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異世界転生×ユニークスキル 武器使い ありとあらゆる武器を使いこなして無双する!?  作者: 月神世一
武器使いの勇者

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ep 14

束の間の祝杯、そして満たされぬ渇望

冒険者ギルド近くの「猪突亭」という名の、いかにも冒険者が集いそうな賑やかな酒場の一角で、リュウとセーラは木製のジョッキを高々と掲げた。「俺たちの初勝利と、ミルラの村の復興に!」「リュウ様の武勇と、女神様の御加護に、乾杯ですわ!」二人の声が、周囲の陽気な喧騒や、吟遊詩人が奏でる軽快なリュートの音色の中に、心地よく響き渡った。ゴブリンキングとの壮絶な激闘を終え、危機に瀕した村を救ったという確かな達成感は、何物にも代えがたい、甘美な喜びとして二人の胸を満たしていた。

「ハハハ、それにしても、まさか本当にあのタイミングでゴブリンキングが出てくるとは思わなかったぜ!」リュウは、エールらしき黄金色の酒を豪快に呷りながら、興奮冷めやらぬといった様子で笑った。「正直、セーラの回復魔法がなかったら、途中で何度か危なかった。本当に助かったよ、ありがとう」

セーラは、リュウからのストレートな感謝の言葉に頬をほんのりと赤らめ、「そ、そんなことございませんわ! リュウ様のあの神業のような剣技と、最後の正確無比な投石こそが、村を、そしてわたくしをもお救いくださったのです」と、少し恐縮したように謙遜した。彼女にとって、リュウの戦いぶりは、まさに英雄譚の一場面を見ているかのようだった。

宴が進むにつれ、アルコールの力も手伝ってか、二人は互いのこれまでについて、少しずつだが心を開いて語り合った。リュウは、自分が「遠い東の、今はもう滅んでしまった国」から来たということ、そしてある日突然この世界に迷い込み、生きるために戦う術を身につけようとしているという、前世の日本の話は巧妙にぼかしつつも、大筋では嘘ではない経緯を話した。セーラは、幼い頃からアルクスの街の教会で育ち、光の女神に仕えることを喜びとしてきたこと、そして今回の神託がなければ、一生教会の外の世界を知らずに過ごしていたかもしれないことなどを、時折はにかみながらも、その優しい笑顔で穏やかに語った。

「リュウ様のお話は、本当に面白いですわね」セーラは、テーブルに置かれたランプの灯りに照らされてキラキラと輝く瞳で、リュウを見つめながら言った。「わたくしの知らない場所、知らない文化……まるで、一度も見たことのない世界の、不思議なおとぎ話を聞いているみたいで、胸が躍ります」

リュウは、彼女のあまりにも純粋で真っ直ぐな視線に、少し照れたように笑い、「ハハ、まあ、セーラの前だから、つい色々話しちまうのかもな。普通の奴にこんな話しても、頭がおかしいと思われるだけだろうし」と、ぶっきらぼうな口調で答えた。彼女の穢れのない瞳に見つめられると、なぜか普段は胸の奥にしまい込んでいるようなことまで、自然と口にしてしまうのだった。

楽しい宴もやがて終わりを迎え、リュウは程よく酔いが回った心地よい気分のまま、セーラと別れて宿屋へと戻った。宿の主人に軽く挨拶をし、割り当てられた簡素な自室のベッドに体を預ける。ギシ、と軋むベッドの音だけが、静まり返った部屋に響いた。天井の木目をぼんやりと見つめていると、今日の、いや、昨夜から今朝にかけての激闘の記憶が、まるで昨日のことのように、しかしどこか遠い出来事のようにも鮮明に蘇ってくる。燃え盛る村、ゴブリンたちの醜悪な顔、ゴブリンキングの圧倒的な巨体と大地を揺るがす咆哮、そして何よりも、あの分厚く硬い皮膚を切り裂いた、二本の短剣の確かな感触。

短剣ナイフは、確かにあの巨体にも通用した……。スキルのおかげで、初めて握ったとは思えないくらい、手足のように扱えた」

リュウは、右手を強く握りしめ、まだ指先に微かに残る戦闘の疲労感と、武器を握った感触を確かめた。しかし、その達成感に浸る間もなく、すぐに冷たい疑問が頭をもたげる。「だが、もし、あの短剣ナイフの刃すら通じないような、もっと硬い鱗や甲殻を持つ敵が現れたら、俺は一体どうすればいい?」

胸の奥底から、じわりと湧き上がってきたのは、今日の大きな勝利の余韻ではなかった。むしろ、自分自身が持つ武器の種類の少なさ、攻撃手段の乏しさに対する、どうしようもないほどの強い不安感だった。石を投げる投石棒、そして近距離戦闘用の短剣二本。確かに、雑魚のゴブリン相手には十分だったかもしれない。ゴブリンキングに対しても、結果として勝つことはできた。しかし、あの悪夢に出てきた山のように巨大なドラゴンや、あるいは今日遭遇したゴブリンキングよりもさらに強大な敵を相手にするには、あまりにも心許なく、選択肢が少なすぎる。

「このままじゃ、本当にいざという時に、何もできずに……また、あの夢の中みたいに、ただ見ていることしかできずに終わってしまうかもしれない……」

じっとしていられなくなり、リュウはベッドから跳ね起きると、月明かりだけが差し込む狭い部屋の中を、まるで檻の中の獣のように落ち着きなく歩き始めた。窓から差し込む銀色の月光が、彼の焦燥に駆られた影を壁に大きく、そして不安定に映し出す。何か良い方法はないのか。この現状を打破するための、確かな糸口はないのか。思考は、まるで出口のない迷路の中を永遠に彷徨うように、堂々巡りを繰り返した。

ふと、脳裏に鮮明に浮かんだのは、遠距離から、より安全に、そして確実に敵を攻撃できる武器の必要性だった。「やはり、投石だけじゃなく、もっと安定した遠距離攻撃ができる武器が必要だ……」

投石棒は、確かに一点集中の威力こそ申し分ない。ゴブリンキングに致命傷を与えた最後の一撃は、その何よりの証拠だ。しかし、一度に一発しか投げられず、次の投擲までにどうしても時間が必要になるという、致命的な欠点がある。複数の敵に同時に囲まれた場合や、俊敏に動き回る敵に対しては、どうしても対応が後手に回ってしまう。もっと、弓や、あるいはクロスボウのように、手軽に、そして連続して攻撃できる遠距離武器があれば、戦いの幅は格段に広がるはずだ。不意を打つことも、牽制することも、そして時には致命傷を与えることも可能になるだろう。

「それに……」リュウは、窓の外に広がるアルクスの街の夜景を見つめながら、誰にともなく小さく呟いた。「毒も、もっと有効に使えるようになるかもしれない……」

ゴブリンキングとの戦いを冷静に振り返ってみると、あの岩のように硬い皮膚を短剣で切り裂くのは、決して容易ではなかった。何度も弾かれ、浅い傷しか与えられない場面もあった。もし、あの時、短剣の刃に強力な神経毒や、あるいは出血を促すような毒が塗られていたなら、もっと早く、そしてもっと楽に、あの巨獣を倒せていたかもしれない。毒は、たとえ防御力の高い敵に対しても、確実にダメージを与え、じわじわと相手の生命力を奪うことができる、非常に強力な手段となるはずだ。

「毒殺、か……」

リュウは、その言葉の持つ不吉な響きに、一瞬だけ眉をひそめた。前世の知識として、毒物に関する科学的な情報は多少持ち合わせていたものの、実際にこの異世界で毒を精製したり、武器に塗布して使用したりした経験は皆無だった。どのような植物や生物から毒が採取できるのか、どのようにして安全に入手し、どのように武器に塗布すれば最大の効果を発揮するのか、全く見当もつかない。下手をすれば、使用者である自分自身が危険に晒される可能性すらある。

しかし、今日の死闘を経て、リュウは心の底から強く感じていた。この弱肉強食の異世界で生き抜き、さらにその先へと進むためには、綺麗事だけでは通用しない。使える手段は、それがどんなものであろうと全て試し、自分の力として昇華させるべきだと。遠距離武器の習得、そして毒の知識とその実践的な扱い方。これらは、今後の彼の冒険において、必ずや強力な切り札となるはずだ。

「よし……」リュウは、迷いを振り払うように、再びベッドにゆっくりと腰を下ろした。歩き回っていたことで少しだけ落ち着きを取り戻した心に、新たな決意が芽生える。「明日からは、まずこのアルクスの街で、新しい武器について詳しく調べてみよう。弓が良いのか、それともクロスボウのような機構的な武器が良いのか。それぞれの長所と短所を比較検討する必要がある。そして、毒だ。薬屋や、あるいは裏のルートで毒を扱っているような店がないか、情報収集を始めるんだ。ギルドの資料室にも、何か手がかりがあるかもしれない」

そう具体的に決意すると、リュウの心には、先ほどまでの焦燥感を押し退けるように、微かな、しかし確かな希望の光が灯った。今日の激しい戦いで蓄積された疲労が、ようやく重い瞼をゆっくりと押し下げ始める。明日の新たな探索と冒険に備えて、今はしっかりと休息を取らなければならない。

しかし、リュウの頭の中は、まだ見ぬ新しい武器の形状や、獲物を確実に仕留める毒の恐ろしい効果のことでいっぱいだった。様々な武器を構え、毒を塗った刃で強大な敵を翻弄し、そして倒す自分の姿を鮮明に想像するうちに、興奮でなかなか深い眠りにつくことができなかった。遠くで聞こえる、アルクスの街の夜の静寂を破る夜警の笛の音だけが、彼の尽きせぬ思考に、静かに寄り添っていた。


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