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異世界転生×ユニークスキル 武器使い ありとあらゆる武器を使いこなして無双する!?  作者: 月神世一
武器使いの勇者

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ep 29

英雄の凱旋、そして伝説への挑戦状

ゴブリンエンペラーという、悪夢のような強敵を討伐し、満身創痍の体を引きずりながらも、リュウとセーラは夜明け前の薄明かりの中、冒険者ギルドのあるアルクスの街へと帰還した。洞窟のじめじめとした冷たい空気とは打って変わり、アルクスの街はすでに朝の活気に満ち始めていたが、二人がギルドの重厚な扉を押し開けた瞬間、その喧騒はまるで魔法にかけられたかのように一瞬にして静まり返った。早朝から依頼の準備に勤しんでいた冒険者たちが、血と泥に汚れ、明らかに限界を超えた疲労をその全身に纏ったリュウとセーラの姿を見るなり、驚きと、そして何かを察したような畏敬の念を込めた視線を一斉に向けたのだ。

受付カウンターで夜勤明けの書類整理をしていたルナは、その異様なまでの静けさに顔を上げ、カウンターから身を乗り出すようにして二人の姿を認めると、信じられないといった表情で美しい目を大きく丸くした。その澄んだ瞳には、安堵の色、心からの尊敬の念、そして目の前の光景が現実であるとはにわかに信じ難いといった、畏怖にも似た色が複雑に入り混じっていた。

「リュウ様っ! セーラ様っ! お、お帰りなさいませ! ご、ご無事だったのですね……! まさか……本当に、あのゴブリンエンペラーを……討伐されてお戻りになるなんて……!」

ルナの声は、抑えようのない興奮と感動でわずかに震えていた。彼女だけでなく、ギルド内にいた他の冒険者たちも、今回の依頼の危険性と、その対象の凶悪さについては噂に聞いていたものの、まさか本当に、数日前までD級だった若い二人が、あの伝説級の魔物を倒して生きて帰還するとは、夢にも思っていなかったのだろう。囁き声すら憚られるような、静寂と緊張感がギルドホールを満たしていた。

「ああ……何とか、討伐できたよ。本当に、ぎりぎりだったけどな」

リュウは、全身を貫くような激しい痛みと、鉛を引きずるような重い疲労感を必死に堪えながら、努めて平静を装って、しかし隠しきれない安堵の息と共にそう答えた。ウェポンズマスターとしての新たな力は出し尽くし、体はもはや一本の指すら動かすのが億劫なほどに重かった。隣に立つセーラも、その顔色は紙のように白く、今にも倒れてしまいそうなほど衰弱してはいたが、その瞳には確かな安堵の光が宿り、リュウの腕にそっと寄り添っていた。

「今回のゴブリンエンペラー討伐の任務は、本当に、本当に大変なものでしたのに……」ルナは、二人のその想像を絶するほどの疲労の色を隠せない様子を見て、それ以上言葉を続けることができず、思わず詰まらせた。しかしすぐに、プロの受付嬢としての気丈さを取り戻し、深い尊敬の眼差しで二人を見つめながら続けた。「ですが……ですが、わたくし、お二人ならきっと、この困難な任務も必ずや成功させてお戻りになると、心の底から信じておりました! ギルドの誰もが、リュウ様とセーラ様の無事なご帰還を、今か今かと待っておりましたのですよ!」

セーラは、ルナのその心からの温かい言葉に、張り詰めていた緊張の糸がようやく解けたかのように、ほっとしたように柔らかな微笑みを浮かべた。「ありがとうございます、ルナさん。そのお言葉だけで、わたくしたちの苦労も報われますわ」

二人は、ルナの心配そうな案内に従い、まずは応急手当を受けるため医務室へと向かい、その後、改めてカウンターでゴブリンキング、ゴブリンシャーマン、そして、何よりも巨大で異質なオーラを放っていたゴブリンエンペラーの討伐証明となる素材を提出した。エンペラーの禍々しい漆黒の鎧の一部や、天を突くように鋭く尖った巨大な角は、それだけでその持ち主がいかに強大な存在であったかを雄弁に物語っていた。

ルナは、一つ一つ丁寧にそれらの素材を確認し、その希少価値と危険度を慎重に吟味しながら、手際よく討伐報告の書類を作成していった。時折、信じられないといった表情でリュウとセーラの顔を交互に見つめ、小さな声で「本当に……あのエンペラーを、お二人だけで……」と、畏敬の念を込めて呟いていた。

「報酬の詳細につきましては、後ほどギルド長室にて、ギルドマスター、バルガス様ご本人より直接お渡しいただけるとのことです。それと、バルガス様が、お二人にお会いして、直接労いの言葉をかけたいと、そうおっしゃっておられます」

「ギルド長が、直々に……? 何か、特別なことでもあったんですか?」

リュウは、その言葉に少しばかりの不安と、そしてそれ以上の期待を感じながら尋ねた。ギルド長が、一介の冒険者に、しかもこれほど早く直接会いたいと言うのは、何か特別な理由があるに違いない。

ルナは、にっこりと、そしてどこか意味ありげな微笑みを浮かべて答えた。「おそらく、今回のゴブリンエンペラー討伐という、あまりにも大きな功績について、詳しくお話があるのだと思います。お二人とも、本当に素晴らしい、歴史に残るようなご活躍でしたから! きっと、とても良いお話があると思いますよ」

リュウとセーラは、顔を見合わせ、互いに小さく頷いた。疲労はすでにピークに達しており、今すぐにでもベッドに倒れ込みたいほどだったが、ギルドマスター、バルガスの言葉への期待感が、わずかに二人の重い足を軽くした。

ギルドの最も奥に位置する、重厚なマホガニー材の扉の向こうにあるギルド長室に入ると、いつものように部屋の主であるバルガスが、大きな革張りの椅子に深く腰掛け、二人を待っていた。部屋には、静かながらもどこか厳粛で、重々しい空気が漂っている。

「よくぞ参った、リュウ、そしてセーラよ」

ギルドマスター、バルガスは、血と泥に汚れ、しかし確かな達成感をその身に纏った二人を見ると、その厳めしい顔に、深い満足と称賛の色を浮かべた。普段は滅多に見せることのない穏やかな、そして父親のような温かい笑みが、二人の成し遂げた功績の大きさを何よりも雄弁に物語っていた。

「ゴブリンエンペラー討伐、真にご苦労であった。まさか、ほんの少し前までD級の駆け出し冒険者に過ぎなかったお前たちが、あの伝説級の強敵を、しかも二人だけで打ち破るとはな。信じ難いが、これは紛れもない事実だ。お前たちのその驚くべき活躍は、瞬く間にギルド中に知れ渡り、今やアルクスの街の、いや、この地方全体の英雄として語り継がれることになるだろうぞ」

「ありがとうございます、ギルドマスター、バルガス様」

リュウは、バルガスのその過分とも思える言葉に、改めて今回の戦いの途方もない大きさを感じ、深々と、そして敬意を込めて頭を下げた。隣に立つセーラもまた、控えめながらも、その瞳に感謝の光を宿し、淑やかに一礼した。

「今回のゴブリンエンペラー出現と、その討伐という任務は、ギルドとしても最重要警戒案件として、その動向を注視していた。あのエンペラーは、並のA級冒険者パーティーでも返り討ちに遭うか、あるいは多大な犠牲を強いられるほどの、規格外の強敵だ。それを、お前たちは見事に、そして最小限の被害で討伐した。この功績は、もはやS級冒険者に匹敵する、いや、それ以上の実力と判断力、そして勇気を示したものと言えるだろう」

ギルドマスター、バルガスのその言葉に、リュウとセーラは思わず顔を見合わせ、息を呑んだ。S級。それは、このアルクス冒険者ギルドにおいても、ほんの一握りの、まさに伝説として語られるような英雄たちだけに与えられる、冒険者にとって最高位の称号であり、自分たちにとっては遥か雲の上の、手が届かないと思っていた領域だったからだ。

「そこでだ、リュウ、セーラ。お前たち二人に、特例として、S級冒険者への昇級試験を受けてもらいたいと考えている」

バルガスは、それまでの称賛の口調から一転、重々しい、しかし確かな期待を込めた声で続けた。その言葉には、二人の類稀なる才能を高く評価し、彼らをさらに大きな舞台へと押し上げたいという、ギルドマスターとしての強い思いが込められていた。

「S級冒KEN者になれば、より危険で、より高難易度の、そして時には世界の命運を左右するような、重大なクエストに挑戦できるようになる。当然、その報酬もこれまでのものとは比較にならないほど格段に上がり、お前たちの生活も、そして冒険者としての地位も飛躍的に向上するだろう。それに、ギルドの運営や、重要な意思決定にも一部携わることができ、より大きな影響力と責任を持つことができるようになる。それは、まさに選ばれし者のみに許された特権だ」

リュウは、その言葉の重みに、喜びよりも先に、ずっしりとした、しかしどこか心地よい責任を感じた。S級冒険者になるということは、計り知れないほどの名誉なことだが、それと同時に、これまで以上に多くの人々の期待をその両肩に背負い、想像を絶するほど危険な任務を、命を賭してこなさなければならないということでもあるのだ。

「S級への昇級試験……。それは、確か……古の時代より、伝説の魔物であるドラゴンを討伐することだと、そうお聞きしたことがございますが……」

セーラは、隠しきれない不安と、そしてわずかな畏怖の色をその表情に浮かべながら、小さな声で、しかしはっきりと尋ねた。ドラゴンの強さと恐ろしさは、この世界の冒険者の間では、もはや語り草となっている。並大抵の力では到底太刀打ちできない、まさに伝説の中に生きる魔物だ。

バルガスは、セーラのその心配そうな表情を察しながらも、その言葉を力強く肯定した。「うむ、その通りだ、セーラ。S級昇級試験の内容は、その時々の状況や、対象者の実力によって変わることもあるが、今回のお前たちへの試験内容は、まさしく、古竜種エンシェント・ドラゴンと呼ばれる、数あるドラゴンの中でも特に強力で、そして知恵深い一種を討伐することとなっている」

ギルドマスターは、さらに厳しい表情で続けた。「ドラゴンは、自然界における食物連鎖の頂点に君臨し、最強の存在の一つとして恐れられている。その鱗は、あらゆる魔法や物理攻撃を弾き返す鋼鉄よりもなお硬く、その口から吐き出される灼熱の炎は、一瞬にして森羅万象を焼き尽くすと言われている。並の冒険者では、その威圧的な咆哮を聞いただけで戦意を喪失し、逃げ出すことしかできないだろう。だが、お前たちならば、あのゴブリンエンペラーを打ち破ったその実績と、そして何よりもその瞳に宿る不屈の魂がある。きっと、この試練も乗り越えられると、この私は心の底から信じているぞ」

リュウは、隣に座るセーラの顔をそっと見た。彼女の美しい瞳には、隠しようもない不安の色が濃く浮かんでいた。しかし、リュウと視線が合うと、彼女は一瞬だけ迷うような表情を見せたものの、やがて意を決したように、小さく、しかし力強く頷いた。彼女は、リュウの決意を尊重し、どんな困難な道であろうとも、彼と共に立ち向かう覚悟を、その無言の頷きで示したのだ。

リュウは、ギルドマスター、バルガスのその真っ直ぐな、そして信頼に満ちた眼差しを真正面から受け止め、静かに、しかしその声には揺るぎない力強さを込めて言った。「分かりました、バルガス様。ギルド長、そしてセーラが、そこまで私たちを信じてくださるのであれば、その期待に応えたい。S級昇級試験、謹んでお受けさせていただきます」

「よし、よくぞ言った、リュウ! その意気込みや、良し!」

バルガスは、リュウのその決然とした言葉に、満足そうに大きく頷き、力強く立ち上がった。「お前たちがS級冒険者として、このアルクス、いや、この大陸全体の希望の星となれるよう、ギルドとしても全力でサポートすることを約束しよう。必要な情報や、あるいは特別な装備などがあれば、何でも遠慮なく申し出てくれ」

こうして、リュウとセーラの、新たなる、そしておそらくはこれまでのどの冒険よりも過酷な挑戦が始まった。ゴブリンエンペラーという強大な敵を討伐し、アルクスの街の英雄として称えられた彼らは今、冒険者としての頂点、S級の称号を目指し、そしてその先にあるであろう、まだ見ぬ世界と、伝説の魔物、エンシェント・ドラゴンとの想像を絶する戦いに、その身を投じようとしていた。彼らの前には、これまで以上の困難と、そして筆舌に尽くしがたいほどの危険が待ち受けているだろう。しかし、二人の間には、幾多の死線を共に乗り越えてきたことで培われた、何よりも固い絆と、どんな困難にも決して屈することのない、燃えるような勇気が漲っていた。

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