悲鳴を上げ、その巨体を激しく痙攣させ、そして力尽き、砕け散ったおびただしい氷の塊と共に、轟音を立てて灼熱のマグマが煮えたぎる火口の底へと、ゆっくりと、しかし確実に崩れ落ちていった。その巨大な体は、二つに分かたれ、マグマの熱で一瞬にして蒸発し、もう二度と、この世にその姿を現すことはなかった。

リュウとセーラは、互いに顔を見合わせ、そしてどちらからともなく、安堵と、そして信じられないほどの達成感に満ちた笑みを浮かべ、その場にへたり込んだ。激しく、そしてあまりにも長かった戦いを終え、全身は疲労困憊の極みに達していたが、その表情には、これ以上ないほどの達成感と、心の底からの安堵の色が、深く、そして誇らしげに刻まれていた。

「やりましたね……リュウ様……! 本当に……本当に、やりましたわ……!」

セーラは、満面の、そしてこれまでで一番美しいと言っても過言ではないほどの笑みを浮かべ、その喜びを爆発させた。彼女の美しいアクアマリンの瞳には、安堵と、そしてリュウへの深い信頼と愛情を示す、大粒の涙が光っていた。

「ああ……セーラ……お前のおかげだ。本当に……本当に、ありがとう……」

リュウは、そっとセーラの肩に手を置き、心からの、そして言葉では言い尽くせないほどの感謝の言葉を、途切れ途切れに述べた。彼女のあの土壇場での勇気と機転、そして何よりもリュウを信じるその揺るぎない強い意志が、この奇跡的な勝利を呼び込んだのだ。

二人は、どちらからともなく互いに強く、そして優しく抱き合い、この筆舌に尽くしがたいほどの喜びを、そして共に生還できたという奇跡を、言葉なく分かち合った。激しく、そしてあまりにも過酷だった戦いを乗り越え、互いの温もりの中で、共に生きて帰れたという喜びは、何物にも代えがたい、至上のものだった。

こうして、リュウとセーラの、S級冒険者への最後の、そして最大の試練、エンシェント・ドラゴン討伐作戦は、セーラの献身的な覚醒と、二人の決して揺らぐことのない固い絆、そしてそれぞれの持てる力を最大限に発揮した見事な連携によって、ついに、そして完全に成功を収めたのだった。

二人は、S級冒険者への道を、血と汗と涙で濡れた、しかし確かな足取りで歩んでいた。彼らの冒険は、これからも、この広大で、美しく、そして時に残酷な異世界で、数々の想像を絶する困難と出会い、そしてそれを必ずや乗り越えていくことだろう。二人の心には、もはや一点の曇りもなく、未来への確かな希望の光が、力強く輝いていた。

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