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異世界転生×ユニークスキル 武器使い ありとあらゆる武器を使いこなして無双する!?  作者: 月神世一
武器使いの勇者

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ep 10

鳴り響く警鐘、初めての共同戦線

リュウは、セーラの少し後ろに付き従うようにして、冒険者ギルドの壁一面に貼り出された数々の依頼書を、一つ一つ丁寧に目で追っていった。羊皮紙にインクで書かれた文字は、依頼内容の重要度や緊急度によって書体や大きさが異なり、冒険者たちの手によって何度も読み返されたのか、端が少し擦り切れていたり、手垢で汚れていたりするものも散見される。そこには、この街の人々の切実な願いや、解決を待つ問題が凝縮されているようだった。

「ふむ……薬草採取ねぇ。報酬は銅貨数枚か。こっちは街道の定期巡回、危険度は低いけど拘束時間が長そうだな。あっ、迷子の猫探しなんてのもあるのか」

掲示板の上の方には、比較的報酬が低く、危険度も低いと思われる、いわゆる初心者向けの依頼が多く貼られているようだ。荷物運びの手伝いや、簡単な素材集めなど、地道な仕事が並んでいる。リュウは、これらの依頼にあまり心を惹かれなかった。もちろん、どんな仕事も誰かの役に立つことは理解しているが、今の彼が求めているのは、もっとこう、魔物と直接対峙し、自分の力を試せるような、スリルと達成感のある依頼だった。悪夢で見たドラゴンの圧倒的な力、そして自分の無力さ。それを少しでも克服するために、彼は戦う経験を渇望していた。

一方、セーラは少し背伸びをしながら、掲示板の下の方に貼られた、より難易度が高そうな依頼書を熱心に眺めていた。彼女の真剣な横顔からは、リュウの力になりたいという健気な思いが伝わってくるようだ。

「リュウ様、こちらの依頼はいかがでしょうか? 『アルクス南の森に現れた巨大イノシシの討伐、もしくは追い払い』とあります。報酬も銀貨数枚と、先ほどのものよりは高めですわ」

セーラの指差す依頼書に、リュウも目をやった。確かに、報酬額は銅貨数枚の依頼とは比べ物にならない。しかし、依頼内容の「巨大イノシシ」という文字が引っかかる。オークの項目で見たように、大型の獣は単純な筋力と突進力だけでも脅威となり得る。今の自分たちの戦力で、果たして森の中で巨大なイノシシと渡り合えるだろうか?

「うーん、確かに報酬は魅力的だけど、相手が巨大イノシシか……。森の中での戦いになるだろうし、ちょっと手強そうじゃないか? 俺たちの今の装備とレベルだと、少し慎重になった方がいいかもしれない」リュウは、冷静に現状を分析し、慎重な姿勢を見せた。

その時だった。ギルドの重厚な扉が、まるで蹴破るかのように勢いよく開き、息を切らせ、髪を振り乱した一人の男が、転がるようにして受付カウンターに駆け込んできた。男は農夫のような粗末な身なりをしており、その顔は恐怖と疲労で土気色に染まり、目は血走っている。

「た、大変です! 皆さん、どうか、どうか我々の村をお助けください!」男は、カウンターに突っ伏さんばかりの勢いで、かすれた声で必死に叫んだ。「わ、私たちの村が、ゴブリンの……大群に襲われているんです! 畑はめちゃくちゃに荒らされ、家畜は喰われるか連れて行かれ……このままでは、女子供も……村が、村が全滅してしまいます!」

男の悲痛な叫び声は、先ほどまでの喧騒が嘘だったかのように、ギルド全体に響き渡り、談笑していた冒険者たちの声も、依頼書を吟味する物音も、一瞬にして静まり返った。全ての視線が、カウンターで悲痛な訴えを続ける男へと注がれた。その場の空気が、一気に緊迫したものへと変わる。

セーラは、そのただならぬ様子と、男の言葉に込められた絶望的な響きに、思わず息を呑み、リュウの袖を心配そうに小さく掴んだ。「リュウ様……なんて、お気の毒な……」

リュウは、男の必死な様子、そしてその瞳の奥に宿る深い絶望を見て、胸が強く締め付けられるような思いがした。困っている人が目の前にいる。そして、自分には、ほんの少しでも彼らを助けられるかもしれない力がある。ならば、行動しないという選択肢はなかった。前世では傍観者でしかなかった自分も、この世界では何かを変えられるかもしれない。

「行こう、セーラ」リュウは、迷うことなく、しかし力強い声で言った。「ゴブリン退治なら、この前の経験もある。今の俺たちでも、何とかできるはずだ」

セーラは、リュウの言葉にハッとしたように顔を上げ、その迷いのない瞳を見て、力強く頷いた。「はい、リュウ様! わたくしもお供させていただきます! 微力ながら、必ずお役に立って見せますわ!」彼女の声には、恐怖を振り払うような強い意志が込められていた。

二人は、すぐに受付カウンターへと向かった。先ほどの村人が、受付嬢に必死に村の状況を説明し、救援を懇願している。周囲の冒険者たちも、遠巻きにその様子を窺っているが、すぐさま名乗り出る者はいないようだ。ゴブリンの群れとなると、それなりの危険が伴うのだろう。

「すみません!」リュウは、人垣を割って進み出て、声を上げた。「そのゴブリン退治の依頼、俺たちが受けたいのですが!」

受付嬢は、村人の話に耳を傾けていたところだったが、リュウの凛とした声に気づき、少し驚いたように顔を上げた。「……はい、承知いたしました。少々お待ちください」

受付嬢は、村人にいくつか被害状況やゴブリンの数、村の場所などを手早く確認した後、リュウとセーラに向き直った。「緊急依頼、ゴブリンの群れの討伐ですね。D級冒険者のリュウ様、そしてパーティーメンバーのセーラ様、確かに承りました」

受付嬢は、用意していた緊急依頼用の羊皮紙を二人に手渡した。「こちらに詳細が書かれています。報酬は、村からの感謝の品とは別に、ギルドから前金として金貨3枚、任務完了後に金貨2枚、合計金貨5枚となります」

リュウは、依頼書に素早く目を通した。ゴブリンの出現場所は、ここから森を抜けて半日ほど馬車道を東へ進んだ場所にある、ミルラの村という小さな農村らしい。

受付嬢は、改めて二人の顔を見据え、真剣な表情で注意を促した。「ゴブリンは、通常は臆病で知能も低いモンスターですが、群れで行動する際には非常に厄介な存在となります。油断は決してなさいませんように。特に、最近この地方では、以前よりも凶暴化したゴブリンの目撃報告が複数上がっております。無理に深追いしたり、不利な状況で戦ったりせず、危険を感じたらすぐに退却することも考慮してください。また、稀なケースではございますが、ゴブリンの中にも特に強力な個体や、ホブゴブリンのような上位種がリーダー格として群れを率いている場合もありますので、その点も十分にご注意ください」

リュウとセーラは、受付嬢の言葉一言一句を、真剣な表情で聞き入った。これが、冒険者としての初めての本格的な依頼となる。気を引き締めて臨まなければ、命取りになりかねない。

「分かりました。ありがとうございます。必ず、村の人たちを助けてきます」リュウは、受付嬢に力強く頷いた。その瞳には、確かな決意が宿っている。

セーラも、「はい、承知いたしました。リュウ様と共に、全力を尽くします」と、真剣な表情で、しかし落ち着いた声で答えた。

二人は、受付嬢に一礼すると、ギルドの出口へと向かった。背後からは、安堵と期待の混じった村人の「ありがとうございます……どうか、よろしくお願いいたします!」という声と、他の冒険者たちのざわめきが聞こえてきた。

ギルドを出て、アルクスの街の活気ある通りを早足で歩きながら、リュウは隣を歩くセーラに話しかけた。

「初めての依頼だな、セーラ。緊張するか?」

「はい、少し……。でも、リュウ様と一緒なら大丈夫です」

「俺たちが今使えるのは、俺の投石とこの"疾風"、そしてセーラの回復魔法くらいか。ゴブリンの数が多いと、少し厳しい戦いになるかもしれないな」

セーラは、リュウの言葉に少し不安そうな表情を浮かべながらも、彼を励ますように、そして自分自身に言い聞かせるように言った。「わたくし、回復魔法は少しですが使えます。それに、いざという時には、このメイスで戦うこともできますのよ!」そう言って、セーラは腰に下げた小さな、しかしずっしりとした金属製のメイスを少し持ち上げて見せた。それは、神官が護身用に持つような、装飾の少ない実用的な武器だった。

リュウは、セーラの健気な言葉に少し苦笑した。「いや、セーラは無理に前に出て戦わなくてもいいんだ。回復に専念してくれた方が、俺としてはずっと安心できるし、戦いやすい」

セーラは、一瞬少し残念そうな表情をしたが、すぐに気を取り直して、「はい、分かりました。リュウ様が戦いに集中できるよう、わたくしが必ずお守りいたします。精一杯、回復と支援を頑張りますわ」と、力強く頷いた。その瞳には、もはや不安の色はなく、リュウを支えるという強い意志が輝いていた。

リュウは、セーラのその言葉と眼差しに、心からの信頼と心強さを感じた。初めての依頼で、未知の危険が待ち受けているかもしれないという不安もある。しかし、セーラという頼れる仲間が隣にいてくれるならば、きっとどんな困難も乗り越えられるはずだ。

二人は、ゴブリンの脅威に晒されているミルラの村を目指し、アルクスの街の堅牢な門を後にした。彼らの冒険者としての物語は、今、まさに危機に瀕した人々を救うという、最初の試練と共に始まったばかりだった。

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