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異世界転生×ユニークスキル 武器使い ありとあらゆる武器を使いこなして無双する!?  作者: 月神世一
武器使いの勇者

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ep 16

禁断の知識、そして深淵よりの雫

リュウとセーラが連れ立って冒険者ギルドの重厚な扉を押し開けると、昨日までの喧騒とは打って変わって、幾分落ち着いた空気が流れていた。午前の柔らかな陽光が、高い窓から床に斜めに差し込み、埃っぽさを感じさせない清浄な光の筋を作り出している。カウンターで依頼の相談をする者、テーブルで地図を広げ次の探索計画を練る者、あるいはただ静かに酒杯を傾ける者など、冒険者たちは思い思いの時間を過ごしているようだった。その中で、リュウはゴブリンキングとの激闘で得た確かな経験と、それと同時に露呈した自身の限界を胸に、新たな力を渇望していた。セーラもまた、彼のその真剣で、どこか焦燥感を秘めた眼差しを感じ取り、何も言わずに静かに寄り添っていた。

受付カウンターには、昨日と同じ、栗色の髪をきっちりと結い上げた見慣れた受付嬢が、今日も山のような書類と格闘しながらも、時折訪れる冒険者にテキパキと対応している。リュウが少しばかりの緊張を胸に声をかけると、彼女は顔を上げ、リュウとセーラの姿を認めると、いつものプロフェッショナルな笑顔で応対してくれたが、リュウの口から「毒についてお伺いしたいのですが」という言葉が出た途端、その表情は目に見えて曇った。

「毒、でございますか……」受付嬢は、明るかった声のトーンを一段落とし、眉をひそめた。周囲に他の冒険者が聞き耳を立てていないか、警戒するようにわずかに声を潜める。「リュウ様、セーラ様。ご承知の通り、毒というものは、その扱いを僅かでも誤れば、使用者自身だけでなく、周囲の無関係な方々をも危険に晒しかねない、極めて危険な凶器となり得る代物です。冒険者ギルドといたしましても、その情報提供や斡旋に関しましては、最大限の慎重さをもって対応せざるを得ないのが実情なのです」彼女の言葉には、ギルドとしての公的な立場と、目の前の若い冒険者たちの安全を心から願う個人的な気持ちが、複雑に滲み出ていた。

リュウは、受付嬢のその懸念を十分に理解するように、深く、そしてゆっくりと頷いた。「おっしゃることは、重々承知しております。私たちも、毒の持つ危険性については、ギルドの書庫で関連資料を読ませていただき、十分に理解しているつもりです。決して、興味本位や、ましてや悪用するような真似はいたしません。ただ、昨日のゴブリンキングとの戦いを経て、今後、さらに強力で、通常の攻撃では容易に倒せないような敵と対峙する可能性を考えると、最後の切り札として、毒という手段も視野に入れておく必要があると、強く感じたのです」彼は、誤解を招かぬよう、言葉を選びながらも、その真剣な眼差しで自分の意図をはっきりと伝えた。

隣にいたセーラも、リュウの言葉を力強く肯定し、受付嬢に優しく、しかし説得力のある口調で語りかけた。「わたくしは、教会で薬草に関する知識を多少なりとも学んでまいりました。その中には、薬にもなれば毒にもなる植物もございますので、危険な物質に対する最低限の知識はあると自負しております。それに、リュウ様は、どのような武器でも、まるで長年使い慣れた手足のように、たちまちのうちに使いこなしてしまう『武器使い』という、大変特別なスキルをお持ちです。きっと、毒という扱いが難しい特殊な武器も、その素晴らしい才能をもって、誰よりも安全に、そして効果的に扱えるはずだと、わたくしは固く信じておりますの」セーラの言葉には、リュウへの揺るぎない信頼と、このデリケートな問題を円滑に進めたいという切実な願いが込められていた。

受付嬢は、リュウの真摯な態度と、セーラの理路整然とした、そして何よりもリュウへの深い信頼に裏打ちされた言葉に、しばらくの間、何かを査定するかのようにじっと二人を見つめ、そして深く考え込む様子を見せた。彼女一人で、この重大な案件を判断するには、あまりにも責任が重すぎると感じたのだろう。「……お二人のご事情、そしてそのお覚悟は理解いたしました。しかし、やはりわたくしの一存で、毒に関する具体的な情報や、ましてやその現物を提供することは、ギルドの規定上、許されておりません。この件に関しましては、ギルド長に直接ご相談いただくのが、最善かと存じます。少々お待ちいただけますでしょうか。すぐにギルド長にご意向を伺ってまいります」そう言うと、彼女は一礼し、足早に奥の執務室へと続く扉の向こうへと消えた。

残されたリュウとセーラは、カウンターの前で静かに、しかし緊張した面持ちで待った。周囲の冒険者たちは、時折こちらに興味深そうな視線を送ってくるが、二人のあまりにも真剣な表情を見て、無粋な詮索をするような素振りは見せなかった。ギルド内には、一種独特の張り詰めた空気が流れている。

数分が永遠のように感じられた後、受付嬢が少し上気した顔で戻ってきた。「リュウ様、セーラ様、お待たせいたしました。ギルド長が、お二人にお会いしたいと仰っております。どうぞ、こちらへ」彼女の表情は、先ほどよりも幾分か和らいでおり、そしてどこか期待を込めたような響きが声に含まれていた。

二人は、受付嬢に案内され、ギルドの最も奥まった場所に位置する、ギルド長の執務室へと足を踏み入れた。重厚なマホガニーの扉を開けると、そこは外の喧騒とは完全に隔絶された、静かで、しかしどこか威圧感のある空間が広がっていた。壁一面を埋め尽くす大きな書棚には、金箔の押された背表紙の古びた書物が整然と並べられ、反対側の壁には、討伐されたのであろう巨大な魔物の頭蓋骨や、歴史を感じさせる年代物の武具が、まるで戦利品のように誇らしげに飾られている。そして、部屋の中央にどっしりと置かれた大きな黒檀の革張りの椅子の奥に、鋭い鷲のような眼光を放つ壮年の男性が、腕を組んで静かに座っていた。深く刻まれた額の皺は厳格そのものだが、その瞳の奥には、長年この街の冒険者たちを見守り、導いてきたであろう温かさと、深い洞察力のようなものが感じられた。彼こそが、このアルクス冒険者ギルドを束ねるギルドマスター、バルガスその人だった。

ギルドマスターは、音もなく入室してきたリュウとセーラを、その鋭い眼差しで値踏みするように見つめながら、低い、しかしよく通る声で言った。「リュウ、そしてセーラとやら。受付の者から話は聞いた。君たちが、毒というものについて、強い関心と必要性を感じていると。……良いか、毒は、確かに時に戦局を覆すほどの強力な武器となり得る。しかし、それは同時に、使い方を誤れば、使用者自身をも破滅させかねない、極めて危険な代物でもあるのだ。安易な気持ちや、単なる好奇心だけで扱おうとするならば、それは愚行以外の何物でもない。その覚悟は、本当にあるのか?」彼の言葉は、一つ一つが重く、試すように二人の心に深く突き刺さった。

リュウは、ギルドマスターのその言葉の重圧に臆することなく、背筋を伸ばし、真っ直ぐにその眼差しを受け止めて答えた。「はい、ギルドマスター。私たちは、毒の持つ危険性については、十分に理解しているつもりです。それでも、今後の冒険において、自分たちの力だけではどうにもならない強大な敵と対峙した際に、最後の切り札として、毒の知識と、それを扱う技術が必要となる場面が必ず来ると考えております。決して、軽はずみな気持ちや、ましてや悪用する目的で知りたいわけではございません」

ギルドマスターは、リュウのその揺るぎない真っ直ぐな眼差しと、言葉に込められた覚悟の重みに、わずかにその厳格な表情を和らげた。「……よかろう。君たちのその覚悟、その目を見れば嘘ではないと伝わってくる。しかし、何度でも言う。毒は、その力を過信し、使い方を間違えれば、たちまちにして命を奪う凶器となることを、決して忘れるな。それは、敵に対してだけでなく、自分自身や、仲間に対してもだ」

ギルドマスターは、二人の決意を認め、禁断とも言える毒に関する情報を提供することを決めたようだった。「よろしい。ギルドの古書庫には、古くからこの地方に伝わる様々な毒草や鉱物毒、そしてそれらの調合方法に関する資料が保管されている。それらを参考に、まずは自分たちで毒について深く、そして徹底的に学ぶが良いだろう」彼は、部屋の隅にある、さらに厳重な鍵がかけられた書庫の奥にある一角を指し示し、改めて二人に厳しい声で注意を促した。「ただし、それらの資料の中には、極めて強力で、取り扱いに専門的な知識と細心の注意を要する毒に関する記述も含まれている。決して、軽率な実験や調合は行うな。必ず、安全な環境と、十分な知識を得てからだ」

リュウとセーラは、ギルドマスターのその言葉に、深く、そして感謝の念を込めて頭を下げた。「ありがとうございます、ギルドマスター! そのお言葉、決して忘れません!」二人は、ギルドマスターに促されるまま、足早に、しかし緊張感を胸に、その禁断の知識が眠る書庫へと向かった。

書庫の奥まった一角には、埃を被り、ページが黄ばんだ古びた書物がずらりと並んでいた。リュウとセーラは、それぞれ興味のある書物を手に取り、蝋燭の薄暗い灯りを頼りに、熱心にそのページを捲り始めた。毒草の図鑑、動物性の毒の抽出方法、鉱物毒の精製法、そして様々な毒の症状と効果、さらには解毒薬に関する書物……。二人は、文字通り寝食を忘れ、昼夜を問わずその知識を貪るように吸収し続けた。

数日が経ち、やつれたもののその瞳には確かな知識の光を宿した二人は、毒に関する基礎的な知識と、いくつかの実践的な調合方法をしっかりと身につけた。そして、再びギルドマスター、バルガスの元を訪れた。リュウは、以前よりも自信に満ちた、しかしどこか覚悟を決めたような表情でギルドマスターに言った。

「ギルドマスター、先日は貴重な資料の閲覧をお許しいただき、誠にありがとうございました。おかげさまで、毒というものについて、多くのことを学ばせていただきました。その危険性と、そして可能性についても」

ギルドマスターは、二人の顔つきが数日前とは明らかに変わっていることを見て取り、その真剣な眼差しに満足そうに深く頷いた。「うむ、どういたしまして。顔つきが変わったな。毒は、使い方次第では、確かに強力無比な武器となる。しかし、それは常に、使用者自身をも危険に晒す可能性を孕んでいるということを、ゆめ忘れるな。常に、その危険性を天秤にかけ、慎重に、そして冷静に扱うように」彼は、改めて、そして最後の釘を刺すように言った。

「はい、そのお言葉、肝に銘じます」リュウは、力強く、そして決然と答えた。

その時、ギルドマスターは、ふと何かを思い出したように、少しの間を置いてから、これまでになく重々しい口調で言った。「……そうか、お前たちならば、あるいはアレを託すに値するかもしれんな。少し待っていろ」そう言い残すと、彼はゆっくりと立ち上がり、執務室のさらに奥にある、鉄格子のはまった、厳重に幾重もの鍵のかかった小さな小部屋へと入っていった。

リュウとセーラは、何が起こるのか全く予想もできず、ただ固唾を飲んでギルドマスターの帰りを待った。部屋の中には、蝋燭の炎が揺らめく音と、二人の緊張した呼吸の音だけが響いていた。しばらくして、ギルドマスターは、その手のひらに隠れるほどの小さな、しかし異様な存在感を放つ黒曜石のような輝きを秘めた小瓶を、まるで貴重な宝物を扱うかのように慎重に持って戻ってきた。小瓶の中には、どろりとした、まるで凝固した血のような深紅色の液体が、不気味な光を湛えて満たされている。

ギルドマスターは、その小瓶をリュウにゆっくりと手渡しながら、囁くような、しかし芯のある低い声で言った。「これは、『深淵のアビス・ドロップ』と呼ばれる、伝説級の猛毒だ。古の伝承によれば、かつてこの毒のたった一滴が、山をも砕くと言われたギガマンモスを一瞬にして骨に変えたという。もし、君たちがこの禁断の毒を扱うというのならば、その絶大な力を十分に理解し、決して、決して軽率な行動は取るな。その扱いを僅かでも間違えれば、ギガマンモスはおろか、君自身も、そして周囲の全てをも、たちまちのうちに破滅させることになるだろう」

リュウは、その小さな小瓶を、まるで燃える炭火を扱うかのように、慎重に、そして震える手で受け取った。見た目からは想像もできないほどの、ずっしりとした重みが、その小瓶の中に凝縮されているように感じられた。それは、単なる物質的な重さではなく、その毒が秘める恐るべき力と、それを行使する責任の重さだったのかもしれない。

「ありがとうございます、ギルドマスター。この……『深淵の雫』の力を決して無駄にせず、そして決して悪用することなく、必ずや正しい目的のために、細心の注意を払って使わせていただきます」彼は、ギルドマスターの鋭い眼差しを真っ直ぐに見つめ返し、深々と頭を下げた。

こうして、リュウとセーラは、冒険者ギルドの長であるバルガスから、禁断とも言える伝説級の猛毒「深淵の雫」を手に入れた。それは、彼らの今後の冒険を、そしてあるいは運命をも大きく左右する可能性を秘めていると同時に、常に底知れぬ危険と隣り合わせであることを意味していた。二人は、この新たなる、そしてあまりにも強大すぎる力をその手に携え、更なる強敵が待ち受けるであろう、より険しく、そして予測不可能な冒監視の道へと、決意を新たにするのだった。

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