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異世界転生×ユニークスキル 武器使い ありとあらゆる武器を使いこなして無双する!?  作者: 月神世一
武器使いの勇者

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ep 24

A級の祝杯、アルクスの市場と故郷の香り

A級冒険者としての認定という、望外の栄誉を受けたリュウとセーラは、ギルドマスター、バルガスからの激励の言葉を胸に、興奮冷めやらぬままアルクスの冒険者ギルドを後にした。その日の夜、二人はこの輝かしい昇格を祝い、そしてこれまでの苦労を労うため、ささやかながらも盛大な祝杯をあげることに決めた。彼らが向かったのは、アルクスの街で最も活気があり、様々な品物が集まるという中央市場だった。夕暮れ時を迎え、家路を急ぐ人々や、夕食の食材を求める主婦たちで賑わう市場は、色とりどりの野菜や果物、威勢のいい魚屋の呼び込み、香ばしい焼き菓子の匂いなどが渾然一体となり、エネルギッシュな活気に満ち溢れていた。

「さあ、セーラ! 今日は俺たちのA級昇格祝いだ! とことん美味しいものを買って、最高の料理を作って食べよう!」リュウは、昼間の模擬戦闘の疲労も忘れ、まるで子供のように目を輝かせながら、セーラに高らかに宣言した。

セーラもまた、リュウのその弾けるような笑顔につられるように、嬉しそうに、そして少しはにかみながら微笑んだ。「はい、リュウ様。わたくしも、とても楽しみですわ。リュウ様のお料理、いつも本当に美味しいですから」

二人はまず、新鮮な魚介類を求めて、市場の奥にある魚屋の店先へと足を向けた。そこには、氷の上に並べられた、銀色に輝く立派な真鯛や、ピンピンと跳ねる活きの良い車海老、そして大きな爪を振り上げる見事な渡り蟹などが所狭しと並べられている。リュウは、目を輝かせながらそれらを吟味し、今夜のメインディッシュとなるであろう鍋料理に使うため、店主と威勢よく値段交渉を始めた。次に、野菜を扱う露店を巡り、瑞々しい白菜や、土の香りがする太いネギ、そして様々な種類のきのこなど、鍋料理に欠かせない彩り豊かな旬の野菜を買い込んだ。リュウが野菜の目利きに悩んでいると、セーラが薬草の知識を活かして的確なアドバイスを送り、二人は楽しそうに言葉を交わしながら、次々と食材を揃えていった。

そして、様々な香辛料や乾物が並ぶ店の軒先に差し掛かった時、リュウはまるで雷に打たれたかのように、その場に釘付けになった。彼の視線の先には、見慣れた、そして何よりも懐かしい白い粒が、大きな麻袋に入れられて無造作に置かれていたのだ。

「こ、これは……米じゃないか!」リュウは、思わず声を上げた。しかも、それは彼が故郷、日本で毎日当たり前のように食べていた、ふっくらと丸みを帯びた、粘りのある短粒米だったのだ。「まさか……こんな、異世界の果てのような場所で、日本の米に……本物の米に出会えるなんて!」

セーラは、リュウのその尋常ではない興奮ぶりに少し驚きながらも、彼の視線の先にある白い粒を見て、「ああ、それはライスですね。この辺りでは栽培されておらず、遠い東方の国から稀に入荷されることがあると聞いております。ですので、少しお値段は張りますが、とても栄養価が高いそうですよ」と、落ち着いた声で説明した。

リュウは、逸る気持ちを抑えきれず、すぐに店の恰幅の良い女将に声をかけた。「お、おばさん! この米、ください! あるだけ全部!」

さらに、興奮冷めやらぬまま店の中を見て回ると、今度は陶器の壺に入れられた、茶色く濃厚な光沢を放つペースト状のものが目に飛び込んできた。その独特な発酵した香りは、紛れもなく……。「こ、これは……味噌じゃないか! 信じられない! 米だけじゃなく、味噌まであるなんて!」リュウは、再び大きな声を上げた。故郷の味が、こんなにも遠く離れた異世界で、いとも簡単に手に入るなんて、まるで都合の良い夢でも見ているかのようだった。「おばさん! これも! この味噌もください!」

「はいよ、お兄ちゃん、毎度あり! 今日は良い米と味噌が入ってるよ!」と、人の良さそうな笑顔を浮かべた女将は、手際よく米を木の枡で計り、味噌を油紙に包んでリュウに手渡した。

「ありがとう! おばさん、愛してるぜ!」リュウは、感謝の気持ちと、故郷の味との再会というあまりの喜びに、思わずそう叫びながら、満面の笑みを浮かべた。

女将は、リュウのその言葉に「はっはっは、威勢のいいお兄ちゃんだねぇ! ありがとうよ、またおいで!」と、さらに笑顔を深めた。

その言葉とリュウの行動を聞いていたセーラは、先ほどまでの穏やかな表情から一転、少しばかり頬をぷくりと膨らませて、リュウの袖をそっと、しかし少し強めに引いた。「リュウ様……そ、そんな……わたくしという者が、こうしてお傍におりますのに、年上の方がお好きだなんて……わたくしでは、魅力が足りないということなのでしょうか……」彼女は、潤んだ瞳でリュウを見上げ、少しばかり拗ねたような、寂しそうな表情を見せた。

リュウは、セーラのその意外な反応と、真剣な眼差しに気づき、一瞬で酔いが醒めるような心地で慌てて言った。「い、いやいや、セーラ! ち、違うんだ! 誤解だよ! おばさんのあの人の良さそうな笑顔が素敵だったから、つい、感謝の気持ちが溢れちゃって……! も、もちろん、セーラのことは、もっともっと……その、大切に思っているというか……!」彼は、しどろもどろになりながら言葉に詰まり、照れたように頭を掻いた。

セーラは、リュウのその慌てぶりに、先ほどまでの拗ねた表情が嘘だったかのように、クスッと小さく吹き出し、「ふふっ、分かっておりますわ、リュウ様。少し、からかってみただけですのよ」と言いながらも、その頬はほんのりと赤く染まっており、少しだけ安心したような、嬉しそうな表情を見せた。

懐かしい日本の米と、風味豊かな味噌を手に入れたリュウは、まるで伝説の聖剣でも手に入れたかのように、自信と喜びに満ち溢れていた。「米と味噌があれば、俺は無敵だ! よーし、セーラ! 今夜は俺が腕によりをかけて、最高の海鮮味噌鍋を作ってやるぞ!」

山海の幸をたっぷりと買い込んだ二人は、アルクスの街の喧騒を離れ、郊外の森の入り口近くにある、月明かりが優しく降り注ぐ静かな場所にテントを張った。リュウは手際よく焚火を起こし、持参した少し大きめの鉄鍋に清らかな湧き水を張った。セーラは、市場で買った新鮮な真鯛や海老、蟹などを丁寧に下処理し、白菜やネギ、きのこなどの野菜を、食べやすい大きさに手際よく切り始めた。

鍋の水がコトコトと心地よい音を立てて沸騰し始めたら、まずは魚介類を入れ、その旨味をじっくりと引き出す。続いて、たっぷりの野菜を次々と鍋に入れて煮込んでいく。魚介の濃厚な出汁と、野菜の優しい甘みが溶け合い、食欲をそそる芳醇な香りが、夜の静かな森にふわりと漂い始めた。全ての具材に程よく火が通った頃合いを見計らって、リュウは大切に抱えてきた味噌を、出汁で少しずつ溶かしながら、ゆっくりと鍋に加えた。濃厚で芳醇な味噌の香りが、それまでの魚介と野菜の香りに深みと複雑さを加え、まさに究極とも言える海鮮味噌鍋が完成した。

そして、リュウはもう一つの主役である米を、愛用の飯盒で炊き始めた。焚火の安定した火力で、パチパチと米が炊ける音と、ふっくらとした甘い香りが、二人の空腹と期待感を否応なしに高めていく。

ついに、待ちに待った炊き立ての、湯気が立ち昇る熱々のご飯が、木の器に盛られて目の前に運ばれた。リュウは、まるで宝物を扱うかのように、震える手でその茶碗を持ち、まずは一口、白米だけを味わった。「……う……美味いっ! 最高だ……!」彼は、思わずそう叫んだ。故郷で毎日当たり前のように食べていた、あのふっくらとした米の甘み、粘り、そして香り。そして、魚介の旨味が凝縮された味噌鍋の、深く、そして優しい風味が、彼の心と体に、まるで温かい血が巡るように染み渡っていくのを感じた。

セーラも、リュウに勧められるまま、海鮮鍋と炊き立てのご飯を一口食べると、そのあまりの美味しさに目を細め、至福の表情を浮かべて微笑んだ。「……本当に、本当に美味しいですわ、リュウ様。こんなに滋味深く、そして心まで温まるようなお料理は、生まれて初めていただきました」

美しい月明かりの下、リュウとセーラは、湯気の立つ温かい海鮮味噌鍋を囲み、炊き立ての真っ白なご飯を頬張りながら、A級冒険者への昇格という、大きな節目を祝った。心の底から美味しいと感じる料理と、共に数々の困難を乗り越えてきた、かけがえのない大切な仲間。静かで穏やかなアルクスの夜空の下、二人は言葉少なに、しかしこの上なく幸せな一時を過ごした。リュウは、遠く離れた故郷の味に心を満たされながら、この優しく、そして信頼できる仲間であるセーラと共に、これからも様々な困難に立ち向かい、共に成長し、そしていつか必ず、この異世界で何かを成し遂げるのだと、夜空の星に固く誓ったのだった。

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